東欧モルドバ共和国とウクライナ国境付近に南北へ延びるドニエストル川沿岸には、多くの人々が静かに定住し、独立国家を保っています。今回は、そんな未承認国家トランスニストリアの首都ティラスポリをご紹介します。

未承認国家トランスニストリアができあがるまで

ソビエト連邦崩壊によって誕生した15の独立国家

1991年のクリスマスにソビエト連邦が崩壊した際、15の自治州が次々と独立しました。トランスニストリアがある東欧の国モルドバもその一つで、複数の自治州からなる共和国です。モルドバに住む人種は主にルーマニア人、公用語もルーマニア語というほぼルーマニアの小国です。

しかし、モルドバの東方に位置するドニエストル川沿岸には、ロシア語を話すロシア系住民が多く住む地域がありました。それが、今回紹介する未承認国家・トランスニストリアがある地域となります。

東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=en.wikipedia.org、『トリップノート』より引用)
東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=en.wikipedia.org、『トリップノート』より引用)

モルドバ共和国への反発

ソビエト連邦崩壊により、位置的にモルドバ共和国に組み入れられたトランスニストリアは、その決定に猛反発!1992年には戦争にまで発展します(トランスニストリア戦争)。

今も昔も、非常に静かに音を立てず流れる川沿いでは、戦争が起こりやすいと云われていますね。この静かな川岸で、そう遠くない過去に戦火を交えていたのですね。

東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=toshel、ドニエストル川、『トリップノート』より引用)
東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=toshel、ドニエストル川、『トリップノート』より引用)

戦争終結後、トランスニストリアは世界的にもモルドバ共和国の一自治州と認識されていながら、主権は及んでおらず、一国家を主張して独自通貨を使用するなど、未承認のまま27年(2019年時点)事実上の独立状態にあります。

東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=toshel、『トリップノート』より引用)

独立後は、厳しい経済状況が続く

事実上の国家とはなっていますが、人口は2015年統計で48万人。日本では東京都葛飾区の人口より少し多いくらいで、その人口も徐々に減少傾向にあります。実際、首都ティラスポリを歩いていても、歩行者は少なく、車の往来が多いわけでもないため、どこか寂しささえ感じます。

東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=toshel、キリム文字で「ティラスポリ」と書かれていると思われる、『トリップノート』より引用)

また、GDPはおよそ10億USドル(約1,100億)と、日本の中小企業並み。目立った大きな産業もなく、どうやってこの国が成り立っているのか不思議です。街の雰囲気や、人々の様子を見ていると、派手に暮らしている人はほとんどおらず、皆様、慎ましく生活されている様子が伺えます。

豆知識:国名の呼び方の違い

「トランスニストリア」はモルドバで使用されるルーマニア語の呼び名で、ロシア語では「沿ドニエストル」と呼ばれています。

東欧の川沿いに佇む静かなる未承認国家トランスニストリア(沿ドニエストル)
(画像=toshel、政府機関建築、『トリップノート』より引用)

それでは、未知の国トランスニストリアへ出発です。