ソウハ法のほうが、医師にとって効率がいい?
ところが、毎日10~20件の中絶を行っていると豪語するあるクリニックでは、「ソウハ法と吸引法…の手術操作による危険度の差はありません」としながら、「吸引法は消毒方法において、器械に一部血液や組織が付着したままになり易く、不潔性・感染性が高い」などと説明しています。
そして、自院では「原則ソウハ法」だとして、「多くの医師がその方法に慣れており、また手術件数が多いため消毒滅菌に制限のある吸引方法は手術数の多いクリニックには向かない」と置き換えるつもりは全くなさそうです。どうやら、効率を上げ、手術数を確保するために都合の良い方法を選んでいるように見うけられます。
1970年代から広まってきた吸引法
欧米では多くの国が1970年前後に「女性解放運動(ウーマンリブ)」の成果として中絶を合法化しました。そうした国々での「女性の権利としての中絶」は、より安全で女性に優しいものになっていきました。当時の欧米の医師たちは、「ソウハ」は違法の堕胎師たちが行ってきた方法だと危険視していました。実際、中絶が違法だった時代に、闇中絶の「ソウハ」の失敗で大量出血で運び込まれてくる女性たちも見ていたからです。
もっと安全な方法はないかと必死に探し求めた結果、欧米の医師たちが採用したのは柔軟なプラスチック製の管を使って子宮の中身を吸い出す「吸引法」でした。海外では吸引法の普及で中絶は安全なものになったと一般に考えられています。