市場調査は釣りの世界と同じで、「釣ったもの勝ち」です。可能な限り多くの調査結果を集めるには足で稼ぎます。弊社は韓国に1社しかないため、韓国全土が営業範囲。私も月の3分の1は出張で、販売店への商品紹介や市場調査に出かけています。
これまで韓国の都市という都市はほぼ訪れましたが、何十回と足を運んでいるのが済州島(チェジュド)です。済州島は暖流と寒流が出会う場所であり、また島全体が溶岩でできているため海底の起伏が激しい地域。潮の流れが複雑なので魚のエサとなるプランクトンが発生しやすく、韓国では絶好の釣り場として知られています。釣りの盛んな場所だからこそ定期的に足を運び、販売店での売れ筋を把握したり商品動向を分析して商品企画に役立てています。
自分の起こしたアクションが結果に直結する世界

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

小倉さんが制作したLUKINAホームページ
釣り業界は企画者と顧客が直接的に繋がっているのが大きな特徴です。顧客の生の声がなければ企画も生まれません。昨年発売した、ヒラメ釣りの道具をトータルで揃えられるシリーズ「LUKINA」は大きな反響を得られました。韓国は仕掛けだけ、竿だけと単品に特化したメーカーが入り乱れており、お客様からも分かりにくいという声があったため、総合釣り具メーカーである弊社の強みを生かして開発しました。さらに持ち物リストから釣り方まで紹介するホームページも開設し、購入から使用まで全般的にサポートする形で展開したのが功を奏しました。

私は企画を担当していますが、商品の誕生から販売までの一連の流れの中では一つの役割に過ぎないと思っています。「誰が作ったのか」が重要なのではなく、営業担当者たちが自社の商品として自信をもってお客様に紹介し、喜んでもらえたり意見をいただきながら、そこで得られたアイディアや改善点を企画者である私に提案してくれる。さらにより良い商品が生まれるためのそうしたサイクルを作る手伝いができていることに今はやりがいを感じています。

今、私は弊社に対する多くの人の期待を感じながら、それに応えられる立場にあります。成功するにせよ失敗するにせよ、自らの行動が結果を出すことに直結している点は非常に面白いです。日本でもルアーロッド(ルアー釣りで使用する竿)の企画に携わり同じことを思っていましたが、市場への浸透が早い韓国の方がよりダイレクトな感じがします。
休日も釣り三昧!初心者も大歓迎の釣りクラブ
プライベートでも週末はほとんど釣りに出かけています。先日も一人で慶尚道(キョンサンド)晋州(チンジュ)まで鮎釣りに行ってきました。地方へ行くと方言が聞き取れないことも多々ありますが、一緒に釣りをしていた梅農家の人から旬の梅をおすそ分けしてもらったりと、温かい人情にも触れられて楽しいです。

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

SJC釣りクラブにて

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

釣った魚はその場で味わうことも
SJC(ソウルジャパンクラブ)の釣りクラブにも所属しており、基本、毎月1回の例会では50名を越える会員たちと一緒に釣りに出かけたり、イベントを開催したりしています。初心者、経験者問わず気軽に参加できるので、家族連れや女性も多いですよ。男性は比較的釣り自体を楽しむことが重要なので1~2匹釣れたら満足しますが、女性はまず、かかった船代を計算します。「元は取らねば」という思いからでしょうか、夢中になってずっと釣っています(笑)。
「釣り」は誰でも知っているという点で身近なものですが、やり方が分からないため敷居が高いのだと思います。特に女性は彼氏や父親に連れて行ってもらう機会がないと、釣りとの関わりを持つことは難しいです。そうした垣根を釣りクラブを通じて取り払っていきたいです。
多様な機会の活用で「釣り」をもっと身近に

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

同僚は日本生活経験者が多い
韓国への異動は家族を日本に残しての海外赴任で、大変な面も確かにありますが、逆に世界を知るための良いチャンスだと捉え前向きに考えました。当初は韓国語も「アンニョンハセヨ(こんにちわ)」「メクチュチュセヨ(ビールください)」しか分からなかったので、毎日がスリルと笑い、失敗の繰り返しでしたが、「来たからには楽しもう!」と気持ちを切り替え、積極的に出かけるようにしました。日本を離れたことでポジティブになれましたね。

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

仕事の面でも自分で限界を定めず、どんどん挑戦していきたいです。そんな姿勢で毎日業務に取り組んだ結果、韓国でも認められたことで、「もっと頑張れるのではないか」「次の新天地にもチャンスがあるのではないか」という気持ちが芽生えたのは大きな変化でした。「一度だけの人生」とはまさにその通りで、チャレンジしたいことはまだまだたくさんあります。韓国に来たことで欲張りになってしまいました。

韓国のアウトドア市場は登山ブームもあって急速に拡大しており、昨年その規模は売上高基準で世界2位に浮上しました。しかし、釣りに関しては体験したことがない人はいまだ多く、もっと釣りが身近なものとして認識されるような紹介の仕方が必要だと思っています。また、ボートなど他のアウトドアレジャーとのコラボレーションを通じても今後はより広く展開していきたいです。「百聞は一見に如かず」と言いますが、釣りは最初の一歩さえ踏み出せれば、きっと楽しんでもらえます。それだけは私、確証が持てます(笑)。
中国には「一生幸せでいたければ釣りを覚えよ」ということわざもある通り、釣り自体は非常に楽しいものです。しかしゴルフなどと違い、ルールが存在しないことが釣りの最大の欠点であり、問題です。釣り場のごみ問題は依然深刻ですし、小さな魚を持って帰ってしまう人も多く、このままでは資源が枯渇して釣り文化の衰退にもつながりかねません。仕事からは少し離れますが、釣りを楽しむ多くの人々に未来を見据えた釣りについての意識もぜひもってもらいたいです。
インタビューを終えて…
「パルリパルリ(早く早く)に加え、カプチャギ(突然)の国。どこで何が起こるかわかりません(笑)」と韓国を表現された小倉さん。しかし、そんな予測不可能な毎日も、持ち前のポジティブシンキングで刺激と捉え、どこか楽しみながら巧みに乗り越えられているような印象を受けました。若者や女性など今後取り込める余地のある層は厚く、韓国での本格的な釣りブームはまだまだこれから。ぜひその立役者となってご活躍されることを期待しています。
韓国ダイワ株式会社
釣具をはじめゴルフやテニスなど各種スポーツ用品の企画・開発を行なうグローブライド株式会社の韓国販売拠点として2005年に設立。リール・ロッド・ルアーなど9,000種以上にのぼる釣用品の販売およびアフターサービスを手がける。

住所:京畿道(キョンギド) 高陽(コヤン)市 一山東区(イルサンドング) 獐白路(チャンベンノ) 208 ソンアムビル8F
電話番号:031-949-5225
ホームページ:www.daiwakorea.com


提供・韓国旅行コネスト

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