ヤマハは世界的に知られる日本を代表する楽器メーカーであり、ヤマハ音楽教室は日本でその存在を知らない人はいないと言えるでしょう。そのヤマハが韓国で現地法人を設立したのが2001年。以来、ヤマハミュージックコリアは、華やかな音楽の世界とは裏腹に、韓国での音楽、音楽教育のために地道な努力を続けています。その総指揮をとっているのが社長である山森直樹さん。ご自身もヤマハ音楽教室のご出身で、バイオリンの演奏者でもある山森さんに、日本と似ているようで違う韓国の音楽事情について三成洞(サムソンドン)の事務所でお話を伺ってきました。

第31回~山森直樹さん(ヤマハミュージックコリア)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

名前 山森直樹(やまもりなおき)
勤務先 ヤマハミュージックコリア株式会社
年齢 53歳(1956年生)
出身地 京都府
在韓暦 5年半
経歴 ヤマハ株式会社入社後、銀座店をはじめ国内営業を担当した後、海外営業を経て、ヤマハカナダに駐在。日本に帰国後、ピアノ事業部勤務となり、2004年3月よりヤマハミュージックコリア社長。

「ヤマハが音楽教室?」、韓国では意外と知られていなかった!

第31回~山森直樹さん(ヤマハミュージックコリア)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ヤマハと韓国のつながりを遡ると戦前には支店があったようですが、70年代に輸出が始まり、以後ヨンチャンピアノと合弁を組みピアノ製作における技術支援を行っていました。

合弁が解消になった後は楽器輸出をし、1999年の韓国の輸入規制撤廃を契機に、2001年に現地法人を設立しました。

私の赴任は2004年の3月ですが、最初の音楽教室が工事中で音楽教室事業のレールが敷かれていたものの、どのようにビジネスを拡大していくかについてはこれからの状態でした。

現在、韓国のヤマハ音楽教室は22拠点(直営8、フランチャイズ14)となっています。フランチャイズのオーナーは楽器のディーラーを考えていましたが、音楽教室経営の経験者など、門戸を広げて募集しました。というのも、韓国でヤマハ音楽教室の認知度がほとんどなかったからです。

もちろん楽器メーカーとして知られていましたが、一般の方のみならず音楽関係者も「ヤマハは音楽教室もやってるんですか?」という反応でしたね。30万人もの来場者があると言われる幼児教育展にブースを出したり、事業説明会をしたり、最初は非常に難しかったです。

ヤマハ流音楽教育の指導者育成、日韓の違い

第31回~山森直樹さん(ヤマハミュージックコリア)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

音楽教室はフランチャイズであっても、講師はすべてヤマハから派遣しており、指導内容の責任はヤマハが受け持っています。現在講師は11期まで採用し、200名になりました。

講師の指導にあたり日本人の指導スタッフが駐在していましたが5年を経て韓国人講師が育ち、講師を指導するスタッフも日本人から韓国人にバトンタッチをしたところです。研修内容は日本と同じですが、日韓の違いをあげるならば、韓国はまだまだクラシック志向、ピアノ志向が強いです。

ヤマハ音楽教室の講師は即興やソルフェージュ、アレンジも要求されるなど、様々な技術が必要とされるので、韓国人はその部分において弱いかなという気がしました。もう一つ挙げるならばお客様、私たちにとっては教室の生徒と保護者、に対するマナーとコミュニケーションの問題です。「先生」という立場は教えることだけすればいいと思っている人もいます。

生徒や保護者が何に困っているのか、不満なのか、すぐに察知できる感覚と意識、そのためのコミュニケーションが必要だと説いていますが、日本に比べると不十分な部分が多いですね。講師の募集もフランチャイズのオーナー同様にはじめは苦労しましたが、最近はクチコミで広がったようで、定員の3倍、4倍という応募があります。子ども対象の教室の講師はほとんど女性ですが、大人対象の教室の講師は、3分の1が男性です。

街にあふれるピアノ教室との「違い」を理解してもらうために

第31回~山森直樹さん(ヤマハミュージックコリア)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

街中で見かけるピアノ教室
韓国の住宅地を歩くとたくさんのピアノ教室がありますが日本と違い、いつ行ってもレッスンが受けられます。大部屋にピアノが何台も並び、各自ヘッドフォンをつけて弾いていると、先生が巡回しながら教えてくれるという仕組みです。

音楽高校、音楽大学などの受験専門の学院も多く、全体的にテクニックに特化したものが中心と言えます。これに対し、ヤマハ音楽教室の教育システムは、耳の発達が顕著な4歳児を中心とした適期教育、聴く、弾く、歌うという基本から創造性を育み、作曲や即興、アレンジへ展開し、どんなジャンルの音楽も楽しめる子どもたちを育てることを主眼に置いています。
その意味で、JOC(ジュニアオリジナルコンサート)の開催はヤマハ音楽教室のユニークさ、街のピアノ教室との違いを実感してもらえる機会になったと思います。JOCとは16歳までを対象にしたジュニア専門コースに所属する子どもたちによる自作自演のコンサートです。

各教室で小さなコンサートをしますが、その100何人の中から選ばれた10組だけが、韓国の最終的なナショナルコンサートに出演できるという仕組みで、韓国では2008年に初めて開催しました。