夫婦のセックスレスを繊細に描いたドラマ『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が、ついに最終回を迎えました。夫婦関係について著書多数の亀山早苗さんが、話題のドラマを読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

セックスレスで離婚を決めた夫婦。レスの原因は“婚姻届”だった?|松本まりか『それ誓』で考える夫婦関係
(画像=『女子SPA!』より引用)

画像:ABCテレビ・テレビ朝日『それでも愛を誓いますか?』公式サイトより

最終回の前、思わず主人公への怒りが……

 ドラマが進むにつれ、承認欲求の強い女と自己陶酔の強い男の物語だという感が強くなっていったドラマ『それでも愛を誓いますか?』だが、終わってみれば最後はある程度の納得感が残った不思議な作品だった。  8年間の結婚生活のうち5年はセックスレス。妻の純(松本まりか)はレスで悩んでいる。女として見られていない不安から、常に「私が悪い、私がダメだからだ」と傲慢にさえ映る自己卑下を繰り返す。本当は女としての幸福感がほしいのに、「子どもがほしいから」とセックスを求めるのも妙なすり替えするなよと見ているほうとしては怒りがわく。  このままではいけないと再就職をしたものの、職場の年下男性に思わせぶりな態度を繰り返し、最後は職場で濃厚なキスを交わして「これで満足だから、彼とは終わり」って、あまりにも年下彼の気持ちをもてあそびすぎじゃないか、と怒りは沸点に達した。夫への口調は常にどこか探りを入れるような遠慮気味なものであるのに対し、年下彼にはけっこう横柄な口を利いているのも、彼女の人となりを表しているようで不快感が(とはいえ楽しんでいたけれど)わいてくる。
 一方、夫の武頼(池内博之)にも見ていてイライラさせられた。わけのわからないセックス拒否。それなのに高校の同級生であるシングルマザーの女友だちに引きずられ、呼び出されては出かけていく。最終的に関係はもたなかったようだが、こちらも飲食店で濃厚キス。だがその先に進めないのは武頼がいい人だからなのか優柔不断過ぎて決断できなかったからなのか……。 【前回記事】⇒“妻だから”夫に尽くしてきたのに「頼んだ覚えはない」と言われたら?|松本まりか『それ誓』で考える夫婦関係

言いたいことを言いあえない、セックスレス夫婦の結論

 終盤、武頼はレスの原因を「子どもの頃から短気な父親が怖かった。自分が父になったら同じことを繰り返すのではないかと思って」と打ち明ける。動機が弱すぎる。虐待されていたわけでもないのに。しかもセックスと子作りがイコール過ぎる。  ドラマの中では終始、純が武頼の「母親」的に描かれている。彼女はいつでも夫に「お腹、すいてない?」と尋ね、自分が1泊の研修に行くときは夫の夕飯の支度までしていくのだ。 「いい妻」であろうとする純に、武頼は母を見てレスになったのではないかと私は解釈している。
 このふたり、なかなか自分の腹の内を相手に伝えようとしない。妻は「養われている」ことへの劣等感もあって自己卑下で凝り固まっているし、夫は「なんでも完璧にやってくれる妻」に遠慮があって、言いたいことが言いあえずにいるのだ。  関係修復を考えたふたりは旅に出る。ところが旅先でも夫はセックスができない。そして「オレは純を幸せにできない」と離婚を申し出るのだ。