韓国語はせりふから勉強!韓国の舞台を観劇してまわり表現力を研磨
正規キャストに決まってからの今回は、歌の留学も兼ねて1ヶ月半ほど韓国に滞在して2日に1回のペースで歌の練習をしていました。 また、「プリシラ」「モーツァルト!」「ヘドウィグ」「ウィキッド」「ドラキュラ」など、自分のパフォーマンスに生かそうと色々な韓国の舞台を観劇しました。
というのは、2,000回公演で韓国の舞台に立ってみて一番収穫だったのが、その日の自分の気持ちと役柄、さらには観客の気持ちをリンクさせることの大切さを実感し、常に考えるようになったからなんです。
舞台と観客との距離が近い韓国ミュージカルの良い点を僕も日本の公演に取り入れたりしていますが、そもそも韓国の俳優さんは自分の役に対する考え方が徹底していて、観客の気持ちをリンクさせるパフォーマーとしてのセンスがすごく研ぎ澄まされているんです。
また自分なりの演技や歌い方、解釈の仕方を尊重するはっきりとした環境が韓国にはあります。それで色んな俳優さんの演技をたくさん見て、自分の幅を広げることに努めました。
今回は勉強のために知り合いの韓国ミュージカル俳優さんたちにもあまり知らせず、見たいキャストの時に自力でチケットを取って行きました(笑)。
大切なのは韓国語での情感表現!そのために努力を惜しまなかった日々
2,000回公演の時と会場が違い舞台の構造やセットが変わったこともあって、空間とどう付き合っていくか考えながら演じるいい機会になりました。客席1列目が舞台と同じ高さにあって境界がなく、客席2列目からどんどん階段状に上がっていくんですが、そうすると前の席は舞台と距離がとても近く、後ろの席はどうしても舞台を見下ろす形になってしまいます。
そのため、その舞台構造の特徴を皆さんすごく考えて演じています。僕も屋上シーンでは、天井から吊るされている照明機材に遮られて見えにくいかもしれない後方席のお客さんにもソロンゴの気持ちが伝わりやすいように、座って歌うなど工夫しました。
また、感情は日本語で湧いてくるんですが発するのは韓国語なので、せりふや曲のテンポ、発音までアンテナを張り巡らせていました。正直2012年の時は、同年前半に日本で演じていたソロンゴの気持ちを引っ張って頑張った感じで、韓国語の文法をまったく覚えられなかったんです。
でも今回は当時に比べ韓国語も少しは分かるようになって、色々な役を経験して、言葉の大切さを実感するようになっていたので、言葉・歌の発音に比重を置こうと決めたんです。日本のスタイルにこだわらずに、韓国のスタイルに適応しようと。
それで日本でも自主的に練習しましたし、韓国に来てからも歌の先生やスタッフと練習して、他のソロンゴ役の韓国人俳優さんたちの演技もしつこいくらいモニターして、言葉のハンデに甘えないように努めました。それが外国で演じる上で当然のことだと思いますしね。
それから、日本語の歌詞は韓国語の歌詞とよく似てはいるんですが、日本語の性質上情報量が多くない箇所があります。たとえばソロンゴがナヨンへの想いをつづる「チャム イェッポヨ」も、知ってみると原語の歌詞の方がもっとロマンチックでいい曲なんですよ。そういうことが分かった点でも、韓国オリジナル公演に参加してよかったと思っています。
劇中韓国語の勉強をするソロンゴ(野島さん扮) モンゴル人であるソロンゴと同じリアルな「外国人」として表現しやすかった部分もありますが、発音だけは常に気をつけて、毎回出番前に台本を読み直したり、発音が合っているか共演者の方々に聞いてもらったりしてできるだけ正確にするように頑張りました。
本番中も共演者の皆さんがアドバイスをくれたりして助けられた部分も多いですし、分からないことや気になることは自分からどんどん聞きに行っていました。
ソロンゴがナヨンや韓国の人たちと話したいと思って一途に頑張る姿と、僕が共演者やスタッフの方々と韓国語で話したいと思う姿は100%一致すると思うので、そういう意味でも役にのめり込めたんじゃないかなと思っています。
