桜の名所として有名な吉野山は、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されており、様々な歴史の舞台となった場所でもあります。今回は、熊野古道の一つ大峯奥駆道の一部を歩き吉野山の最高峰である青根ヶ峰を目指しながら、世界遺産に登録された神社仏閣を参拝するトレイル旅をご紹介します。

修験者の修行の道「大峯奥駆道」

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

日本有数の桜の名所吉野山。自然豊かな山と歴史溢れる神社仏閣を楽しむ観光客で賑わう場所ですが、古くから修験道の霊場とされてきました。

熊野古道の一つ「大峯奥駆道」は、8世紀修験道の開祖である役行者が開いたとされる修行の道。吉野から熊野を結ぶ約170キロもの道のりは、標高2,000メートル近い山々を踏破しなければならず、熊野古道の中でも最も険しいルートとされています。山上ヶ岳一帯は女人禁制の区域となっており、今なお1000年以上続く修験道の歴史が続く場所です。

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

そんな厳しい大峯奥駆道を歩くのはハードルが高すぎる!と思ってしまいますが、今回ご紹介するのは、吉野ケーブル「吉野山駅」をスタートし、吉野山の最高峰青根ヶ峰を目指すルートで、上り道が続くものの、道はほとんどが舗装されており非常に歩きやすくなっています。

吉野山をはじめ、ルート上には「金峯山寺」「吉水神社」「吉野水分神社」「金峯神社」と世界遺産に登録された建造物が並んでおり、歴史を感じながら修行の道を少しだけ経験できるトレイルルートです。

近鉄吉野駅~青根ヶ峰までの行程

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

今回のルートの所要時間目安は以下の通りです。

近鉄吉野駅から千本口駅(徒歩2分)→ロープウェイで吉野山駅(所要時間5分)→吉野山駅から金峯山寺(徒歩10分)→金峯山寺から吉水神社(徒歩2分)→吉水神社から花矢倉展望台(徒歩45分)→花矢倉展望台から吉野水分神社(徒歩15分)→吉野水分神社から金峯神社(徒歩35分)→金峯神社から青根ヶ峰(徒歩40分)


道中には主要な寺社までの距離表示が書かれた道標や地図が定期的にありますので、こちらで目的地までの距離を確認してください。

近鉄吉野駅からロープウェイに乗り、金峯山寺へ

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

今回のトレイル旅のスタート地点となるのは、ロープウェイの吉野山駅。近鉄吉野駅から徒歩2分ほどで千本口駅があり、そこから吉野山駅まではロープウェイで約5分の空の旅になります。

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)
【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

吉野山駅から金峯山寺の総門である黒門、室町時代の再建である銅製の銅鳥居(かねのとりい)を通り、金峯山寺仁王門へと至ります。

金峯山寺

金峯山とは、吉野山から山上ヶ岳(大峯山)に至る一帯を指し、古くから聖地とされてきました。この金峯山で修業をした役行者が金剛蔵王権現を感得し、その姿を山桜の木に彫刻して、山上ヶ岳の頂上と吉野山に祀ったことが金峯山寺の始まりと伝えられています。

現在は、金峯山修験本宗の総本山として、多くの僧侶・修験者の方が集まる修験道の場となっています。

仁王門(国宝)

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

本堂(蔵王堂)の北側に位置する仁王門。棟の高さは20.3メートル。創建年代は不詳ですが、門の左右に安置された金剛力士像(重要文化財)が1339年南都仏師の康成の作であることから、同年代の南北朝時代の再建とされています。

2021年10月現在、金峯山寺仁王門は解体修理工事が行われており通ることはできません。修理期間中、金剛力士像は造立以来初めて吉野の地を離れ、奈良国立博物館にて特別展示されています。像高約5メートルもの存在感のある金剛力士像を門外で見られる貴重な機会ですので、こちらもぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

蔵王堂(本堂)(国宝)

【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=PIXTA トリップノートより引用)

金峯山寺の本堂である蔵王堂は、安土桃山時代の再建にされたもの。高さ34メートル、四方36メートルで木造建築としては東大寺の大仏殿に次ぐ大きさです。秘仏である本尊金剛蔵王大権現3体のほか、多くの尊像が安置されています。

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(画像=えちこ トリップノートより引用)

2021年10月現在、蔵王堂は防災施設整備工事のため周囲が足場で囲われている状態です。ですが、内部の拝観は可能であり、また2021年10月22日~11月30日までは秘仏である御本尊の特別公開が行われています。本尊の真ん中の仏の高さは約7メートルにも及び、全身の青黒い色と憤怒の形相は圧倒的な存在感を放っています。

特別公開については金峯山寺公式HP「秘仏本尊特別ご開帳」をご確認ください。

蔵王堂拝観料:通常時 大人800円 秘仏御本尊特別ご開帳時 大人1,600円


金峯山寺から吉水神社へ

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(画像=えちこ トリップノートより引用)

金峯山寺から吉水神社の鳥居までは徒歩2分程度で到着です。境内からは中千本、上千本の桜を見渡すことができ、「一目千本」と呼ばれています。

吉水神社

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(画像=えちこ トリップノートより引用)

もとは吉水院といい、役行者が創建した修験宗の僧坊でした。明治時代に神仏分離が行われ、後醍醐天皇の南朝の皇居であったことから明治8年吉水神社に改称しました。後醍醐天皇、天皇の忠臣であった楠木正成、吉水院宗信法印を祭神としています。

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(画像=えちこ トリップノートより引用)

1185年兄の源頼朝の追手に追われた源義経が、静御前や弁慶等とともに身を潜めた場所であり、南北朝時代には後醍醐天皇が吉野に潜幸した際、南朝の皇居となり、安土桃山時代には豊臣秀吉が吉野で盛大な花見を行った際、本陣となった場所でもあります。

日本最古の書院には、このような歴史の舞台となった「義経潜居の間」や「後醍醐天皇玉座」が残されており、また源義経、弁慶、後醍醐天皇などのゆかりの品々が展示されています。

書院拝観料:大人 600円


【奈良】吉野山最高峰・青根ヶ峰を目指しながら世界遺産の神社仏閣巡り
(画像=えちこ トリップノートより引用)

吉水神社を参拝する際、必ず確認して欲しいのが参拝方法です。一般的に神社の参拝作法は「二礼・二拍手・一拝」とされていますが、こちらでは「二礼・十七拍手・一拝」となっています。十七拍手のそれぞれの拍数なども確認の上、ご参拝ください。