自然を感じながら楽しむレジャーの中で根強い人気を誇る「釣り」。韓国でも近年アウトドアに対する関心の高まりから釣り人口が増えています。釣りが盛んな日本の釣り具は品質も世界トップクラスと言われ、韓国の釣り人にも日本製を好む人が多いそう。そんな韓国でおなじみの日本の釣具ブランドが「DAIWA(ダイワ)」です。現地でマーケティングを担当し、商品開発や市場調査に日々奔走されている小倉友和さんに、日韓の釣り文化の違いや韓国の釣り事情について、京畿道(キョンギド)一山(イルサン)のオフィスで伺いました。

名前: 小倉友和
勤務先: 韓国ダイワ株式会社
年齢: 満38歳(1975年生)
出身地: 東京都
在韓歴: 2年4カ月
経歴: 1999年に「ダイワ精工株式会社(現グローブライド株式会社)」入社。福岡営業所にて2年半営業に携わった後、本社の営業課、商品開発、新規事業担当を経験し、2012年1月より現職。
食事も景色も…まるごと楽しむ韓国の釣り

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

日本と韓国は地理的に近いため、釣る魚や釣り方は基本的に同じです。大きな違いといえば、韓国の人々は釣りに出かけること、つまり釣行(ちょうこう)そのものを楽しむ傾向が強いです。釣りだけではなく、行った先で料理を味わったり美しい景色を見たり…と、釣りに行く1日をトータルで満喫します。
特に大事にされていると感じるのが食に関してです。日本は比較的釣り自体がメインで、食事はコンビニなどで簡単に済ませば良いと考える人も多いですが、韓国では釣りの合間にしっかり食事をとります。海に出る船釣りは昼食付がほとんどで、船長が料理を作ってくれることも。食事をせずに釣りをしていたら、船長から「早く食べてください!」と怒られたこともありました(笑)

釣りの一番の楽しみは、やはり釣った魚を自ら食べることです。その味は格別で、まさに釣り人だけの特権です。韓国でも刺身で食べられることが多く、メウンタン(辛い鍋料理)も好まれます。

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

刺身はコチュジャンで食べるのが韓国式

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

メウンタン
人気は初心者でも扱いやすいルアーフィッシング

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

釣りは大きく淡水と海水に分かれます。淡水で人気なのはルアーという疑似餌を使ったブラックバス釣り、そして韓国で忘れてはならないマブナ釣りです。プンオと呼ばれるマブナの釣りは古来から行なわれ、市場規模も一番大きく、韓国では釣りの代名詞となっています。

海釣りではアオリイカやマダイを狙うルアー釣りの人気が高く、韓国南方の南海(ナメ)では秋になるとタチウオ釣りが大盛況です。ソウルから遠いため、釣具屋が企画したツアーバスで麗水(ヨス)まで行くスタイルが普及しており、一度行くとその釣果に驚きます。

個人的におすすめは、ソウルから車で1時間ほどの仁川(インチョン)沖でできるヒラメのルアー釣りです。ヒラメと言うと日本では高級魚のイメージがありますが、初心者でも意外と簡単に大物が釣れる面白さがあります。
見た目にもこだわる韓国人、商品選びは高級志向
現在は主に日本の商品を輸入販売しています。対象魚が似ているため使用する道具は同じですが、求められる商品の種類は日韓で趣向の違いが現れます。韓国の人々は特に見かけを重視するようで、初心者でも高価な最上級モデルを購入する人が多いです。

また韓国の釣りのスタイルに合わせた商品開発も行なっています。例えばタチウオ釣りの場合、日本では2~3本の針の仕掛けに軽めのオモリを使用することが多いですが、韓国は10本以上の針に200号(750g)以上のオモリを用います。使用する仕掛けによりロッドやリールも異なるため、こうした釣り方の違いに合わせた釣り具を取り揃える必要があります。韓国専用品の数は年間で発売される新製品のうち約4分の1程度を占め、売上規模はまだ小さいですが徐々に増やしていく予定です

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

高価だが高性能の製品が売れ筋

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

伝統工芸の螺鈿細工を取り入れたロッド
釣果メインだった専門誌で「ハウツー」指南を連載中
他にも、実釣(じっちょう)と言って販売店の担当者と一緒に釣りに行き釣法を体験してもらったり、新製品の取材対応、日本の釣り方や針の結び方などを紹介するために雑誌の記事連載も行なっています。韓国には釣り専門の雑誌が6誌ありますが、いずれも内容は「どこで、誰が、何を釣ったか」が中心です。

その背景には、とにかく数・大きさを競う韓国の釣り人たちの高い競技志向がありますが、釣り場に関する情報はともかく、どうやって釣るのか、どんな道具を買えば良いのかなど、初心者向けの情報が不足しており、釣りに関心はあっても始め方が分からない人が多いのが現状です。

道具の販売だけでなくハウツーまで含めて釣りの魅力を伝えていくことは、弊社の課題でもあり、今後注力していかねばならないと思っています。

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

釣り専門誌やムック本

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

手がけた連載や特集

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

説明のイラストもお手製
「釣ったもの勝ち」の市場調査、活きた情報は足で稼ぐ

第79回~小倉友和さん(韓国ダイワ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

済州島の海
マーケティングの仕事は常に目線を先へ向け、市場調査などを通じ今後起こりうる出来事を予測することが重要です。現在の流行は全て過去に計画していたものなので、今流行っているものを作っていては遅いです。特に韓国は変化のスピードが速いため、いち早く情報をキャッチしていかねばなりません。