荒廃した未来、悲観的な世界が広がる未来を舞台にした映画が好きという方もいるでしょう。どこか非現実的でありながら見る人を惹きつけるこれらの映画には不思議な魅力が詰まっています。そこで今回はこういったディストピア映画の魅力やおすすめ作品についてご紹介します。
ディストピアの意味は?
「ディストピア」という言葉をご存じでしょうか。ディストピアは「Dystopia」と綴り、理想郷の真逆の世界、つまり暗黒な世界を意味しています。古代ギリシャ語を由来とした言葉です。
映画や小説などの分野では、これらを舞台にした作品のことも指します。つまりいわゆる理想郷を意味する「ユートピア」の反対語です。
近未来の恐怖を描くディストピア映画
ディストピア映画では常に近未来の恐怖が描かれています。私たちが実際に暮らしている現代社会ではなく、少し先の未来を舞台にしているため、その不思議な世界観に惹きつけられる映画ファンも多いようです。SF映画に欠かせないディストピア映画の魅力はどこにあるのか、まず分析してみましょう。
ディストピア映画の魅力
ディストピア映画の魅力は、その薄暗いイメージにあるかもしれません。ホラー映画とはまた違った、どこか私たちを取り巻く現実とは遠くないダークな世界で繰り広げられる物語に夢中になる方も少なくないでしょう。
一見便利で幸せな印象にあふれた私たちの世界も、一歩間違えればこんな荒廃したダークな未来が待っていると思うと、他人ごとではない怖さを感じます。ホラー映画とは違い、身近に想像できるテーマが多いからこそ、ディストピア映画は視聴者の心をぐっとつかむのかもしれません。
ディストピア映画を見ていると、「こんな未来が訪れないように、今、私たちが住む世界を改善しなければ」と、そんな思いに駆られる方もいるはずです。つまりディストピア映画は、作品によっては現代社会へ警鐘を鳴らす一面も担っています。
ディストピア映画おすすめ傑作15選
ディストピア映画にはいろいろな作品があります。そこで今回は、中でも世界的に有名な傑作15作を集めてご紹介します。もうすでに見た映画や、気になっていたけれどまだ見ていない作品が含まれているかもしれません。
おすすめディストピア映画①ブレードランナー
傑作中の傑作である「ブレードランナー」は、1982年にアメリカで制作された映画です。監督はイギリス人のリドリー・スコット監督で、1979年に「エイリアン」の監督を務めたことでも有名です。
「ブレードランナー」は、当時には珍しい圧巻のビジュアルと激しいアクションで一気に世界的に有名な映画となりました。
ブレードランナーのあらすじ
21世紀の頭、遺伝子工学のテクノロジーは大きな進化を遂げており、そのテクノロジーを活かしてタイレル社はロボットの代わりとして「レプリカント」と呼ばれる人造人間を開発しました。
すでに人類のほとんどはほかの植民地である星に移住しており、このレプリカントたちは植民地開拓のために過剰な労働を強いられていました。
レプリカントたちは年月とともに人間のような感情と知能を持つようになり、やがて人間へ反旗を翻すようになります。そこで脱走し、人間社会で息をひそめて暮らしているレプリカントたちを見つけて処分するのがブレードランナーと呼ばれる警察です。
ふとしたきっかけで、すでにブレードランナーを引退していたリック・デカードが復職することになり、デカードの戦いが始まります。
おすすめディストピア映画②1984
「1984」はジョージ・オーウェルが1949年に発表した作品「1984年」を基に1984年に製作され、日本では1985年に公開されました。全体主義体制の中で、自我に目覚めた主人公が屈服するまでを描く風刺ドラマです。
こちらの作品はジョージ・オーウェルの名作が持つ空気感を見事に映像へと昇華していると評判のディストピア映画です。
1984のあらすじ
1984年、世界は3つの国家に分かれており、中でもオセアニアはかつてのイギリスとアメリカの一部を合体した地域で大きな力を持っていました。このオセアニアは同じような力を持つユーラシアとイースタシアと絶えず争いを繰り広げていました。
ジョン・ハート演じる主人公ウィンストン・スミスは新聞記事の修正や削除、さらに過去の文書のさし換えや歴史的事実まで捻じ曲げることがある真理省記録局に勤務したものの、やがてオセアニアの体制に疑問を持ち始めます。