経験値のある俳優として公演をよりよいものにしようという責任感が以前より格段に高まって、自分への妥協を許したくないがゆえに、食い下がって僕なりに納得するまで研究して、120%の力を注いだつもりです。でもそれだけに自分的には反省点も多くて、まだまだ課題も多いですね。
共演俳優・スタッフたちとの「家族」のような信頼関係が舞台「パルレ」をつくりあげる
9年間ロングラン公演を続けている「パルレ」は、強い絆のある作品だと思います。それだけに、これまで1人もいなかったリアルな外国人を今回初めて起用したのは大変な判断だったと思うので、とても光栄で、その気持ちに応えたい、製作者の方々や「パルレ」ファンの方々を失望させたくない、という思いが強くありました。
すでに出来上がっている輪の中に僕1人突然加わることに多少不安がありましたが、楽屋も「パルレ」の世界観のように、韓国人も外国人も一緒に頑張ろうといった和気あいあいとしたアットホームな雰囲気でとても良かったです。
この作品は、段取り程度だけ共有して俳優同士の呼吸で進む部分が多いので、稽古時はその距離感やタイミングをはかるのに少し手間取りましたが、お互いに信頼関係を築けたので大きなミスはなかったです。
舞台の上で目と目で合図したりタイミングをはかるといった呼吸は信頼関係があってこそできることなので、何より普段からのコミュニケーションが大事です。たとえば、ソロンゴと同じ移住労働者で友達のマイケルと2人で掛け合いをする冒頭のシーンは、作品の最初を勢いづける重要な場面で絶対に失敗できないんです。 でも実はマイケル役のチョ・フンさんと合わせたのはマイクチェックの時だけで。普段からコミュニケーションをとっていたので、そんなプライベートでの仲の良さがそのまま舞台に反映された感じでした。シーンが終わってハケる時には舞台袖で誰かがお迎えしてくれたり、やさしい言葉をかけてくれたりと気を配ってくださるいい人たちばかりでしたね。
また、演出家のチュ・ミンジュさんは演技や歌い方を僕に任せてくれたので、全身全霊で歌って演じられたこと、自分を提示していくことにチャレンジできたことでも大きな意味がありました。とてもありがたく、参加してよかったと思っています。
夢は日本の「パルレ」舞台に韓国人ソロンゴを連れていくこと
今後の予定は、2015年1月と秋に「パルレ」10周年記念日本公演があり、1月公演の出演が決定しています。家族のようにとても大事に思っている作品なので、仕事というより家族の一員として、必要なときはこれからも何かしらのかたちで関わっていきたいと思っています。
実は、今の僕の一番の夢は、近い将来、韓国のソロンゴ役の俳優が日本公演でソロンゴを演じること、そのためのサポートをすることなんです。家族の一員、その中の兄貴分として、逆のパターンでソロンゴを演じた僕にしかできないお手伝いができると思うし、したいと思っています。
また、韓国ミュージカル界ともコンサートやミュージカルなど何らかのかたちで接点を持ち続けるつもりです。それから、2015年に日本で「レ・ミゼラブル」にも出演が決まっています。そうそう、来年は韓国ミュージカル俳優のヤン・ジュンモさんが「レ・ミゼラブル」の主役ジャン・バルジャンを演じるので、共演することになったんですよ!
彼にはすごくお世話になっていて、去年あったオーディションでは日本語のせりふを練習する際にお手伝いをさせていただいたりもして、もう家族のような感覚なので、今からとても楽しみですね。
インタビューを終えて…
「郷に入らば郷に従え」と日本でも韓国でも常に努力を惜しまない野島さん。日韓の俳優・スタッフ同士の交友関係を大切にし、次のステップは「日韓友好公演のかけはし的存在になること」と話してくださいました。ミュージカル・演劇分野での日韓交流はまだまだこれから。ぜひその先駆けとなってご活躍されることを期待しています。
提供・韓国旅行コネスト
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