現在、世界80ケ国以上で、「経口中絶薬」つまり飲み薬での中絶が認められています。なのに、日本はいまだに、母体に負担がかかる外科的な中絶手術(※)だけ。 その日本で初めて、2021年12月22日、ラインファーマ社によって経口中絶薬の承認を求める申請が行われました。この中絶薬は、手術なしで妊娠9週までの人工流産を誘発するものです。
画像はイメージです(以下同)
なぜ日本は“中絶後進国”なのか? 前回記事に続き、中絶問題をずっと取材・研究してきて『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』などの著書がある塚原久美さんに、解説してもらいました。先進諸国では、中絶薬による“セルフ中絶”まで認められ始めたそうなのです。
※ソウハ(掻爬)法:器具や鉗子を使って、子宮内容物(胎児や胎盤)をかき出す方法 吸引法:子宮口から細い管を入れ、子宮内容物を吸い出す方法
【前回を読む】⇒“飲む中絶薬”がやっと日本にも? 730円なのに「10万円に」と言う医師の利権 (以下、塚原さんの寄稿)。
コロナ禍で「自宅中絶」が認められた国も
新型コロナウィルスのパンデミック宣言の直後に、国際産婦人科連合(FIGO)は中絶薬の遠隔診療と自己管理を提唱し、いくつもの国で実行に移されました。
遠隔診療とは、電話やインターネットを用いて離れたところにいる患者を医療者が診察することを指し、その診察の結果、薬を処方するのがオンライン処方です。オンラインで処方された薬は自宅に郵送されるので、患者は医療者の指示に従って自分で服用し、その後の経過も自分で確認して、必要があると判断した時だけ、医療者のアフターケアを受けに行きます。
医療者のサポートを受けつつも、実際の中絶はすべて自分自身で行うので、この方法は「自己管理中絶」と呼ばれています。
セルフ中絶が「安全」と推奨されるわけ
パンデミック宣言後、一年間、イギリスやアイルランドで広く行われた結果を受けて、FIGOは2021年の3月に、「遠隔診療と自己管理中絶は安全で有効であり、プライバシーも守れる優れた方法であることが確認できたので、パンデミックが終わってからも、この方法を恒久化するべきだ」と宣言しました。 WHOもパンデミックを期に、妊娠早期の中絶は「セルフケア」であるとして広く推奨するようになりました。
遠隔診療と自己管理中絶を行うことで、対面の診療を受けに行く必要のある人が減り、待合室が密になることも防げます。9割以上の女性が自己管理中絶だけで無事に終わり、アフターケアも必要としなかったことも判明しています。