デザイナーが売り上げを意識する重要性

「代表取締役」と「チーフデザイナー」という2つの肩書きを持っている著者。経営とデザイン、ロジカルとクリエイティブという2つの立場は、普通に考えると対極にあるように見えてしまいます。

第2章は「デザインと経営のサードウェイ」。経営をしながらデザインするということは、右脳と左脳が真反対の方向に働く作業で、当初はかなり苦悩していたことが本著には綴られています。

しかし、経営とデザインは二項対立ではなく、両者をかけ算してこそブランドが一歩一歩成長できる。2つの視点からプロダクトや経営を見ることで、ベストな判断ができると言います。

売り上げは、つくったものがお客様の手に届いている総計。デザインによって生まれた幸福の総計なんだ。(91ページより引用)

デザインするうえでブランドの世界観が確立できたとしても、その商品が顧客に届かなくては意味がない。だからこそ、デザイナーが売り上げを意識することはとても大事なことであると言えます。

経営者としての自分に引っ張られ、デザイナーとしての自分に引っ張られる。ピンと張られた緊張感の中に、上へ上へと少しずつ登っていけるということが分かるようです。

手仕事の美しさを大量生産する道

大量生産と手仕事といえば、それだけでものづくりの世界において両極の方向にあることが分かります。ものの性質だけではなく、作る人のメンタリティもかけ離れていることが想像できます。

ラオスでものづくりをした折のこと、素晴らしい手仕事に出会った著者は、せっかくいいものだからといって需要を作っても供給できないという苦しさを感じたのだと言います。

第4章は「大量生産と手仕事のサードウェイ」。手仕事の美しさを残しながら、顧客に届けられる第3の道を作りたい。そう願った著者のチャレンジがまとめられています。

それは「美しい職人芸を、効率的なオペレーションでつくる」という手法だ。(207ページより引用)

ライン生産ではなく、テーブル方式といって13のグループがまったく違う型をつくるという量産方法を開発。バングラデシュの自社工場でこの手法を用いたことで、理想の工場を作り上げることが可能になったのだと言います。

どんな仕事にも、どんな生き方にも相反する2つの道があるものです。どちらか片方でもなく、妥協した折衷案でもない。サードウェイを見つけ出そうと思考することそのものが、新しい道を見つけ出すための道なのかもしれません。

タイトル:『Third Way(サードウェイ) 第3の道のつくり方』
著者:山口絵理子
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
定価:1500円(税抜)

文・ナカセコ エミコ((株)FILAGE(フィラージュ)代表)/DAILY ANDS

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