韓国マンガ事情~韓国漫画の歴史
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

「マンガ世界」

韓国マンガ事情~韓国漫画の歴史
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当時のマンガ房のようす

日本海賊版マンガの流入(1950~)

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「キャンディ・キャンディ」の海賊版は、作者欄に「NAKAYOSI」とだけ書かれている
1950年代は、日本マンガが流入し、不法コピーが行われるようになった時代でもあります。その代表的な例が、1940年代の日本のマンガ「少年ケニア」の不法コピー版「ジャングルの王子」です。

釜山の業者によって持ち込まれ、このマンガの複製技術がのちの海賊版マンガの典型になったとも言われています。海賊版マンガは、その作者名が韓国人あるいは不透明になっているのが特徴で、海賊版マンガと意識されずに読まれていたようです。

70年代には「キャンディ・キャンディ」「ベルサイユのばら」などの海賊版が登場し、のちの純情マンガに大きな影響を与えました。

抑圧されるマンガ文化(1960~)

60年代はマンガ房を中心にマンガが発展。しかし60年代後半からの軍事政権下で、マンガは子どもに悪影響を与えるとして「6大社会悪」に指定され抑圧されはじめます。まず1968年に児童マンガ倫理委員会が発足(のちの刊行物審議倫理委員会マンガ部)、マンガ房のマンガに対する事前検閲が行われるようになります。「低俗」「暴力的」「虚無的」「反抗的」などあいまいな審議基準でしたが、社会批判的要素は細かくチェックされました。こうしてマンガ房のマンガは徐々に内容が単純化し、比較的審議のゆるい雑誌マンガが頭角を現し始めます。また、日本との国交断絶により日本の海賊版マンガが審議の対象外となっていたことが、逆に海賊版マンガの流通に拍車をかけました。

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

カラー付きのマンガ雑誌「セソニョン(新少年)」は、
現代の雑誌に近いかたち

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「ライファイ」は当時のSFマンガの代表作だが、倫理委員会はSFジャンルを「荒唐」と考えた

マンガ雑誌の台頭と単行本化(1970~)

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テコンVの人形
マンガ雑誌の台頭とともに、70年代はマンガ雑誌に連載された人気作品の単行本化が始まった時代です。もっとも多くの単行本化が行われた「クローバー文庫」シリーズは、100ページ程度だった従来のマンガ房のマンガに対して250ページほどで構成されていました。70年代後半にはより高級化した書店用の単行本も多数出版されました。

この頃少年マンガでは、日本の「マジンガーZ」の影響を受けた「ロボットテコンV」などSFジャンル、「新版宝島」などのコメディジャンルが多数登場し、人気を得ました。
純情マンガも人気でしたが、審議会による厳しいチェックからやがて沈滞し、引き続き日本の海賊版マンガが多く読まれていました。

激動の80年代

初のマンガ専門誌「宝島」(82年)、成年マンガ専門誌「マンガ広場」(85年)創刊によって、本格的なマンガ雑誌時代が訪れました。依然として軍事政権下にあった80年代は、スポーツや財閥、アクションといった題材のマンガがヒットしました。当時を代表する作品としては、イ・ヒョンセ「恐怖の外人球団」、パク・ボンソン「神の息子」、コ・ヘンソク「腰絶腹痛 不請客」、イ・チンジュ「走れハニー」などがあります。また「食客」で有名なホ・ヨンマンも、この頃スポーツ、哲学、SFなど多様なジャンルのマンガを世に送り出しました。長編マンガが多数登場したのもこの頃です。純情マンガでは、ファン・ミナ「われらは道に迷った小鳥を見た」などが有名。

またこの時期マンガが読者層を広げたことにより、農民や労働者、現代社会を描いたリアリズムマンガの登場を呼び、民主化運動の手段としても使われました。

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「宝島」

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イ・ヒョンセ「恐怖の外人球団」

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イ・チンジュ「走れハニー」

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「IQジャンプ」創刊号
88年民主化宣言以降は、「マンガ王国」「週間マンガ」「IQジャンプ」「ルネッサンス」といった各種マンガ専門誌が次々と創刊され、多様なジャンルのマンガが連載を始めました。

純情マンガ専門誌「ルネッサンス」にはファン・ミナやキム・ジン、キム・ドンファ、シン・イルスク、キム・ヘリンら代表的純情マンガ家が大挙連載し、のちの純情マンガ発展の基盤を作り上げました。

マンガ全盛期(1990~)日本マンガのライセンス版登場

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

初の成人マンガ専門誌
「MR.BLUE」
90年代も引き続き、少年マンガ専門誌「少年チャンプ」、成人マンガ専門誌「ヤングジャンプ」「ヤングチャンプ」、純情マンガ専門誌「テンギ」「タッチ(現issue)」「wink」「ミンク」、成人純情マンガ専門誌「White」などが創刊されました。特に純情マンガの勢いが目覚しく、カン・ギョンオク「ノーマルシティ」、シン・イルスク「リニージ」、ファン・ミナ「レッドムーン」、キム・ヘリン「北海の星」「火の剣」、イ・ウネ「BLUE」、キム・ジン「風の国」、ウォン・スヨン「フルハウス」など数多くのマンガが人気を得ました。また、スポーツ新聞にもマンガが連載されるようになりました。