そしてウィンストン・スミスは物語のカギとなる2人の人物と出会い、物語は大きな展開を見せていきます。
おすすめディストピア映画③マッドマックス 怒りのデス・ロード
2015年に公開された「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、1979年に第1作が公開された「マッドマックス」シリーズの第4作目です。第3作から30年の月日を経た4作目ということで、世界的に大きな注目を浴びました。
同作は第88回アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか10部門でノミネートされた結果、編集、美術、衣装デザイン、音響編集、録音、メイクアップ&ヘアスタイリングの合計6部門で受賞を果たすという快挙を成し遂げました。
マッドマックス 怒りのデス・ロード
資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した近未来の世界を舞台に、愛する者を奪われ、荒野をさまようマックスは、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョーの軍団につかまってしまいます。
そこへジョーの配下である女戦士フュリオサらが登場し、マックスはジョーへの反乱を計画するフュリオサたちと協力して、自由を求めて戦いを始めます。
おすすめディストピア映画④マイノリティ・リポート
「マイノリティ・リポート」は2002年にドリームワークスより公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画で、フィリップ・K・ディックの短編小説「マイノリティ・リポート」を原作としています。
マイノリティ・リポートのあらすじ
「プリコグ」という3人の予知能力者たちによって作られた殺人予知システムが実用化された近未来では、システムの導入以後、西暦2054年のワシントンD.C.の殺人発生率は0%になったと報告されていました。
そんな中、犯罪予防局に所属している刑事ジョン・アンダートンは、過去に息子が誘拐殺害されたのをきっかけに、犯罪予防に人一倍熱心に取り組んでいました。
しかしある日、ジョンはプリコグの一人アガサを通じてこのシステムに欠陥があることを見抜きストーリーは大きく展開していきます。
おすすめディストピア映画⑤未来世紀ブラジル
1986年に公開された「未来世紀ブラジル」は、モンティ・パイソン出身のテリー・ギリアム監督が、徹底的に情報管理された近未来社会の恐怖を、独特で奇想天外な視点を生かし、ブラックユーモアをたっぷりに盛り込んで作った作品です。
未来世紀ブラジルのあらすじ
時は20世紀、舞台はこの世界にあるどこかの国です。ダクトが張り巡らされた街では、爆弾テロが相次いでおり市民を恐怖に陥れていました。
そんな中、情報省のコンピューターがテロの容疑者「タトル」を「バトル」と打ち間違えたことにより、無実の男性バトルが強制連行されてしまいます。
その様子を目撃した上階の住人ジルは誤認逮捕だと訴え、情報省に務めるサムは、このジルがサムの夢に現れる美女と似ていることに気が付き動揺します。
そして、自宅のダクトが故障したサムの前に、非合法の修理屋というタトルという男が姿を現します。
おすすめディストピア映画⑥ハンガー・ゲーム
「ハンガー・ゲーム」はアメリカの脚本家兼小説家であるスーザン・コリンズの同名小説シリーズを基に作られた映画です。映画シリーズは全部で4作あり、第1作目「ハンガー・ゲーム」は2012年に公開され、大ヒットとなりました。
第2作「ハンガー・ゲーム2」は2013年、第3作「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」は2014年、第4作「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」は2015年に公開されています。
ハンガー・ゲームのあらすじ
舞台は富裕層に支配された近未来のパネム国です。富裕層の人々は、過去に反乱を起こしたことがある国民の住む12地区から、12~18歳の男女をくじ引きで選び、最後の一人になるまでお互いに殺し合いをさせる「ハンガー・ゲーム」に熱狂していました。
