韓国企業の日本への投資も促進

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

メイド・イン・ジャパンのブランド力は今も需要があるといわれますが、韓国から日本への進出をはかろうとする企業を支援する「対日投資促進」も業務の柱となります。ソウル事務所では毎年30社前後の企業を発掘し、10社あまりの進出を実際に手助けしています。日本へ送り出した後も本部にあるサービスセンターで手続き等の相談を行なうなど、国内外のネットワークを生かした支援が可能です。直近では、「釜山エア」の日本支店開設やシミュレーションゴルフ「ゴルフゾーン」などが好例でしょう。

震災以後は、復興のための日本支援が新たな軸に

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

コリアフードエキスポの様子
ビジネス関連の展示会開催やセミナー主催、日韓中小企業の技術交流にも取り組んでいます。特に震災以後は日本の復興を支える活動の必要性が高まる中、意義深い企画として印象に残っているのが2011年11月の「コリアフードエキスポ」です。食品の風評被害を払拭して日本の食をPRしようと、宮城県庁を含む19社・2団体の出展をサポートしました。多くの来場者が日本の商品を「おいしい」と言ってくれ、商談件数も目標値を上回ったのが嬉しかったですね。また医療機器産業で福島県と原州(ウォンジュ)市との技術交流を進めるなど、被災地域の利益につながるような日韓産業交流をさらに積極的にしていきたいです。
ほかにもコピー品取り締まりなど知的財産保護は韓国で特徴的な活動で、ジェトロソウル事務所には特許庁からも出向者がいます。こうした諸業務を日韓職員合わせて18名で分担しており、事務所の規模としてはジェトロの海外拠点の中で大きな方といえます。

企業の実態は地方に。津々浦々を訪問

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国は地方活性化の政策もあって全国各地に産業団地がつくられており、日系企業も工場を中心に地方に拠点が分散しています。したがって日系企業の活動実態を知るためには地方へ足を運ぶ必要があり、私も積極的にでかけています。日本からの大規模投資が多い工業都市・亀尾(クミ)では市長も出迎えてくださいましたが、所長である私が行くと責任ある立場の人と会うことができ、問題の核心が見えてきやすいのがメリットです。釜山(プサン)、大田(テジョン)、慶州(キョンジュ)、平沢(ピョンテク)、原州(ウォンジュ)…主要な地方都市はほとんどまわりましたね。一方で投資に関する様々な情報がジェトロに集まるため、ソウルの事務所でも日韓自治体などの訪問を受けいれ、情報交換と提供をしています。

「麗水エキスポ」日本館が進行中

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

5~8月まで開催中の麗水エキスポ
就任以来対応しており、現在ジェトロソウル事務所の最も大きな業務のひとつが「2012麗水世界博覧会」の日本館の運営です。日本の本部で数年前から計画をたてており、現地には今年の初めに事務局を立ち上げました。ソウル事務所からスタッフが常駐して、私も度々現地へ出向いています。復興・再生に向かう日本の姿勢を発信する展示や、ジャパンデーの実施など様々なイベントもあり、ぜひ多くの人に訪れてもらいたいです。

「港」から見える、ダイナミックな成長力

エキスポ以外にも、麗水は印象的な場所です。麗水の沿岸には日本の大手企業が大規模な投資をした化学コンビナートが多く、積み上げから搬出までの過程を見せてもらったのですが、そのスケールと最新の設備に驚きました。同じく麗水には韓国最大の製鉄会社・ポスコの大規模な工場もあり、湾岸を眺めると韓国の成長の背景が見えてきます。
ふ頭に関しても日本では各県に分散している一方、韓国では釜山をはじめ数カ所が重点的に開発されています。また仁川(インチョン)空港も当初は何も無い場所でしたが、いまやヨーロッパやアメリカへの経由地として日本の地方空港がこぞって発着する、アジアのハブ空港となっています。 韓国人は感情の起伏が激しいともいわれますが、いったん実行するとなるとパルリパルリ(「早く、早く」の意)精神でダイナミックに進みます。一緒に仕事をする上ではテンポが合わず難しい面もありますが、大規模な計画を実現してのけるパワーはすごいと思います。日本からの進出が増えているのは、そのように集中整備されたインフラも理由といえるでしょう。

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

釜山港

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

仁川国際空港

スキーの国際大会に出場!?プライベートをアクティブに満喫

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国に来て1年あまりですが、色々な物事を体験しようと楽しんでいます。体を動かすのが好きで、ジェトロの関係先や韓国の友人と北漢山(プッカンサン)に月に一度くらい登っています。また石川県出身ということもありスキーもしますが、冬季オリンピック開催の地・平昌(ピョンチャン)では、国際スキー大会へ出場した経験もあります。しかも種目は大回転で、いきなり試合でポールの間を滑りました。多数の欧米人出場者がいる中で滑走したことが、思い出に残っています。そのほか、ソウル俳句会には早々に入会し、四季折々の句作を楽しんでいます。
学校に通う暇もなく、韓国語は独学で学びました。早起きをして毎日1時間の勉強を半年くらい続け、現在は日常会話程度です。事務所では日本語が通じるので普段は困りませんが、麗水エキスポの開幕行事では、光陽(クァンヤン・韓国の都市名)市の市長との会話を、韓国語が堪能な武藤正敏在韓日本大使に通訳してもらったという裏話もあります(笑)。もっときちんと勉強して、簡単なスピーチくらいはできるようになったらいいですね。

日々必要な業務を見極めて

第61回~大砂雅子さん(日本貿易振興機構)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ジェトロソウル事務所の所長として、許される範囲において自分の裁量で仕事を動かせることにやりがいを感じます。フードエキスポでもそうでしたが、その結果として成果が上がり、企業の方々から感謝されるのが嬉しいです。日本では財政危機を背景に行政改革が叫ばれており、公官庁の事業に対してもますます見る目が厳しくなっています。ジェトロの業務は国の予算を使って実施しており、イベントひとつをとっても結果を出さなければなりません。外国ということもあり日々緊張の連続ですが、必要なことをしっかりと見極めた業務の遂行を、今後も行ないたいと思っています。

インタビューを終えて…

出張が多く、世界各国をまわってきた大砂さんですが、韓国は仕事が比較的やりやすいといいます。日本語が堪能な人が多く、主体的に仕事を行なってくれることと、融通がききやすく柔軟に対応してくれることが理由だそう。「外国だと予期せぬことも起こりますが、いちいち落ち込んでいても仕方がないので色々なことを楽しんだほうがいいと思います」と明るく前向きな姿勢、そしてグローバルとローカルの両方を同時に見つめるバランス感覚が、世界に羽ばたく日本企業の活動を支えているのだと実感しました。

独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)

経済産業省管轄の独立行政法人。日本企業の海外展開支援、対日投資の支援、企業に有益な調査・研究といった活動を通じ、日本の経済・社会の発展への貢献を目指す。日本国内に東京本部、大阪本部、アジア経済研究所のほか36事務所を、海外には55カ所73事務所をもつ。
住所:ソウル市 鍾路区(チョンノグ) 瑞麟洞(ソリンドン) 33 永豊(ヨンプン)ビル 3F
電話:02-739-8657
ホームページ:www.jetro.go.jp


提供・韓国旅行コネスト

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