育児の話題で頻繁に耳にする「食育」ですが、保育園や幼稚園でも食育活動が行われています。 園での食育活動は食育基本法という法律に基づいて行われているのを知っていますか。この食育活動の目的と狙い、家庭でも真似できる食育活動についてご紹介します。
そもそも食育とは? いつから食育が広まったの?
そもそも「食育」とはどんなことをいうのでしょうか。食育とは、食に関するいろいろな知識を身に着け、バランスのいい食事を選択し、健康な食生活を送るための力を身につけることです。食育の言葉や考え方は19世紀末に日本で誕生、ブームとなった時期もありました。1970年代から食育が再び唱えられるようになったのは、不規則な食事による肥満・栄養の偏り、生活習慣病の増加、過度なダイエットなど広がり、健康が食生活が注目されたことが理由とされています。
国も食育を政策として取り入れ、2005年に食育の基本的な理念を提示した「食育基本法」が制定されました。2006年には食育基本法に基づき、食育の推進に関する基本的な方針や目標について示された「食育推進基本計画」が制定されます。これにより、国として食育を推進し、健康な食生活を支援していく流れが強まったのです。
食育は心や体の基礎が育まれる乳幼児期こそ重要
食育はその考え方が誕生したときから幼児期に取り組むことが重視されていました。心や体の基礎ができる乳幼児期から食育に取り組むことで、大人になってからも食に関する正しい知識を持ち、健康な生活ができるというわけです。そのため、幼稚園や保育園でも食育活動が盛んに行われるようになりました。筆者の住んでいる地域でも、子供たちが野菜を育てたり、遠足で芋掘りやみかん狩りなどの体験を通して食育に取り組んでいる幼稚園や保育園が多くあります。
とはいえ、食育を幼稚園や保育園に任せっきりにするのではなく、日々の家庭生活の中で食に関する興味や関心を高め、子供に健康な食生活を提供することも重要です。食育基本法にも「食育は、父母その他の保護者にあっては、家庭が食育において重要な役割を有していることを認識する」という記載があります。
幼稚園、保育園での食育活動は食育基本法に基づいています
「食育基本法」は2005年7月に内閣府が制定しましたが、食育の推進は2015年の食育基本法改正後に農林水産省が担当するようになりました。食育基本法に基づいて、幼稚園は「幼稚園教育要領」で、保育園は「保育所保育指針」で食育活動で取り組む内容やその狙いについて明記されています。
例えば、 「食べたいもの、好きなものが増える子ども」になるために、さまざまな体験を通して食べ物への興味や関心を育てることが必要であること、「食べ物を話題にする子ども」となるためには、自分で作ったものを味わい、生きる喜びに繋げる、などと具体的に記載されています。
子供にとってなぜ食育が重要なのか
食育に対してなんとなく良いイメージを持つパパママも多いかと思いますが、なぜ子供にとって食育が重要なのでしょうか。また、食育は子供にとってどのような効果があるのかも気になりますね。実は、単に子供を健康に成長させる以外にも具体的なメリットがあるのです。
1、子供の集中力や学習能力が高まる
健康的な食生活を送ることで、集中力や学習能力が高まるといわれています。皆さんは朝にしっかり朝食をとるかどうかによって1日のパフォーマンスが変わるという話を耳にしたことがありませんか? 寝ている間に消費されたエネルギーを朝食でしっかりと補うことによって、作業能力や体力のアップに繋がるといわれています。子供でも大人でも健康的な食生活を送る効果は共通です。
2、子供の免疫力が高まる
偏った食生活を送っていると、徐々に身体の免疫力が低下し、健康を損ねることがあります。子供が苦手になりがちな緑の野菜も、体の調子を整える働きがあります。また、ごはんに代表される炭水化物は体を動かすエネルギーになります。食育に取り組むことで、こうした食に関する正しい知識をもって自分の食べるものをしっかりと選んだり、食事の意味を理解させることができます。
3、子供が情緒豊かになる
食事をすることの楽しさ、誰かと一緒に食べることの幸福感や、料理を作る人や食材を育てる人への感謝の気持ちを食育を通じて知ることにより、子供自身の情緒がより豊かになります。「食」は子供のいろいろな感情の育成にも繋がるのです。
4、食文化の継承になる
各地域や家庭で受け継がれてきたレシピや味、お作法などを知り、理解し、それを子供に伝えることで、子供は食に愛着を持ち、日本の伝統的な食文化を未来へ受け継いでくれます。次世代へ日本の食文化をつないでいくためにも、食育活動は非常に重要なのです。
幼稚園、保育園での食育活動の目的と内容は?
食育基本法では、保育所保育指針の中で食育の観点から実現を目指す子供の像として下記の5つを掲げています。これは保育園を想定してかかれたものですが、幼稚園でも考え方は同じです。
- 適切にお腹がすくリズムを持つ子ども
- 食べたいもの、好きなものが増える子ども
- 一緒に食べたい人がいる子ども
- 食事づくり、準備にかかわる子ども
- 食べものを話題にする子ども これらを踏まえ、保育園や幼稚園ではどのような活動を行っているのでしょうか。それぞれについてもう少し細かくご紹介しましょう。
適切にお腹がすくリズムを持つ子ども
午前中からお散歩やお遊戯などでしっかりと体を動かしてお腹をすかせることで、お昼ご飯を美味しく食べることができるようになることを目指します。
食べたいもの、好きなものが増える子ども
節分やクリスマスなどの行事食を通して日本の文化を知ったり、旬の食材をその時期に味わうことで、食べ物に対する興味関心を持ち、食べたいものや好きなものを増やしていくことを目指します。
一緒に食べたい人がいる子ども
保育士やお友達と一緒に食事をして「美味しい!」を共有したり、たくさんお話をすることで、食事がより美味しく楽しい時間になることを目指します。また、みんなで「いただきます」と「ごちそうさま」をするという食事のマナーも学ぶことができます。