山口紗弥加と板垣李光人の“年の差ラブストーリー”『シジュウカラ』(テレビ東京系)。坂井恵理の原作漫画とともに話題のドラマを、夫婦関係・不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

アシスタントの青年は、夫の浮気相手の息子だった

 ドラマ『シジュウカラ』の3話目を観ながら、登場人物の女性たちのそれぞれの生き方に思いがいった。  デビューしながらも「売れない漫画家」という肩書きを背負うことになった忍(山口紗弥加)。結婚しているから生活には困らなかったし、子育てに忙しくて描くことができなかったという言い訳も通ってきた。それでも乳飲み子を抱えた「あの日」、夫の洋平(宮崎吐夢)の浮気を偶然目にして傷ついた心を封印したままだ。  一方で漫画に対する情熱は衰えていなかったから、40歳になってかつての漫画が電子書籍で売れて、新たなチャンスをものにする。

 夫が浮気していた相手は、忍のアシスタントに応募してきた22歳の美青年・千秋(板垣李光人)の母・冬子(酒井若菜)。酒に溺れる生活を送っているが、息子の千秋には全面的に甘えて頼っている。

鍵をかけて、十数年も封印してきた苦悩

 ある日、忍は千秋が女性とベタベタしながら歩いているのを目撃。ざわつく心を抑えながらふたりのあとを追う。そしてふたりが入っていった家を目にしたとたん、「あの日」がいきなりよみがえってくる。千秋にベタつく女性は、十数年前、夫にベタつく女性だったのだ。  つまり、忍が心に蓋をしたまま鍵までかけてしまった記憶は、思いがけなく開いてしまった。夫がいちゃつきながら冬子の家に入って行くのを目撃したあのときの苦悩を、実は今も抱えていると改めて気づかされる忍。

 それでも「あの日」、帰宅した夫に忍は何も問いただせなかった。そしてそのことに気づいた「今」、帰宅してあの日と同じように洗面所で「ガラガラ」音を立ててうがいをしている夫に、彼女は二階の踊り場から見下ろしながら「あの子、あんたの子なの?」と声に出して言う。見て見ぬふりをしていた、乳飲み子を抱えた女性は、直接ではないにしろ夫を見下ろしながらそこまで言える大人の女性になったのだ。  とはいえ、真実を知るのが怖いから、彼女は夫に直接言えないままだ。恋心を抱いた千秋が、もし夫の子だったら……。