ボランティア活動への関心が高まるなか、「市民団体」や「市民活動」という言葉を耳にする機会が増えています。ごみの減量や食べ物の安全といった身近な生活問題から、平和や人権などスケールの大きなイシューまで。市民団体とは、そうした社会の様々な問題を、市民の視点で考え、解決を図ろうとする人々の集まりです。熱きピープルパワーでおなじみのお隣・韓国にも、約23,000(韓国民間団体総覧2006より)を超える団体があります。社会をのぞくひとつの「窓」ともいえる市民団体。そんな市民団体の歴史や今を探りながら、韓国をもう少し深く知ってみませんか?
民主化とともに発展してきた韓国の市民団体
国際化が進む最近は移住労働者や国際結婚女性を支援する団体も▶
まさに、民主化闘争の中で生まれ、発展してきた韓国の市民団体。それだけに、政治的な意識が強く、社会・経済改革など巨大な目標を掲げる市民団体も少なくありません。また、1つの団体内で政治・経済・福祉・平和など地域を越えた多様な課題を扱う団体が多いのも特徴。専門性の弱さを指摘する声もありますが、特定地域で特定分野の活動を行なうため連携が起こりにくい日本の市民団体に比べ、韓国では地域や分野を越えたネットワーク(連帯)が誕生しやすいと言えます。
◀米国産牛肉輸入反対デモ(ろうそく集会)は市民団体が主導した(2008年)
全国の市民団体が合同開催した 小泉元首相訪韓反対運動(2001年)
社会への影響力を示した「落選運動」
市民運動の影響力が目に見える形で現れたのは、2000年の第16代総選挙で行われた「落選運動」です。これは、「不適格な政治家」を選定して各党に公認しないよう要請するとともに、万が一立候補した場合には落選させようとするもの。全国の約460の市民団体が結集して繰り広げた結果、何と、公認候補の47%が公認から外れ、選挙では落選対象86人のうち70%にのぼる59人もの候補者を落選させたのです。これは「市民による政治改革」として、国内外で大きな注目を浴びました。
韓国の主な市民団体
それでは実際に、韓国にはどんな市民団体があるのか、代表的な団体をご紹介しましょう。韓国社会が今、抱えているイシューが何なのか、見えてくるかもしれません。 <社会改革>
経済正義実践市民連合 1989年設立、略して経実連(キョンシルリョン)と呼ばれることが多い市民団体。全国各地に30以上の支部を持ち、会員数は約23,000人。所得の公正な分配といった経済問題をはじめ、選挙の監視、不正腐敗の追放、環境保護、制度改革など、活動が多岐に渡る点で参与連帯と似ている。
<環境>
韓国女性民友会
職場や家庭、地域社会において女性が被る差別の解消を目的に1987年に設立。「生活の中から運動を」をモットーに、女性の労働権保護、性暴力撲滅運動、生活協同組合などの活動を展開している。会員数は約20,000人。
<障害者>
障害友権益問題研究所
障害を持つ人々の福祉増進と権益擁護を目的に1987年に設立。各種法律の制定・改定過程への参加や政策代案の立法化といった政策運動のほか、障害者専門雑誌を発行したり、障害者問題に関する教育の場を設けたりと一般市民の理解を進める多様な活動を行う。後援会員数は約4,000人。
<教育>
チャム教育のための全国学父母会
「チャム」とは韓国語で「真の、本当の」という意味。1989年に誕生、子どもを持つ親たちの正しい教育観形成や暗記式教育・入試重視の競争教育など韓国の教育事情改善を目指す。寸志(チョンジ、頼み事をする時に渡すお金)問題で毎年賛否両論となる「先生の日(ススンエ ナル)」を学年度末に変更する運動や学校給食の実態調査など、教育全般に関わる活動を展開。全国主要都市に支部を持ち、会員数は約10,000人。
<平和・統一>
平和ネットワーク
反戦・反核、軍縮、朝鮮半島の統一を通じた平和の実現を目指し、1999年に設立。後援会員数は約350人。国内平和問題に関する情勢分析や政策対案資料の提供、国内外の平和運動団体・研究団体との連帯活動、公演・討論会などを通じた世論形成活動を行っている。