婚活、妊活、結婚しない人生、子をもたない人生。こんなテーマで話すとき、私たちを悩ませるのは「こうあるべき」という呪縛。思っちゃいけないことなんてないのに、自分の素直な感情よりも、なんとなく世間が望むような受け答えをしてしまって、つい、本音に蓋をしてしまう。そんなことってありませんか?
吉川トリコ『おんなのじかん』(新潮社刊)
こうした女性の人生にまつわる話題から、ダイエット、オタ活、お葬式ファッションまで、作家の吉川トリコさんが本音を炸裂させたエッセイ『おんなのじかん』(新潮社刊)が発売になり、話題を集めています。 本書のなかでも、吉川さんが妊娠7週目で流産したときのことを綴った「流産あるあるすごく言いたい」の回は、PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門を受賞し、人々の共感を得ました。多くの人が「触れてはいけない」と思っているであろう「流産」という話題に、「もっと気楽に話せる雰囲気があってもいいのでは?」と投げかけているのが大変印象的。 今回はそんな吉川トリコさんに、流産のこと、不妊治療のこと、そして、私たち世代の気持ちがふっと軽くなるような、楽しいお話を聞きました。3回に分けてお届けします。 【関連記事】⇒不妊治療や流産の話って“禁句”なの?「なんでや!」とぶちきれた日
「流産あるあるすごく言いたい」を発表したときのこと
38歳で結婚し、不妊治療を始めた吉川トリコさん。最初の体外受精で妊娠判定が出たものの、7週目で流産を経験します。「流産あるあるすごく言いたい」の回では、実際に流産して感じたこと、その時の様子、周りとの関わりかたなどが赤裸々に書かれています。 ――流産した当日、病室でカツサンドやプリンを食べたり、ボーイズラブ作品のドラマCDを聴いていたというエピソードが、とてもリアルに感じました。「流産あるあるすごく言いたい」の回が世に出てからの反応はどのようなものでしたか? 吉川トリコさん(以下、吉川)「以前、新聞のエッセイで流産について書いた時もそうだったんですけど、『私も経験があります』『私もです』とツイッターで話しかけてくれる人も多くて、嬉しかったです」 ――エッセイが連載されていたサイトでも、長い期間アクセスランキング1位ですね。 吉川「一度にめちゃくちゃたくさんの人に読まれたというよりは、細く長く、必要なひとに届いているのかな、という印象です。1年2年かけて『考える人』のランキングに長くあがって読まれているというのは、すごく嬉しいです。書いてよかったな、と思います」
最初は「不謹慎だ、ひどい」と言われないか心配も
――「流産あるあるすごく言いたい」を発表する前に、迷いのようなものはありませんでしたか? 吉川「やっぱり、そうは言っても怖かったんですよ最初は。流産した時にケロっとしていたということを不謹慎だと思われるんじゃないかとか。子どもが欲しくて、でも産めない人とか、流産を経験した人にひどいと言われるんじゃないかとか。そういう心配はありましたけど、でも出してみたら、そんなこともなくて。同じように『流産について隠されていることが嫌だ』と言ってくださる方もいて、あー、こんな風に書いていいんだ、と思えました」
吉川トリコさん
――とくに注意して表現された点はありますか? 吉川「本当に流産して悲しい人が、読んで傷つかないように、という配慮はしたかもしれないですね。こういうテーマだと、つい露悪的(編集部注:悪いところを故意に取り上げるあり方)になってしまいがちなんですけど、はしゃぎすぎないように、というか。 例えば、病院の手術室に向かう途中、新生児がたくさん並んでいるブースの前を通ったんですね。『こっちは流産しているのに、その前を通らせるのか』と割とドン引きしたんですけど、そういうことをあんまり面白おかしく書きすぎないようにしよう、というのはありました」