第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

欧米やアジアをはじめ世界各国にグループ企業を展開するワコール。その韓国法人、株式会社新栄(シンニョン)ワコールで唯一の日本人として、日韓はもちろん海外との連携促進に取り組んでいらっしゃるのが永井壮一さんです。かつては縫製など製造業の中心地であり、現在はアウトレットタウンとして知られる加山(カサン)デジタル団地にある事務所で、韓国における「ワコール」ブランド、そして日韓で異なる下着事情などについて伺いました。

名前 永井壮一(ながい そういち)
職業 株式会社新栄ワコール 専務理事
年齢 満57歳(1956年)
出身地 京都府
在韓歴 1年
経歴 1974年に株式会社ワコール入社。30年あまり販売や商品企画などに携わり、2012年4月より韓国で現職に就く。

国内営業から一転、日韓ワコールのパイプ役へ

韓国赴任の辞令を受けたのは、ちょうど1年前の2012年4月、フランス出張中のことでした。日本では販売や商品企画といった分野を担当しており、特に営業が長かったので外国とはあまり縁がなく、海外赴任も予想だにしていませんでした。アジアでは中国へ出張経験がありましたが、韓国は仕事でもプライベートでも訪れたことがなく、まったくの初めて。韓国語も分からないまま着任しました。

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

同僚と一緒に
新栄(シンニョン)ワコールは、1970年に日本ワコールと韓国の新栄繊維株式会社の合弁で韓国ワコールとして設立されたのが始まりです。韓国での私の主な役割は、日本本社と新栄ワコール間のパイプ役として、情報交換を密にしたり企画交流の促進などを支援すること。また、全世界に展開する現地法人との業務連携に関する窓口も担当しています。

現在、新栄ワコールはストッキングやレースなど繊維関連のグループ会社がありますが、今後は世界各国の生産拠点を活用したり原材料の仕入れなども積極的に推進していく必要があり、そうした相互連携に関わる業務にも携わっています。

「Wacoal」=高級下着ブランド

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

新栄ワコールでは、高級ラインの「Wacoal(ワコール)」や中高級ラインの「VENUS(ヴィーナス)」、若者向けラインの「solb(ソルブ)」など様々なブランドを展開しています。日本ワコールはターゲット別に多くのブランドがありますが、韓国では「Wacoal」という1つの高級ブランドとして存在しているのが大きな特徴です。

また、価格面でも違いがあり、例えばブラジャーの場合、日本ワコールは大体5,500円前後の中高級下着であるのに対し、韓国ワコールは10万ウォン(約8,300円程度)以上の高価格帯商品を主に取り扱っています。そのため40~50代のセレブな女性が中心顧客層となっています。

「見せる」日本VS「秘める」韓国 下着に対する美意識の違い

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

レース付も基本はモールドブラ

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

華やかなラメ入り素材
商品化にあたっては、素材やデザインで日本の企画を取り入れたり、共通で利用できる部分を生かしたりする場合もありますが、韓国の「Wacoal」は、ほぼ100%現地化しています。その理由として、まず日韓で販売の中心となるサイズが異なることがあげられます。

日本はC70、D70がメインですが、韓国ではB70とB75が中心で、日本に比べてカップが少し小さめです。これは韓国女性のバストが必ずしも小さいというわけではなく、ブラジャーのつけ方の好みもあるかと思います。
韓国ではバストをあまり大きく見せたがらない人が多いのか、小さいサイズを選ぶ傾向にあるようです。また、体型の違いもあります。新栄ワコールが韓国女性を計測した資料でも、身長・アンダーバスト・ウエストなど全てにおける平均値が日本と異なるという結果が出ています。

見た目に関しても、日本では「見せブラ」という言葉もあるくらいですが、韓国ではアウターファッションの違いからか、そういった認識を持つ人は少ないように感じます。それはブラジャーのタイプにも表れていて、韓国はバストの丸みを美しく見せるモールドブラや、カップに継ぎ目のないシームレスブラの比率が高く、概してアウターに響きにくいブラジャーが好まれる傾向にあります。

最近は弊社でも「見せる」要素に重点を置いた商品が登場していますが、モールドタイプにレースが装飾されたものが多いです。もうひとつ、日韓で好みのテイストが異なるなと感じるのが、カラーや装飾です。日本はブラウン系やピンク系ブラックが主流なのに対し、韓国はカラーバリエーションが実に豊富。日本でおなじみのカラーでも奇抜な色合いにあっと驚かされることも少なくありません。また、キラキラした光り物やスワロフスキー付きなど派手めの商品も人気です。

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

「見せる」下着として表には出さないけれど、内に秘めたおしゃれ感を楽しむ。韓国では、それがひとつの高級感の表れとして支持されているのかもしれません。

ちなみに、日本未発売のオリジナルデザインも豊富な韓国「Wacoal」ですが、サイズ表示は日本ワコールと同一です。もちろん品質基準も日本と共有しているため遜色ありません。