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各種純情マンガ専門誌

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キム・ジン「風の国」は
18年間続いた超大作
この頃からマンガ市場は、ソウル文化社、大元CI、鶴山文化社の3大出版社が占めるようになります。

「ドラゴンボール」「スラムダンク」「セーラームーン」「花より男子」「赤ちゃんと僕」「動物のお医者さん」といった日本のマンガは、正規のライセンス契約を経て各マンガ専門誌に翻訳連載され、単行本も人気を博しました。こうして海賊版は姿を潜めていきます。

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

貸本屋(チェッパン)
しかしいじめなどの増加による青少年保護法(96年)制定で、マンガは青少年有害物として再び規制されるようになります。真っ先に減ったのは成人マンガでした。

また97年のIMF経済危機によって国民的に節約が迫られると、破格の値段で読める貸本屋(チェッパン)が急増し、各出版社は貸し本用マンガというジャンルを作らざるを得なくなり、以後マンガ市場は貸し本中心へと逆戻りしていきます。

拡散するマンガ。ウェブトゥーンの登場

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

それぞれのカップルの物語で人気となった「純情漫画」

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話題を呼んだ映画「純情漫画」
インターネットが普及した2000年代には、インターネット上で楽しむオンラインマンガ、ウェブトゥーンが登場しました。97年からオンライン「朝鮮日報」で連載されたパク・クァンスの「クァンスセンガッ(クァンスの考え)」の人気を機に、以後縦スクロールで読んでいくウェブトゥーンが定着していきます。代表的なマンガとしては、シム・ヒョンスン「パペポポメモリーズ」、カン・プル「純情漫画」があります。

また、近年になって「ギリシア神話」「ことわざ」などを題材にした子ども(学習)漫画も登場し始めました。

2000年代はマンガの映像化も特徴のひとつで、マンガ原作のドラマや映画がたくさん製作されています。韓国マンガでは、ホ・ヨンマン「食客」「いかさま師 ~タチャ」をはじめ、パク・ソヒ「宮」、ウォン・スヨン「フルハウス」、キム・ジン「風の国」、イ・ヒョンセ「恐怖の外人球団」(ドラマ名は「2009外人球団(邦題:ストライク・ラブ)」)、ウェブトゥーン「純情漫画」などがあります。

韓国マンガ事情~韓国漫画の歴史
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「宮」はマンガもドラマも大ヒット

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ドラマ「フルハウス」は
Rain(ピ)とソン・ヘギョ主演で人気に
参考文献:・『マンガ 韓国マンガ100年』(韓国マンガ100周年委員会、2009)
・山中千恵「韓国マンガにおける日本の位置付け-日本マンガの需要史-」(『年報人間科学』Vol.22、大阪大学大学院

参考資料:・人間科学研究科社会学
・人間学・人類学研究室、2001)

マンガ専門店「漢陽TOONK」の店長に聞く!

弘大(ホンデ)エリアに位置するマンガ専門店「漢陽(ハニャン)TOONK」は、98年のオープン以来10年以上続いている、マンガ専門店の代表格。韓国マンガ文化について、さっそくお話を伺ってみました!

韓国マンガ事情~韓国漫画の歴史
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

キム・ギソン店長
オープン当時はマンガ房や貸与店が全盛期でしたが、弘大は美術系が有名なので、マニアを中心に有名になりました。

ただ韓国マンガ市場は日本のように大きくないので、韓国のマンガ家が日本の出版社と直接契約するケースも多く、マンガ市場が育たない悪循環を生んでもいます。今でも国内で販売されるマンガの6~7割は日本翻訳版で、売れ筋マンガも日本の「NARUTO」や「ONE PIECE」など。韓国のマンガ市場を日本のマンガが引っ張っているのが現状でしょう。韓国のマンガ家の作品も松本大洋や井上雄彦のように愛蔵版で出るくらいになってほしいですね。
それでも最近は、マンガのクオリティの向上で、「買って読む」「所蔵する」読者が増えていますね。ウェブサイトで「立ち読み」して、本当に欲しいマンガを購入するんです。大人買いする社会人も多いですよ。むしろマンガ房や貸与店は減っています。

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

左:パク・ヒジョン「Martin&John」、
右:シン・イルスク「アルミアンの4人娘」

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(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

左:パク・ソンウ「NOW 薙雨」、
右:高橋ツトム&キム・ジョンヒョン「無影」

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(左から)「MONSTER」「ROUGH」「金田一少年の事件簿」の翻訳版
その作風から日本マンガと相通じる部分が多い韓国マンガ。その背景には、日本マンガの影響も受けていた初期のマンガ家たちが基盤を作ったことが関係しているようです。また最近は再び書店にもマンガが置かれるようになりましたが、「マンガは借りて読むもの」というイメージは今も強く、韓国のマンガ家の地位は依然として高くないのが現実のようです。

韓国マンガ史についてよりディープに知りたいという人は、ソウル近郊の富川(プチョン)市にある韓国漫画博物館に足を運んでみて下さい。
また、「韓国のマンガ事情・中編」では、韓国マンガの特徴や日本マンガとの関係によりクローズアップする予定ですので、ご期待下さい。


提供・韓国旅行コネスト

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