国立民俗博物館
近年の風景(右端)と対比した作品
会場出口には観覧者の感想も
最終目標は「韓国民俗50年誌」
最終的な目的は2020年まで撮影を続けることです。そうすると50年間韓国を撮影したこととなります。50年、つまり半世紀という時間をかけることで、国や民族の動きが見えてくるのではないかと予想しています。表題は『韓国民俗50年誌』。これはお世話になった作家の司馬遼太郎先生の考案に由来します。
先生は私が写真集を出版するたびに表題をつけてくださっており、私が1984年に出した『韓くにシリーズ』三部作目では、訪韓13年目の私に『韓国民俗13年誌』を提案されました。しかし当時の出版界ではまだ「韓国」という直接的な表現を避ける風潮があり、結局その案は使われませんでした。
50年が経ったときこそ、そのときのタイトルが生きるような気がしています。また柳宗悦たちが朝鮮民族美術館(※)を設立したのが1924年でした。2020年に撮影を終えて編集を経て、ちょうど設立から100年にあたるころに、これまでの取材の節目として『韓国民俗50年誌』が上梓できればと願っています。
※朝鮮民族美術館:かつて京城(現・ソウル)の景福宮(キョンボックン)内にあった美術館。柳宗悦らの考案により1924年に開設した。陶磁をはじめ日用の生活用具類を展示。
撮りながら、考える
長年同じことをしていると確実にスランプが訪れますが、私の場合は写真を全て寄贈したことで心によい余白が生まれました。
現在は全国のバスターミナルや、ピマッコルをはじめ変化するソウルの街などを撮影していますが、活動のまとめをしたいという思いがあると、同じに見えていた景色も新しいものとして心に入ってくるので不思議です。
「なんのために韓国を撮り続けているか」という問いに対する私の答えは「よくわからない」です。商業目的の撮影では最初にテーマを決めて企画をつめますが、私は自分自身の表現活動として写真を撮っています。
はっきりとしたテーマや主張が先にあるのではなく、簡単には言いがたい、私の心を動かすものが何であるのかを知るために、写真を通して表現をしているのです。
全ては自分に戻ってくる活動なので、困難があってもさらに上を目指そうと思えます。だから私は写真を撮りながら考えていくという方法でこれからも続けていこうと思っています。
インタビューを終えて・・・
理由を求めても簡単に答えが出ないという点で、42年間寄り添った「韓国」は、藤本さんにとってまさに「人生」であり「生き方」に重なるのではないかという印象を受けました。50年間撮影するという目的が叶う頃には、藤本さんの作品に、また韓国への思いにはどのようなパノラマが広がるのか、期待が高まります。 ご自身も語っていますが、藤本さんと韓国との繋がりを最も的確に示しているのは、これまでに撮影してきた写真たち。ぜひ展覧会に足を運び、実際の作品に触れてみてほしいと思います。
10月1日まで国立民俗博物館で開催 「韓国を愛する巧 7080 過ぎ去った私たちの日常 」
藤本さんの作品の中から、1970~80年代の作品を中心に100点あまりが展示。自然とともにある美しい風景や生命力に満ちた時代の表情など、モノクロームの写真を通じて韓国を再発見できる写真展です。
・日程:2012年8月22日(水)~10月1日(月・祝)
・場所:国立民俗博物館 企画展示室1
・料金:無料
詳しくはイベントニュースをご覧ください
提供・韓国旅行コネスト
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