お菓子のペペロ、ノグリラーメン、ドライフィニッシュdビール…韓国でおなじみのこれらの商品、パッケージデザインを手がけたのは、日本でも「キリンチューハイ氷結」「明治 ブルガリアヨーグルト」など数々のパッケージ開発に携わるデザイン会社、ブラビス・インターナショナルです。自らがデザイナーでもあり同社の設立者であるフミ・ササダ代表に、韓国での事業の裏側について、ソウル支社のオフィスでお話を伺いました。

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

名前 フミ・ササダ
勤務先 ブラビス・インターナショナル 代表取締役社長
年齢 61歳(1952年生)
出身地 徳島県
経歴 1968年に奨学生として渡米、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校卒業後、アートセンターカレッジオブデザインのグラフィック/パッケージデザイン学科卒業。米「ランドーアソシエイツ」本社にデザイナーとして入社、1992年に日本代表兼副社長に就任。1996年にブラビス・インターナショナルを設立、代表取締役社長に就任。2006年より公益社団法人「日本パッケージデザイン協会」理事長を務める。著書に『シクトマップス パッケージデザインのすべて』(2011年)。

0.2秒…商品と消費者をつなぐパッケージの力

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

年間に大量の商品を開発する大手メーカーでも、CM等の広告を打てる商品は極少数で、ほとんどのものは店頭が消費者との唯一の接点です。一方で消費者側を見ると、買い物をする前に具体的な商品名を決めている人は3割程度だといわれます。

多くの人は「歯ブラシ」「ビール」など品目までは決めていても、最終的な商品の選択は売り場で行ないます。多くの競合商品が並ぶ中で消費者が購入に至る、その過程で重要なのがパッケージデザインです。
人が一つの商品を見るのはわずか0.2秒程度だとされますが、その一瞬において商品のもつ特性、魅力をいかに伝えるかが私たちの仕事です。カラー、イメージ写真、ロゴ…売り場でぱっと目につき、お客さんが思わず手にとってみたくなるよう、多くの工夫をこらします。

韓国展開のきっかけは、あの大手食品メーカー

ブラビス・インターナショナルは、パッケージデザインを中心に、企業のコーポレートアイディンティティ(CI)やネーミングなど総合的なブランディング戦略を提案しています。

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ブラビスがパッケージを手がけた商品
韓国の事業は、私も参加する「日本パッケージデザイン協会」の海外交流活動を通じ、辛ラーメンで有名な食品メーカー・農心(ノンシム)の役員の方と知り合ったことをきっかけに始まりました。

同社のデザインアドバイザーを引きうけたりパッケージ製作を依頼されたりと、現地での活動が活発になるなかで、2005年にソウル支社をつくりました。当初は土地勘がなく、中心部から離れた九老(クロ)にオフィスを設けるなど手探りの部分もありましたが、徐々にクライアントを増やしていきました。

「全員でデザイン」。ユニークな体制で質を追求

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

当社の特色として、1つの依頼にスタッフ全員が関わることがあげられます。現在約70名のスタッフが在籍し、うちデザイナーは50名あまりです。同程度の規模の会社では担当制で業務が分かれるのが一般的ですが、ブラビス・インターナショナルは、新規案件は皆で共有し、ひとりひとりがデザインを作成します。

私自身がデザイナーの出身だからかもしれませんが、スタッフのスキルをのばし、なにより提案するデザインの質を少しでも高めたいという思いから、あえてこの方法をとっています。

特にパッケージ関連の仕事は代理店を介さず直にクライアントとやりとりすることがほとんどのため、クオリティの高いものをつくれば確実に次の機会につながります。引き受ける仕事の幅が広いことも特徴です。

商品ジャンルやターゲットとなる年齢層はもちろん、日本・海外問わずに多様な人々に向けた商品のデザインを行なってきました。海外プロジェクトでは、無理に「現地風」に見せるよう意識しないことを前提とします。

良いデザインは文化を問わないと思いますし、クライアントからも現地に無い革新的なデザインを期待されることが多いためです。ブラビスには韓国人のデザイナーも働いていますが、韓国の案件も、基本的には先にあげたように全員で取りくみます。

ビールに赤はNG?国による感覚の違い

ただし歴史・文化風習の違い、またそれらに付随するイメージ感覚の違いは、もちろん存在します。各プロジェクトでは現地状況も綿密に調査し、クライアントと意見をすりあわせながらデザインを作っていきます。

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

販売開始時のMaxパッケージ
色がもたらすイメージは、違いが表れやすい部分です。ハイトジンロ社のMaxビールは2006年のブランド立ち上げ時から携わっていた商品ですが、発売前に私たちがプレゼンしたデザインのひとつに、赤色を使ったものがありました。

ところが先方の担当者が「これは絶対に採用できない」と言うのです。「赤は熱さをイメージさせる色。冷やして飲むビールには合わない」との理由でした。日本ではビールのパッケージに赤を使うのは珍しくありませんでしたが、なるほどと思い、別の色に調整しました。
また「葬式を連想させる」として、白と黒も変更を依頼される場合があります。かつては日本も同様の風潮がありましたが、最近は現代的な印象を与える色としてよく使われています。しかし韓国や台湾などのアジア地域では現在でも避ける傾向が強いように思います。

ロングセラー「ペペロ」を30年ぶりにリニューアル

第76回~フミ・ササダさん(ブラビス)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ペペロ、カスタードなどの人気商品が対象に
ロングセラーのチョコレート菓子「ペペロ」をはじめ、ロッテ製菓の主要17品目のパッケージリニューアルを2012年に行ないました。パッケージは時代に合わせた微調整を重ねながら、訴求力を保つことが理想とされますが、対象となった商品は長年ほぼ変化がなく、行きづまりを迎えていました。