「好きなことを仕事に」と誰でも一度は夢見ます。しかし、実際に開業すると、予想外の問題に直面して挫折する人は少なくありません。今回は「好きなことで起業して仕事がしたい」と本気で考えている人のために、あえて好きなことを仕事にした場合のデメリットをお伝えします。

「好きなこと=仕事」のデメリットはあまり知られていない

多くのメディアで「好きなことを仕事に!」とうたっているせいか、好きなことで稼ぎたいと考える女性が増えています。自由で気楽なイメージがあるからかもしれません。ただ、好きなことを仕事にして成功する人がいる一方、挫折して元の環境に戻る人もいます。なぜでしょうか。

理由は「好きなことを仕事にした場合のメリットしか見ていなかったから」です。

就職や転職、結婚・出産・育児といった人生のステージには、必ずメリットとデメリットがあります。しかし、多くの人はメリットだけしか目に入りません。実際に新たなステージに立ってから初めてデメリットが見え、後悔や挫折を抱えます。好きなことを仕事にした場合も同じです。

逆の見方をすれば、好きなことを仕事にした後のデメリットをあらかじめ知っておき、起業前に準備をしておけば後悔も挫折もしにくくなります。

好きなことを仕事にした時のデメリット

では、好きなことを仕事にした場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。「時間」「お金」「心理」の3つの面から解説します。

「時間」に関するデメリット

時間の面では、次の2つのデメリットが挙げられます。

1.事務作業で時間を奪われる
自分ひとりで事業を行う場合でも、特に経理事務は必要不可欠です。例えば、次のような作業が発生します。

  • 契約書の作成
  • 見積書、請求書、領収書の発行
  • 記帳業務など毎日の経理処理
  • 決算・税務申告作業(個人ならば所得税の確定申告、法人ならば法人税などの確定申告)
  • 人を雇う場合の給与計算・社会保険加入・源泉徴収などの事務作業 これらの作業は慣れないと時間がかかります。単調な事務作業が元々好きな人でなければ苦痛を感じるかもしれませんが、「仕事」である以上、経費が発生するため避けることはできません。お金に関する業務は、収益の管理だけでなく、社会的責任につながるからです。

2.どんな事情があっても逃げてはダメ
ただの趣味なら、好きな時にやめることができます。しかし〝仕事〟ではできません。仕事には取引先や顧客、社員など「相手」が必ずいて、相手への責任が生じるからです。

気分や都合で仕事をやったりやらなかったりをすれば相手に迷惑がかかるうえに、確実に信頼を失います。好きなことを「仕事」にしたら、休みを返上してでも成果を出さなくてはならないのです。

「お金」に関するデメリット

お金の面では、次の3つのデメリットがあります。

1.すぐに稼げない
好きなことを仕事にしたい動機の一つに「好きなことで稼げるようになれば楽しいことだけで生きていけるようになる」というものがあります。残念ですが、好きなことを仕事にしても誰でもすぐに稼げるわけではありません。

起業当初は、自分の売るモノやサービスを買ってくれる相手がいないことが多いからです。時間をかけてコツコツと顧客を探して営業し、世間に存在が認められていくことで、やっと生活費を稼げるようになるのです。

2.業種によっては多額の先行投資が必要
小売業や飲食業のように、設備や什器などにお金をかけなくてはならない業種もあります。在庫が不要といわれるIT事業でも、コンテンツ作りにお金や時間を投資しなくてはならない場合もあります。

多額の先行投資を行ってもその後の事業で回収できればいいのですが、戦略を間違うと赤字撤退を余儀なくされることもあります。

3.稼ぐほど公的負担が増える
「好きなことを仕事にして稼ぐ」を実現し、成功した場合でも、稼げない時にはなかった悩みが生じます。それは「稼げば稼ぐほど公的負担が増える」という悩みです。売り上げから経費を差し引いた後の所得は次のような公的負担を計算する基礎となっています。

  • 所得税
  • 住民税
  • 事業税
  • 国民健康保険税 また、保育料や介護保険料(65歳以上)も所得額によって決まります。つまり、稼げば稼ぐほどこれらの公的負担は増えるため、「稼げるようになったのにあまり生活がラクになった感じがしない」と思うかもしれません。

    「心理面」に関するデメリット

    心理的な問題のなかでも一番大きいのが「仕事のモチベーション」です。一般的に起業で成功するには時間がかかります。成功の王道は「コツコツ継続すること」だけです。しかし、コツコツ努力するのが苦手なタイプは、成功する前にモチベーションが低下するかもしれません。