転職エージェントの間では、男性の転職者と比較して、女性転職者は「扱いが難しい」と言われているのだそう。しかも、原因は結婚や出産などの女性特有のライフイベントにあるのではなく、慎重で現実的な「内面」にある可能性が高いのだとか。キャリアアドバイザーの経験に基づいた、印象的なエピソードをお話ししましょう。
転職エージェントが「女性の転職者は扱いが難しい」という理由は?
Cinq読者の皆様、こんにちは。
人材紹介業界16年目のキャリアアドバイザーAと申します。
今回は、今すぐ転職活動をしたいと思っている方や、今すぐの転職は考えていないけれど、将来転職しなくてはいけない事態に遭遇した時に慌てなくて良いようにしておきたいな、とお考えの読者の皆さまに向けて、人材紹介業界のウラ側の情報も交えてお伝えしていきます。
私が、人材紹介会社で働き始めた15年前。
「女性の転職者は扱いが難しいから、あまり深追いするな」と上司に指導されたことが何度かありました。
私も女性ですので、女性特有の悩み(結婚や出産、子育て、介護等のライフイベント)を共有したり、解決のお手伝いをしたいと考えていましたから、この指導には当然反発しました。
が、上司にその理由を聞いたり、実際の現場で起きたことを総合的に判断すると、そういう指導もあながち間違いではないのかも…と思うこともしばしばありました。
どうして「女性の転職者は扱いが難しい」と定義されがちなのだと思いますか?
重要な選択だからこそ、時間が必要な求職者
ある時、20代後半の一般事務経験をお持ちのWさんが登録に来られました。
彼女は30代に向けて「一般事務だけではなく専門性を身に着けたい。今の会社では女性には経験を積む場がないので、転職したい。経理にキャリアチェンジしたいのでと独学で簿記3級を取得し、2級取得に向け勉強中」だと言いました。
Wさんの転職の条件は、未経験から経理を教えて貰える環境であれば、年収は少しくらい下がっても構わない、というものでした。
未経験でもチャレンジ可能な案件を複数提案し、その中で2社が書類選考通過。
X社という会社から、すぐに内定をいただきました。
X社はそれほど大きな規模の会社ではありませんでしたが、通勤の便もよく、何よりWさんに経理を基礎から指導できる先輩がいるところが魅力で、新天地として選択するには適した職場だと思われました。
「Wさん、X社から内定のご連絡をいただきました。おめでとうございます!」と意気揚々と電話で連絡した私に、Wさんは言いました。
「すみません、すぐの内定受諾は無理です。
実は他にいくつか会社を受験していて、そちらは年収がX社より高いんです。結果が出るまで、答えを保留にしていただけませんか?」
内定からの保留期間は長くて2週間程度ですとお伝えし、私はWさんの回答を待ってしまいました。
この件に上司は、キャリアコンサルタントとして「私の選択は間違っている。すぐに内定受諾するように彼女を説得しろ」と言いました。
けれど、当時の私は「転職するのはWさんなのだから、最終決断も彼女に任せなければ」と考えていました。
結果的に、どうなったかと思いますか?
回答期限まで待った挙句、当日もう一社の結論が出なかったため、内定受諾を決断できなかったWさん。
X社からは「期限までに意思決定できない方だと思います。弊社とはご縁がなかったのですね」と、内定を取り消されてしまいました。
更に悪いことに、待ったもう一社も、結局二次面接で不採用となってしまったのです。
こうして、転職活動がやり直しになりました。
何度も有給休暇を使って面接を受けていたWさんは、現職に転職活動をしていることを悟られてしまい、居心地が悪い中で活動を続けざるを得なくなりました。