イギリス山地区
展望広場から進んだ先に見えてくるのがイギリス山地区。かつてはイギリス軍の駐屯地があった場所です。バラと季節の草花を楽しめる庭園が豊富なエリアで、歩くたびに違った魅力に出会えます。横浜開港当時の面影を残す歴史的建造物や、横浜ゆかりの作品を展示する記念館など見どころがたくさんあるので、たっぷり時間をとって訪問することをおすすめします。
噴水が美しい立体庭園「沈床花壇(ちんしょうかだん)」
まずは、このエリアの魅力を語るうえで欠かせない庭園から紹介。立体的な花壇の造りが特徴的な「沈床花壇(ちんしょうかだん)」は、まるで花に包まれているかのような気分に浸れる美しい鑑賞スポットです。バラを中心に、季節の草花が約100種500株植えられています。
噴水を中央としたシンメトリーな構図が美しく、どの角度から写真を撮っても綺麗な風景が写ります。
バラの見頃を過ぎていたとしても、季節ごとに咲くたくさんの花々を鑑賞できます。
見た目だけでなく香りも楽しめるようにと、花の種類や配置にも数々の工夫が施されています。
ベンチに座って目を閉じ、香りに気を配ってみると、花自身が放つほのかな香りと太陽の心地良さを存分に感じられます。天気が良い日は花壇の近くでのんびり過ごすのも楽しそう。
異国感漂う景観が魅力!「イングリッシュローズの庭」
沈床花壇にある階段を登った先には、「イングリッシュローズの庭」があります。
英国風の庭をテーマにした庭園で、一年草と宿根草が混植されているのが特徴。約150種1,000株のバラと草花が植えられています。
花壇の周辺は異国の雰囲気が漂う不思議な空間。イギリス館を背景にすると、日本にいることを忘れてしまいそう。
バラの見頃は、例年5月中旬から6月中旬と、10月中旬頃。タイミングを合わせて訪れるのもおすすめです。
おしゃれな水路が自慢の「バラとカスケードの庭」
さらに奥へ進むと、イギリス館から山手111番館の後庭を結ぶ「バラとカスケードの庭」にたどり着きます。こちらの庭園では、約80種700株のバラを楽しめます。
カスケード(cascade)は、連なった小さな滝という意味。イギリス館と山手111番館の間にある噴水広場の水が、庭園内で滝のように流れ落ちる設計になっています。
水路を飾るように植えられたバラと流れる水の組み合わせが、なんとも優美な景観を作り出しています。
格式の高い英国領事公邸「横浜市イギリス館」
イギリス山地区の正面入り口付近にあるのが、横浜市イギリス館。1937年に英国総領事公邸として建てられました。
東アジアにある領事公邸の中でも格式が高いことで知られていた同館。一般公開されているので中を見学できます。
建物は鉄筋コンクリートの2階建て。洋館1階には、サンポーチ・客間・食堂が並び、広々としたテラスは芝生の庭に続いています。2階には寝室や化粧室があり、当時の暮らしのワンシーンを想像できます。イギリス館を背景に周囲の庭園を眺めるのも素敵な過ごし方です。
館内のカフェでローズ紅茶を味わえる「山手111番館」
イギリス館の反対側にある建物が山手111番館。スパニッシュスタイルが特徴的な洋館です。アメリカ人の両替商だったラフィン氏の住宅として1926年に建設されました。
高台に位置しているため、館内からはローズガーデン一帯を見下ろせます。現在は臨時休業中ですが、庭園を見ながらローズ紅茶を味わえる人気の喫茶室「カフェ・ザ・ローズ」を併設しているので、再開後はぜひ足を運んでみてくださいね。
秘蔵コレクションの数々は必見!「大佛次郎記念館」
沈床花壇の先に見える赤いレンガの建物は、横浜生まれの作家・大佛(おさらぎ)次郎の記念館。設計は、建築家・浦辺鎮太郎(うらべしずたろう)が担当しました。
館内では、氏が保有していた約3万5千冊の蔵書と愛蔵品を保管し、選りすぐりのものを常設展として一般公開しています。開館後に収集したものを含めれば、その総数は約7万点にものぼります。
幕末開花期を舞台にした名作小説の誕生エピソードや、当時の歴史背景が記された貴重な資料、氏の半生について、映像・パネルで詳しく学べます。
展示だけではなく内装建築にも注目。フランス文学や歴史に関心が高かった氏にちなんで、部屋の装飾にはフランス国旗を彩る青・白・赤の3色が使用されています。
おしゃれなインテリア装飾を随所で見られる館内は、お散歩気分でふらっと散策するだけでも十分楽しめます。
第3土曜日の14:00~14:15には、職員による「たてものミニ・ミニトーク」を実施しているので、気になる方は事前に予約しておきましょう。
そして大佛次郎といえば、生涯で500匹以上もの猫と暮らした愛猫家(あいびょうか)としても知られています。館内には猫をイメージした装飾や愛蔵品が至るところに見られ、猫好きにはたまらない空間となっています。
昭和を代表する文豪である氏に、「猫は生涯の伴侶」とまで言わせたのですから、猫たちにはあっぱれというほかありません。
また同館では、常設展のほかに年3回のテーマ展を開催しています。現在は、パリ・コミューン150年を記念した「パリ燃ゆ 名もなき者たちの声」を公開中。
大佛次郎が書いた「パリ燃ゆ」の原稿にはじまり、当時の様子をうかがえるポスターや民衆たちの生々しい声を記した手紙まで、貴重な資料が揃います。
秘蔵コレクションから厳選した1,000点以上のカリカチュア(パリ・コミューン期の絵入り出版物)を鑑賞できるイベントも開催中。色鮮やかなデジタルサイネージでじっくりと鑑賞できます。
今回のテーマ展は12月25日(土)まで展示されています。第2土曜14:00~14:30にはテーマ展示の解説を実施しているので、参加したい方は大佛次郎記念館の公式HPから事前に予約しておきましょう。
大佛次郎ファンはもちろん、文学に馴染みのない方でも楽しめる記念館です。ひとたび足を踏み入れれば新しい世界に触れられるので、ぜひ立ち寄ってみてください。