日本のヒットチャートは、まだバラエティ豊か
一方、日本のヒットチャートを見ると、ビルボードチャート(1月12日付)のトップは、King Gnuの「一途」。高度な演奏技術と複雑な楽曲構成を併せ持った、疾走感あふれるポップソングです。同様に、様々なジャンルを飲み込みつつ、一音節ごとに転調を繰り返すOfficial髭男dismの「Cry Baby」はロングヒットを記録。洋楽のエッセンスを軽やかに方言で包み込んだ藤井風もブレイクを果たしました。そして、YOASOBIは日本語の母音がもつ伸びやかさに甘えない曲作りで、J-POPに新鮮な小気味よさをもたらしています。
こうした個性豊かな音楽に、坂道グループやジャニーズ、はてはアニソンだったり動画サイトの歌い手までもが同居する。坂道系やジャニーズの曲だって、ちゃんと聴けば面白い仕掛けがあることに気づくはずです。現代のヒットチャートで、アコースティックギターのソロを20秒以上もフィーチャーしているのは、「Sing Out !」(乃木坂46)ぐらいのものでしょう。P丸様。の「シル・ヴ・プレジデント」だって、見事なロックンロールです。こんなめちゃくちゃでキュートな曲、たぶん日本にしかありません。
韓国に限らず、アメリカやイギリスのチャートと見比べても、日本の音楽シーンはかなりバラエティに富んでいるし、アイデアも豊富なのです。
韓国エンタメに学ぶところはあるけれど…
隣の芝生は青く見える、とはよく言ったもの。もちろん、韓国エンタメが欧米のメインストリームを席巻している現状を、指をくわえて眺めているわけにもいかないという焦りは理解できるところです。 ただし、学ぶ気持ちは持ちつつ、同時に卑屈になり過ぎないのも大事なことなのではないでしょうか。 間違っても、日本の音楽シーンは“オワコン”ではありません。
<文/音楽批評・石黒隆之> 石黒隆之 音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
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