深田恭子さん、松山ケンイチさん主演の木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』。テーマはズバリ、“妊活”。さらに、ゲイカップルや子育て家族、子どもはいらないと主張する家族などが入り乱れるハートフルなヒューマンドラマです。物語はいよいよ後半戦です。

深田恭子主演の木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』。妊活中のカップルを中心に、さまざまな事情と問題を抱える4組のカップルが入り乱れる群像劇だ。

すでに第7話まで放送が終わっているが、このドラマの面白いところは、なかなか問題が解決しない部分にある。ドラマの作り手たちが、安易に解決させない姿勢を貫いている、とでも言うべきだろうか。
そのあたりがスカッとした結末を望んでいる視聴者と相容れず、視聴率の伸び悩みにつながっているのだろう。

■母親は自己犠牲の塊? 

第6話は大器(松山ケンイチ)の母・聡子(高畑淳子)のこんな言葉で始まる。

「母親っつーのはね、自己犠牲の塊なの」

第6話は、「母親」がひとつのキーワードになっていた。
聡子の言葉は、子育てに神経質になっている大器の妹、琴音(伊藤沙莉)に向けられたものだ。

聡子の言葉を聞いて、もっともだと思う人も多いかもしれないが、
「母親は自己犠牲が当たり前」という考え方自体は古いもの。

このセリフを聞いて、先日話題になっていた絵本作家のぶみが作詞した歌「あたしおかあさんだから」を思い出した人もいるはずだ。

「孫の顔も見ないで死ぬなんて、嫌ですからね。早く結婚してちょうだい」

これはゲイであることをひた隠しにしている渉(眞島秀和)の母・ふみ(田島令子)の言葉。渉の隣には朔(北村匠海)がいたが、ふみは2人が付き合っているなんて知る由もない。ふみのこうした態度が、渉の煮え切らない態度を生み出しているのだろう。

第7話に登場した深雪(真飛聖)の母親・百合恵(多岐川裕美)は、

「あなたは受験に失敗したところから、人生狂ってしまったから」

とさりげなく言い放つ。

娘の受験に狂奔する深雪の態度は、間違いなく百合恵の影響によるものだ。

古くて強い価値観が、キャタピラのようにメリメリと新しくてナイーブな価値観を踏み潰していく。母たちの言葉は「呪い」にも見える。新しい世代が自分の幸せを獲得するには、まず彼女たちの強い影響から脱する必要がある。

「私もお父さんも、奈々ちゃんのこと大好きなのよ。奈々ちゃんが大器のお嫁さんになって、本当に良かったと思ってんの。だから、子どもができようが、できまいが、そんなことどうだっていいの。あんたたちが幸せで暮らしてれば、それでいいのよ」

人工授精を続けて失敗して「妊活クライシス」に陥っている奈々(深田恭子)に向けた、聡子の言葉に救われた気になった人も多いだろう。しかし、聡子の言葉は根本の部分で勘違いがある。子どもが欲しいか、欲しくないかは、どこまで行っても奈々と大器の問題だからだ。

第7話では、渉がついに母・ふみに対してゲイであることをカミングアウトする。
衝撃を受けたふみは「お願いだから目を覚まして」と(口調は穏やかだが)激しい表現で詰め寄るが、渉はこう言う。

「自分や、自分の好きな人を否定されることが、こんなにも悲しいことだなんて、今の今まで知らなかったよ」

人にはそれぞれの価値観がある。

ただ、孤立するのではなく、お互い干渉し合いながら、偏見を乗り越えて、それぞれの価値観を尊重していこう、というのがこのドラマのテーマだと思う。

■ついに激突! 夫たちVS妻たち

第7話では、それぞれのカップルの不和が表面化した。

大器は「妊活クライシス」に苦しむ奈々を見ていられなくなり、治療のステップアップを望む奈々に対して不妊治療そのものをやめるよう提案するが、そのギャップに2人は激しく衝突する(大器の浮気疑惑もあった)。

亮司(平山浩行)の先妻の息子・亮太(和田庵)を受け入れたちひろ(高橋メアリージュン)だが、亮太を甘やかし続ける亮司に苦言を呈すると、「俺たち家族のことに口出さないでくれ!」と言われてしまう。

深雪は夫・真一郎(野間口徹)の再就職を待ち望んでいたが、真一郎が選んだ仕事は学習補助のボランティアだった。激昂した深雪が「本気でそんな生活をしていくつもりなら、この家を出てからにして!」と叫ぶと真一郎も「出てけばいいんだろう!」と応じる。

酒を酌み交わしながら愚痴をぶつけ合う男3人だが、それを聡子が「バカ亭主どもが!」と一喝する。これは聡子が正しい。彼らに必要なのは、妻と何歳までに何が欲しいか(必要か)を話し合い、ビジョンを共有することだ。

たとえば、真一郎が教育支援の仕事にやりがいを見出したのは結構なことなのだが、深雪にとってはあまりにも一方的だ。

第6話で亮太に対して言ったちひろの言葉、

「もし何か不満があるなら言ってね。私、お母さんじゃないから、心で思ってることまで汲み取ってあげらんないからさ」

は、いみじくもそれぞれの夫に対して当てはまる。「夫婦生活は長い会話である」というニーチェの言葉のとおりだ。夫も妻も、面倒でも疲れていても、お互い向き合って、あるいは同じ方向を見て、語り合い続けるべきなのだと思う。

奈々から正直な気持ちを打ち明けられた大器の言葉のとおりだ。

「やっぱりどんなにキツくても逃げないで、ふたりのことはふたりで話し合わないと、ダメなんだよな」

第8話からはいよいよラストスパート。それぞれのカップルの行末を見守りたい。


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