2018年2月に映画『スリー・ビルボード』が公開されました。複数の映画賞を獲得し、各国での評価も高い作品です。全体を通してシリアスな雰囲気と緊迫感に満ちたクライム・サスペンスです。そして実際の社会にも関わる深いテーマもあるようです。ここでは『スリー・ビルボード』のあらすじやキャスト陣、見どころについても解説します!
映画『スリー・ビルボード』とは
『スリー・ビルボード』は『セブン・サイコパス』のマーティン・マクドナーが監督を務めたクライム・サスペンスです。アメリカの小さな田舎町を舞台に、濃厚な人間模様を描くドラマが繰り広げられます。
『スリー・ビルボード』の簡単なあらすじ
アメリカのミズリー州エビングという町に、娘をレイプ犯に焼き殺されるという壮絶な経験をした母・ミルドレッドが居ました。彼女は一向に犯人が捕まらないことに憤り、警察を罵倒する3枚の大きな看板広告を掲載します。
エビングは小さな町なので瞬く間に赤くて大きな看板は話題になりました。この看板を設置したことによって、ミルドレッドは警察や住民との諍いが絶えなくなるのでした。
『スリー・ビルボード』のネタバレあらすじ
ここからはネタバレが含まれる詳しいあらすじを解説致します。ネタバレを見ることで不都合がある方はご注意ください。
ネタバレあらすじ①3つのビルボードに掲げられたメッセージ
主人公のミルドレッドは寂しい田舎道にある3枚の大きな看板を眺めます。ミルドレッドはこの看板に怒りのメッセージを込めようと思案してました。彼女の怒りは、彼女の娘・アンジェラがこの道沿いで7カ月前にレイプされ焼き殺されるという惨い事件によるものでした。
犯人に対しての憎しみに加えて、手掛かりを何一つ発見できない警察に対してもミルドレッドは憤っています。ミルドレッドが広告会社に依頼して設置した看板にはそれぞれ「レイプされて死亡」「犯人逮捕はまだ?」「なぜ?ウィロビー署長」と書いてありました。
そんなある日、広告で罵倒されたウィロビーはミルドレッドの自宅を訪ねました。捜査は続けているが、手がかりがないことを報告するためでした。そして彼は自身が末期のがんであることも、その場で伝えました。
ミルドレッドは彼が病気であることは知っていた様子でした。加えて、彼の言葉に対し「あなたが死んでからでは遅い」と言います。看板で非難されたウィロビー署長は街の住民からの人望がある人物でした。
そんな彼を非難したため看板は多くの人の反感を買うことになりましたが、そのなかでもウィロビーを敬愛しているディクソンはミルドレッドに強い敵意を向けます。
ミルドレッドとアンジェラの最後に交わした言葉は口論でした。その内容もかなり後味が悪いものです。ミルドレッドはその口論で「レイプされてしまえ」とアンジェラに言ってしまいました。その事実にミルドレッドはますます苦しみます。
ネタバレあらすじ②ウィロビー署長の自殺
ある日、ウィロビーは自宅で自殺をします。愛する家族との最期の思い出は、病で辛く悲しいものにはしたくないと遺書に書かれてました。ウィロビーを敬愛していたディクソンはこの知らせを聞いて悲しさと怒りで我を忘れて、ミルドレッドが赤い看板を設置した広告会社に押し入ります。
そして、広告会社の経営者であるレッドに大けがを負わせました。レッドに暴力をふるったことで、ディクソンは警察をクビになりました。そのことでディクソンはさらにミルドレッドを憎み、町の人々からの嫌がらせも激化します。
あの看板がなければ、ウィロビーはもっと生きれたはずだと街の人々は言いました。事態が悪化する最中でミルドレッドはウィロビーからの手紙を受け取ります。その手紙は生前のウィロビーがミルドレッドに宛てて書いたものでした。
手紙は犯人が見つけだすことができないことへの謝罪から始まります。そして「あの看板は名案。その思いを絶やさないために匿名で広告費を1か月分支払った」と励ますものでした。少し前の匿名で広告費5,000ドルの寄付をしたのはウィロビーだとここでわかりました。
ネタバレあらすじ③放火で燃えたビルボード
ミルドレッドの看板はある日放火され、あっさりと燃え尽きました。この出来事でミルドレッドはさらに怒りに囚われます。看板を放火した犯人が警察だと思い込んだミルドレッドは、深夜で無人の警察署に火炎瓶を投げつけました。しかしそこにはディクソンがいたのです。
ウィロビーはディクソンにも手紙を遺しており、警察署に保管されていました。ディクソンは手紙に夢中で逃げ遅れて、大やけどを負います。全身火に包まれて逃げてきたディクソンを見て、ミルドレッドは復讐心に我を失った自分の罪深い行為を自覚しました。
偶然通りかかったミルドレッドの友人の救助によってディクソンは一命を取り留めました。さらにその友人がミルドレッドを庇ったため罪には問われませんでした。
ネタバレあらすじ④ディクソンの成長
一方でディクソンの心を動かす出来事が起こります。ひとつめはウィロビーがディクソンに宛てた手紙に「傲慢な態度を改めて、レイプ犯の捜査を続けて欲しい」と書かれてたことです。
そして、ふたつめが自身が重傷を負わせた広告会社のレッドの優しさに触れたことでした。全身にやけどを負ったディクソンは以前自身が暴行をしたレッドと同室で入院します。
レッドはディクソンにオレンジジュースを勧めて、重傷で動きにくいディクソンでも飲めるようにストローの向きを調整するという気遣いを見せます。このふたつの出来事から、ディクソンはアンジェラの事件に本気で取り組むようになりました。
ネタバレあらすじ⑤犯人かもしれない男の出現
燃え尽きた看板はある青年の好意によって復活しました。しかし看板を燃やした犯人は元夫のチャーリーでした。その事実はミルドレッドの心を再び怒りで支配しますが、傍に居たチャーリーの彼女が言った言葉「怒りは怒りを来たす」で二人への反撃を思い止まります。
その一方で退院したディクソンはバーに居ました。そして偶然にもディクソンの後ろに座っていた客の「9か月前に女を犯した」という発言を立ち聞きします。さらに話を聞くうちにディクソンはその男がレイプ犯だと確信しました。
そして証拠を持ち帰るために男に喧嘩をしかけて、皮膚の一部を採取することに成功します。その後、ディクソンはミルドレッドに犯人らしき人物を見つけたと連絡をします。
ネタバレあらすじ⑥犯人不明のままエンディングへ
結果、ディクソンがバーで見つけた自称レイプ犯は人違いでした。男はDNAが一致しなかったうえに、アリバイがあります。この事実にミルドレッドとディクソンはすっかり落胆しました。しかしミルドレッドは希望を持つことができたと感謝の気持ちを伝えます。
男はアンジェラを殺した犯人ではありません。それでも女性をレイプしたにも関わらず、裁かれていないことに目を向けました。ミルドレッドとディクソンの二人はレイプ犯の住む場所へと車を走らせます。
そしてミルドレッドはディクソンに、警察署に放火したのは自分だと告白します。するとディクソンはそんなことはわかっているといったふうに笑いました。二人はレイプ犯を見つけたら殺すかどうか考え、互いにそれは気が進まないと一致します。そしてドライブはまだ続くといった感じで物語は終わりました。