グローバル化が進む中、日本企業の海外進出、また海外から日本へ投資する企業はますます増えています。しかし法律や経済、文化の違いなどから、多くの困難がつきまとうのは想像に難くありません。それら企業を支援するのが日本の経済産業省傘下の「独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO、ジェトロ)」です。一見とっつきにくいようですが「私たちのお客様は企業。彼らが利益を上げるようにサポートするのが役割です」と、明快に語ってくれたのはジェトロソウル事務所の所長・大砂雅子さん。多岐に渡る業務、またそれを通じて見えてきた韓国の社会経済事情を、鍾路(チョンノ)のオフィスで伺いました。
名前: 大砂雅子(おおすな まさこ)
勤務先: 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)
出身地: 石川県
在韓歴: 1年2カ月
経歴: 1979年に日本貿易振興会(現 日本貿易振興機構)入会。2000年シンガポールセンター次長、2007年産業技術部地域産業連携課長、2009年アジア経済研究所 国際交流・研修室長などを経て、2011年3月よりジェトロソウル事務所の16代目所長に就任。(財)国際開発センターにて開発経済エコノミストDiploma取得、早稲田大学大学院公共経営研究科修士課程修了。
法律から生活まで、日系企業の「相談窓口」
最近は外食産業の進出も盛ん
韓国への進出を考える日本企業は増加しています。電力や法人税の安さから以前より製造業の投資は盛んでしたが、韓国の大企業と関わる部品メーカーの場合、近年は生産拠点の安定化を目指し韓国への工場進出が増えています。またFTA(自由貿易協定)を背景に、韓国を通した輸出は関税が抑えられることも追い風です。さらに最近は外食チェーンや人材派遣といったサービス業が韓国市場の開拓を模索するなど、業種は多岐に渡っています。それら企業がまず相談に来るのが、ここジェトロです。
ソウル事務所のスタッフ(前列左から5番目が大砂さん)
一般のコンサルティング会社では業種の特性に応じた営業戦略を手助けするのに対し、ジェトロのサポートはワンストップ。会社の登記方法、現地職員の雇用、ビザの取り方、子女の学校など、労働から生活全般まで全てを投資の一環と考え、情報を提供しています。法務や労務といった相談もジェトロが提携している法律・会計事務所を通じて受けることができ、それらが全て無料という点も特徴です。
また日韓の労働法の違いをはじめとする様々な問題に対し、日系企業と韓国政府との交渉窓口となるのも、歴代の所長が請け負っている活動です。日系企業の商工会としての役割をもつSJC(ソウルジャパンクラブ)の産業政策委員長として、懸案事項を各企業から収集・整理し、韓国の知識経済部に提出しています。2011年度は35項目提出して7割の改善を取りつけました。さらに訪問される日系企業の方々や駐在員、韓国の大学生を対象に「韓国経済の現状」についての講演を月に数回行なっており、これら活動を通じても日系企業をサポートしています。