消費税還付とは、課税業者自身が消費税を払いすぎていたときに受け取れる還付金のことです。課税業者として登録している個人事業主も消費税還付を受けられる可能性があります。今回は、少々難しい消費税還付について分かりやすく解説します。

消費税還付の基本的な仕組みは?

(写真=PIXTA)

消費税とは、商品やサービスに関して徴収すると定められている税金のことです。消費税は、消費者が直接納める税金であり消費税還付には関係ありません。消費税還付を受けることができるのは、消費税を国に納める課税業者です。課税業者は、商品やサービスを販売するために仕入れなどで消費税を支払います。

しかし、完成した商品やサービスを実際に消費するのは最終的にそれらを購入する消費者です。課税事業者は消費者から受け取った消費税を税務署に納めますが、このとき消費者から受け取った消費税から支払った消費税を控除することができます。この仕組みは、消費税が二重三重に累積してかからないようにするためです。

例えば、550円の商品に10%の消費税がかかっている場合を考えてみましょう。その商品の仕入れには220円かかっていて、そのうち10%の20円は仕入れにかかった消費税と仮定します。すると以下のような図式が成り立ちます。

  1. 仕入れ元の課税業者:220円として販売、20円を消費税として納税
  2. 商品を販売する課税業者:220円を支払って550円で販売
  3. 消費者:550円支払って商品を購入、そのうち50円は消費税
  4. 商品を販売する課税業者:消費者から徴収した50円から仕入れでかかった20円の消費税を引いて、30円分を消費税として納税
  5. 結果、仕入れ業者が20円、販売業者が30円で合計50円が国に納付される

仕入れに使った消費税と消費者から集めた消費税を相殺した結果、課税業者が支払った消費税のほうが消費者から受け取った消費税より多くなる場合があります。その場合は、確定申告によって消費税還付を受けることが可能です。よくある例は、作った商品を輸出する場合です。国内ではその商品が消費されず仕入れの消費税を支払うばかりになるため、消費税の還付が受けられます。

輸入の場合は、国内で消費されますので通常と同じく消費者から消費税を徴収します。

個人事業主も消費税還付を受けられる?

(写真=PIXTA)

個人事業主の場合、「免税業者か」「課税業者か」によって消費税の還付を受けられるかどうかが決まります。前々年における課税対象の売上高が1,000万円に満たない個人事業主は、基本的に免税業者です。免税業者の場合は、そもそも消費税を納める必要がありませんので消費税還付の資格はありません。

「前々年における課税対象の売上高が1,000万円以上ある」「前年の1月1日~6月30日までの期間に課税対象の売上高が1,000万円以上ある」といった場合は、消費税を納める義務のある課税業者となります。また、売上高に関係なく課税業者として届けている場合も課税業者となります。課税業者の場合は、消費税還付を受けるための申告をすることで消費税還付を受けることが可能です。

現在は免税業者でも将来的に導入されるインボイス制度の影響で課税業者になれば、消費税還付の申告ができるようになります。消費税額は、原則として一般課税の方法で計算しますが、簡易計算方式の採用も可能です。

【一般課税の計算方法(原則はこちら)】
・課税期間中の課税売上高に対する消費税額-課税期間中の課税仕入れなどにかかった消費税額=納税する消費税額

【簡易課税制度による計算方法】
課税期間中の課税売上高に対する消費税額-(課税期間中の課税売上高に対する消費税額×みなし仕入率)=消費税額

みなし仕入率は、業種ごとに以下のように決められています。

  • 第1種事業(卸売業):90%
  • 第2種事業(小売業):80%
  • 第3種事業(製造業等)農林・漁業、建築業、製造業など:70%
  • 第4種事業(その他)飲食店業など:60%
  • 第5種事業(サービス業等)運輸・通信業、金融・保険業、サービス業:50%
  • 第6種事業(不動産業):40% 簡易課税制度は、課税売上高が5,000万円以下で事前に届け出をしている場合のみ認められます。いずれの計算方法にしても、帳簿と請求書等の保存はしっかりとする必要があります。

    課税業者が消費税を納める時期と消費税還付に必要な書類

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課税業者となった場合、直前の課税期間の消費税額によって中間申告・納付回数が決まります。基本的に個人事業者は翌年の3月末日までに、法人は課税期間の末日の翌日から2ヵ月以内に、消費税(地方消費税もあわせて)所轄税務署に申告および納付をしなければなりません。直前の課税期間の消費税額が48万円を超える場合は、中間申告が必要です。中間申告・納付回数と消費税額の関係は以下の通りです。

【直前の課税期間の消費税額が48万~400万円以下の場合】
中間申告・納付回数は年1回で2分の1の消費税を納める

【直前の課税期間の消費税額が400万~4,800万円以下の場合】
中間申告・納付回数は年3回で4分の1ずつの消費税を納める

【直前の課税期間の消費税額が4,800万円~の場合】
中間申告・納付回数は年11回で12分の1ずつの消費税を納める

消費税を納めるときに控除不足還付税額がある場合は、消費税の還付申告書を作成し、消費税の還付申告に関する明細書を添付して提出します。

消費税還付の申請を考えるときの注意点

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消費税還付の申請を考えるときには、いくつかの注意点があります。まずクレジットカードの明細は領収書として使えません。消費税還付の申告には領収書が必須ですので、別途必ず領収書を受け取りましょう。また、帳簿や請求書、領収書にも支払った金額の内訳で消費税がいくらかかっているのかといった詳しい内容の記載が必要です。

さらに消費税還付を受ける場合、税務調査が入る可能性が高いといわれています。日ごろからきちんと会計処理をしていれば問題ありませんが、税務調査が入っても困らないように準備を怠らないようにしましょう。

消費税の還付には明細書の保存など必要な対策を

(写真=PIXTA)

消費税還付を受けるには、課税業者となり消費者から消費税を徴収し国に消費税を納める必要があります。個人事業主でも輸出業の場合は、仕入れにかかる消費税を多く払っているため消費税還付が可能です。消費税還付を受ける際は、消費税がいくらかかったについて明快に分かるよう帳簿・請求書・領収書に詳しい内容が記載された明細書を提出する必要があります。

課税業者になるタイミングで税の専門家である税理士などに相談し、必要な対策を進めるようにしましょう。

文・藤森みすず

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