「超カワイイ!」日本人のお客様にも人気のsolb

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

百貨店の下着売場
「Wacoal」は高級ブランドという位置づけから、百貨店での販売ウェイトが高く、現在、新世界百貨店江南(カンナム)店や狎鴎亭(アックジョン)の現代百貨店などほとんどの百貨店に入店しています。

店頭には時間が許す限り足を運ぶようにしていますが、男性がウロウロしているとお客様にご迷惑なので、そっと見に行くことも多いですね。売場のスタッフに商品を見せてもらったり、売れ筋を聞いて販売動向の把握に努めています。

店頭廻りで一番お気に入りのお店は、明洞(ミョンドン)にあるsolb(ソルブ)直営店です。「solb」は20代前後がメインターゲットの中低価ブランドで、店内に「Wacoal」製品は置いていませんが、スタッフがみんな明るく元気で、客層も全く異なるため面白いです。

明洞という場所柄、旅行中に立ち寄ってくださる日本人のお客様も多いのですが、皆さん「solb」がワコールブランドとは知らずに購入されます。陰ながら見守るだけで接客ができないのがもどかしいですが、若い女性たちが「これ、超カワイイ!」と、韓国ワコールオリジナルの「solb」を手に取ってくださるのは非常にうれしいですね。

日本の下着売場は婦人・紳士が別々のフロアに分かれていますが、韓国ではブランドごとに展開する形を取っています。そのため1つの売場で男女両方の商品を取り扱っているのが特徴で、恋人同士や夫婦がペアで楽しめるカップル下着のディスプレイも韓国では一般的です。最初見たときは、とても新鮮で良いなと思いました。

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

明洞中心部にある「solb」

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

店内にはカップル下着も

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

流行を意識するため
色・デザインの回転が速い

ワコールグループは創業以来、女性に美しくなっていただけるものづくりをめざしてきましたが、それに携わる者として、お客様が売り場で商品を購入している姿を見るときが最もやりがいを感じます。また同時に、「次も喜んでいただけるように、もっと良いものを作っていかなければ」という思いにもさせられます。

休日は1人でソウルの街へ

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

盤浦大橋のみどころ、噴水ショー
週末はソウルの地理を覚えるためにも、なるべく1人で市内へ出かけるようにしています。韓国に来て1週間経った頃、ソウルいちの繁華街と聞き明洞を5時間近く歩き回ったこともありました。

最近は、自宅から自転車で江南やカロスキルまで行き、ぐるりと散策したりしています。ソウルでお気に入りの場所は、漢江(ハンガン)にかかる盤浦(バンポ)大橋です。特に夜の噴水ショーは幻想的で、その美しさに感激してしまいます。

言葉の不明点はとことん質問

韓国語は週末に自宅で勉強することが多いですが、まだまだ流暢に話すことはできません。言語の学習というと、新栄ワコールの社長は日本ワコールとの交流を大切にしており、社内では週に2回ほど始業前の早朝に日本語の勉強会が開催されています。

韓国人の同僚には日本語を話せる人が多いですが、私と会話する際にいつも「日本語が下手で…」と皆さん一言添えられます。本来は私が韓国語で話さなければならないのにと思いつつ、日本語でコミュニケーションできることに感謝しています。

製品を媒介にした会話であれば、ある程度通じ合う部分もありますが、それでもお互いに100%理解し合うことは難しいです。仕事をする上でのカルチャーショックは特にありませんが、言語については分からないままだとかえって失礼になることもあるので、不明な点は、とことん聞くようにしています。

パートナーシップの強さ、海外に出てみて実感

ワコールグループは世界各国で事業展開しているため、グループ企業のお客様をアテンドすることも多く、その機会を通じて実感したのが、弊社グループ間のネットワークやパートナーシップの深さです。国や文化が違えど、企業理念やものづくりに対する根本的な精神がグループ内でしっかりと共有されているのです。

好みや生活習慣の違いを考慮して、その土地の女性にとってもっとも良いものを作っていく。これはものづくりの原点が共有できていなければ不可能ですし、互いの信頼関係があってこそ可能なのだということを、海外に出てみて気づかされました。

韓国のコトを探し出していきたい

第69回~永井壮一さん(新栄ワコール)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

中高年を中心に人気の登山
新栄ワコールでは、2013年春よりスポーツ系商材を強化しています。3月末に明洞にオープンした日本の大型スポーツ店「XEBIO(ゼビオ)」では、日本ワコールのCW-X(シーダブルエックス)という筋肉疲労を軽減するコンディショニングウェアの輸入販売をスタートしました。

野球のイチロー選手やゴルフの青木功選手などトップアスリートの皆様にもご愛用いただいている人気商品ですが、マラソンや登山などスポーツ人口が多い韓国でも人気を集められるのではないかと期待しています。