ある日妹がこのくじ引きで「ハンガー・ゲーム」に参加することが決まったカットニスは、自分が身代わりとなってゲームに参加することを決意します。カットニスは優れた弓矢の実力を活かしてさまざまな罠を潜り抜け、生き残りへと勝負をかけていきます。
おすすめディストピア映画⑦移動都市 モータル・エンジン
アメリカとニュージーランドの合作である映画「移動都市 モータル・エンジン」は2018年に製作された映画で、2019年に公開されました。
フィリップ・リーブの小説「移動都市」を「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」のピーター・ジャクソンが製作、脚本を担当しています。
移動都市 モータル・エンジンのあらすじ
最終戦争から数百年の時が流れ、なんとか生き残ったわずかな人々は、地を這って移動する移動型の都市で日々を送っていました。そんな中、巨大移動都市であるロンドンは大きな支配力を握り、小さな都市を捕食することでさらなる成長を続けていました。
ある理由からロンドンの指導者的立場にあるヴァレンタインに復讐心を抱いている少女ヘスターは、某小都市がロンドンに捕食される騒ぎに乗じてロンドンに潜入します。そしてヴァレンタインに対し復讐を果たそうとするのです。
おすすめディストピア映画⑧ロスト・エモーション
「ロスト・エモーション」は2015年にアメリカで制作された映画で、リドリー・スコットが製作総指揮を務めています。日本でもロケが行われ、世界的建築家として有名な安藤忠雄の建築物が撮影に使われたこともでも大きな注目を浴びました。
ロスト・エモーションのあらすじ
人類史上最大の世界戦争によって地球の陸地の99.6%が破壊された近未来が舞台となってストーリーは展開していきます。
破壊を免れた土地に生き残った者たちは「人類を滅亡させる最たる原因は感情だ」という独特のポリシーに基づき、残された人類が平和的に生き延びれるよう、遺伝子操作により感情のない人間の共同体「イコールズ」を作りました。
「イコールズ」で暮らす人間はその生活のすべてを保健安全局によって監視そして管理されています。万が一愛情や欲望などといった感情を「発症」したものには厳しい制裁や死が待っています。
おすすめディストピア映画⑨時計じかけのオレンジ
1971年に公開されたこちらの作品は、スタンリー・キュービックの代表作の一つであり、当時その突拍子もない内容で大きな注目を浴びました。
暴力やセックスなど、欲望の限りを尽くす主人公と、徹底的に管理された社会とのずれを描き出した作品です。原作はアンソニー・バージェスが1962年に発表した同名の小説です。
時計じかけのオレンジのあらすじ
近未来のロンドンに住む15歳のアレックス・デラージが率いる4人組は夜は暴力に興じる悪質なグループです。アレックスたちはホームレスを棍棒でめった打ちにしたり、女性を強姦したりなど多くの悪に手を染めていました。
ある日ふとした事件で警察に捕まったアレックスは、特殊な治療を受け一度は暴力を受けてもあらがうことができなくなります。
人々はそんなアレックスへ復讐を始め、アレックスはぼろぼろになります。そんな中アレックスは自殺を試みたものの死には至りませんでした。
おすすめディストピア映画⑩ガタカ
「ガタカ」は1997年に製作されたアメリカ映画で、監督はアンドリュー・ニコル、そして俳優陣にイーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウなど有名俳優がキャスティングされています。
ガタカのあらすじ
近未来では人工授精と遺伝子操作により、優れた知能や体力、そして外見を持った「適正者」と、自然妊娠で生まれた「不適正者」の2種類に人種が湧けられていました。
そんな中、「不適正者」であるヴィンセントは自然妊娠派の両親から生まれたものの、後に「適正者」として生まれた弟の才能を目の当たりにし、劣等感を持つ毎日を送っていました。
やがてヴィンセントは通常では「適正者」にしかなれない宇宙飛行士になるという夢をかなえるべく、DNAブローカーとコンタクトを取り「適正者」の元水泳選手ジェローム・モローと出会います。
そしてジェロームと協力し合いながら、さまざまなトラブルを乗り越え自身の夢をかなえるべく、ヴィンセントは前進します。