優しさなのか、関係性の放棄なのか
写真はイメージです(以下同じ)
「うちの夫は優しいんです」
そう言うのはカオリさん(39歳)だ。結婚して9年、7歳のひとり娘がいるが、いまだに口げんかひとつしたことがない。
「共働きなので、『これ、やっておいて』と言ったことは必ずやってくれる。私のやることには反対しない。みんなからいい夫ねと言われます。でも私は、いつも自分だけが空回りしているような気がして寂しいんです。誰もわかってくれませんが」
家族旅行をするときも、行き先を決めるのはカオリさんと娘。外食する際、何を食べるのか決めるのもカオリさんと娘。夫が本当は何を望んでいるのかわからない。
「義父母の誕生日などにプレゼントをしようということなったとき、夫が『おふくろにはスカーフなんかいいんじゃないかと思う』と言ったので、『好みがあるからむずかしい。手袋はどう?』と勧めたら、『そうだね、それがいい』と。だから手袋を送ったんですよ。
あとから義妹が『おかあさん、スカーフをほしがっていたの。兄貴は知ってるはずだけど』って。私が手袋をごり押ししたみたいになってる。知っているならスカーフをほしがっていたと伝えてくれればいいのにと夫に言うと、『きみの言うことには逆らえないから』という言葉が返ってきたんです。それはおかしいでしょ。
これはひとつの例ですが、一事が万事、そういう感じ。私が一言発すると、それに則(のっと)ってことが進んでしまう。夫はそれを『妻を尊重する』と勘違いしているんですよね」
言いたいことがあるならはっきり言ってほしいし、自分が間違っているなら指摘してほしい。それすらしないのは「関係性を放棄している」ことにほかならないとカオリさんは言う。
だから彼女は、「周りが褒めるほど、夫は私を尊重していない」と思うのだそうだ。
「うちは奥さんがエライから」と言いまくる夫
夫婦不和 距離あくまで“傾向”ではあるが、男性の習性として「器の大きな男に見られたい」というものがある。
「男ははなからエライのだから、その偉(えら)さを前面には出さず、妻の尻に敷かれているように振る舞うことで、自分の器の大きさを見せつけたい。そんな面もあるのかもしれません。うちの夫に限っては」
カナエさん(44歳)はそう言って苦笑する。4歳年上の男性と結婚して15年。13歳と10歳の子がいる。
「うちの夫は外に行くと、自身を卑下(ひげ)することで私を持ち上げようとするんです。親戚が集まった席でも、私が何か言うと、『うちの奥さんはオレと違って頭がいいから』って。
夫は社会的地位もあるし、経済的にもそれなりに稼ぐ人。そういう人が自分を卑下するのは嫌味でしかないですよね。
友人夫婦と食事をしたときも、『うちの奥さんはボクと違ってユーモアがあるんですよ』と言いまくる。妻を持ち上げることで、自分の器はでかいぞと言っているみたい」
カナエさんがそう思うのは、家にいるときの夫がまったく褒めてくれないからだ。非難することもないかわりに褒めることもない。カナエさんは専業主婦だから、家庭のことに口を挟(はさ)まないのが「妻を尊重すること」だと夫は思っているようだ。