自然の恵みを取り入れた伝統菓子、「韓菓」
果物がない季節に、穀物の粉や蜂蜜を練り合わせて作った果物の代用品に起源を持つといわれている韓国の伝統菓子、韓菓。西洋菓子と区別するため、韓国の伝統菓子を広く「韓菓」と呼ぶこともあります。
基本的な材料は米や餅米の粉、小麦粉、きな粉などの穀物の粉と砂糖で作った蜜や蜂蜜、松の実、クルミ、栗、ナツメなどの木の実、果物や根菜などもよく使われます。ゴマや韓方食材である覆盆子(ポップンジャ)や五味子(オミジャ)、松の花粉などで着色した鮮やかな色合いが特徴で、生地を型で押し抜く技法だけでなく、早くから鉄鍋が普及したことで材料を揚げたり蜜で煮詰る製法が発達しました。
水飴を絡めて冷まし固めるヨッカンジョン
餅を揚げて作る油菓(ユグァ)
韓菓の最古の記述がある『三国遺史』
韓菓に関する最古の記述は『三国遺史』(1281)のもので、宮中の儀式に使われたと記されています。高麗時代(918~1392年)に仏教の隆盛とともに茶文化が広まり、菓子類も発達。朝鮮時代(1392~1910年)には王室の婚礼儀式「嘉礼(ガレ)」や、外国からの客のもてなしに欠かせないものになり、文献にあるだけでも254種あったといわれています。
やがて、庶民の間でも通過儀礼の特別な菓子というだけでなく嗜好品としても広まり、食習慣が西洋化した現在でも祭祀(チェサ)や名節など特別な機会の、真心のこもった贈り物として認識されています。
名節や祭祀での祭壇
名節の贈答品売り場
韓菓の詰め合わせ
代表的な韓菓7種類
時代とともに姿を変え発展してきた韓菓は、現在代表的な7種類に分けられます。比較的目にする機会が多く、日常的に親しまれているものから、慶事や儀式など特別な機会にだけ食べられる韓菓もあります。
日常の韓菓
油蜜菓(ユミルクァ)
材料:小麦粉、蜂蜜、生姜汁、香辛料、ごま油、酒など
小麦粉に蜂蜜や酒などを入れて練った生地を型で抜き、低温の油で揚げて蜜に浸して作る油蜜菓は保存性と栄養に優れた菓子。油蜜菓類の一つ、薬菓は韓菓の中で最も美味で上品だといわれ、当初は貴族の間で正月や通過儀礼などの行事で食べられる特別なものでした。後に、庶民の間でも流行し、材料である小麦や蜜を浪費するとして禁止令が出されたほど。円形だった形も祭祀で積み上げやすいように、四角く平たい形へと変わり、現在では様々な大きさや模様の薬菓が見られます。
平型になり積み上げやすく
スーパーやコンビニの店頭にも