他人との距離が近い韓国

第57回~下澤京太さん(エスワン(SECOM))
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

前述の通り、日本語が可能な人が多い環境な上、技術的な話は絵を描けば通じることも多く、私も次第に韓国語を覚えていったので、職場ではコミュニケーションに不自由を感じたことがありませんでした。しかし、カルチャーショックを受けたのは他人との距離感が物理的にも付き合い方にも非常に近いことです。私は他人との距離感がかなり近い方だと自覚していて、むしろどれだけ相手との距離を縮められるかを考えるタイプですが、それを上回る近さにびっくりしました。例を挙げるときりがありませんが、日本であれば向かいあって座るのを隣あって座るとか、スキンシップが多いとか、初対面の人の家に泊まりに行くとか、色々と驚きました。

一度、地下鉄駅で具合が悪くなり、身動きもとれず胸を押さえて立ちすくんでしまったことがありました。すると通りすがりの人たちほぼ全員が「大丈夫ですか?」「何かできることはありますか?」と声をかけてくれました。日本では他人の領域に立ち入らないのが親切という考え方なので、私が助けを求めたら助けてくれる人はいると思いますし、だから日本が不親切だとは思いません。しかし、他人の問題であっても近く接しようとするのが韓国の人たちだなと感じた出来事で、幸い大事には至りませんでしたが私自身が「これはまずい」と不安と緊張に襲われていたので、多くの人が声をかけてくれたことは嬉しかったです。

知らないおばあさんの膝の上に自分の子どもが!?

第57回~下澤京太さん(エスワン(SECOM))
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国に来て一番印象的だったのは、韓国の人たちが子どもにやさしいことです。地下鉄やバスで子どもが一所懸命手すりにつかまっているとおばあさんが「ミョッサリヤ?(いくつなの?)」と言いながら膝にのせてくれます。私ははじめ驚いて「すみません!私の子どもなんですけど!」と言いそうになりました(笑)。お年寄りに席を譲るのも躊躇しませんね。日本では譲るかどうかすごく悩んで結局譲れなかったということがありますが、韓国では体に染み付いているようです。私の子どもがこうした環境の中で数年間育って、人のやさしさを肌で感じることができたのはよい経験でした。

軍隊経験の影響もあるかと思いますが、男性が女性を守るという意識も非常に強いと思います。その現われか、女性を夜遅くタクシーに乗せる場合はタクシーのナンバーを携帯で撮影します。タクシーの運転手に対しては抑止力になりますね。何でも自由、個人まかせになってしまった日本から見ると、韓国は変化をしていると言われながらも、弱い者を守るという意識が社会通念として浸透していて、まだまだ人々の背骨のようなものになっているのは羨ましいと思うと同時に尊敬します。

お互いをもっとよく知って、濃い交流を

第57回~下澤京太さん(エスワン(SECOM))
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

私のおすすめは馬場洞(マジャンドン)焼肉横丁です。朝鮮半島では数千年も昔から肉を食べる文化を持っていて、馬場洞へ行くと豚も牛も肉だけでなく皮膚も内臓も余すことなく使い尽くしてきた歴史やなぜ韓国の焼肉が美味しいのかを感じられるように思います。お気に入りの店は忠清道(チュンチョンド)チッで、日本から知り合いが来るたびに訪れているので、今や店のおばさんから「日本の息子」と呼ばれています(笑)。

韓国は箸と匙を使いますが、縦に置きます。日本は横ですよね。置き方が90度も異なるので違いは大きいですが、ナイフとフォークではなく箸と匙を使うという点では非常に近い食文化を持っています。何に注目するかによって、相手をどれだけ身近に感じられるかが違ってくると思います。

現時点での傾向ではありますが、日本の人たちは韓国について、たとえば、韓国史上重要な韓国の偉人、昔話、地域の特色などよく知らないですね。私も韓国に赴任するまで、韓国について本当に何も知りませんでした。しかし、韓国に来て驚いたのは、韓国の人たちが日本について非常によく知っていることでした。そのギャップは問題ではないかと感じています。

夜遅くまで勉強している高校生、競争社会にさらされているサラリーマンといった韓国の現代社会の様子にも関心を持ちそれを知っていれば、観光で韓国に来られるとしても、韓国の人と出会って話す機会ができた時に色んな話ができたり、仲良くなれたりできると思います。日本の人たちがもっと韓国を知ることによって、そのギャップが埋まっていけば、日本と韓国はもっと濃い交流ができるのではないでしょうか。
偶然出会った韓国という国ですが、日本に戻っても仕事はもちろん、交流行事などがあれば個人的にも関わっていきたいと思います。

インタビューを終えて…

安全面で不安のある建物にはお子さんを決して連れていかない、旅行の際は家族で非常口を確認する、といった専門家ならではの慎重さをお持ちでいながら、飲みの席で意気投合した初対面の韓国人の家に泊めてもらうなどの磊落な面もある下澤さん。その大らかさと韓国人に負けじと相手との距離をつめようと積極的に心を開いてこられた様子を伺って、自らのコミュニケーションのあり方を振り返らされました。通勤時に眺めるのがお気に入りだったというオフィスすぐ側の崇礼門(スンネムン、通称南大門)の火災がショックで、復元を目にせずに帰国するのが残念とのことでしたが完成時にはまた韓国を訪れて、これからも韓国とのつながりを持ち続けて頂きたいと思います。

株式会社エスワン

セコム株式会社とサムスングループとの合弁により、1981年に設立。住宅や店舗の保安システム、安全関連製品の販売、AED(除細動器)のレンタルなど、防犯、防災、安全に関わるシステムや製品を取り扱う事業を行なっており、韓国におけるセキュリティに関する専門企業として認知されている。
住所:ソウル市 中区(チュング) 巡和洞(スナドン) 168
電話:1588-3112
ホームページ:http://www.s1.co.kr


提供・韓国旅行コネスト

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