怒りと上手く付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事・戸田久実さんがお届けする連載【大人の上手な怒り術】第8回では、ママ友との付き合い方についてお聞きしました。

■ママ友との付き合い方を間違えると……

仕事上の上司や部下、同僚、取引先などは選べないけれど、“友人”は自分の意思や好き嫌いで選べる……はず。

しかし、「友」という名称がついていながらも、自分が好きで選んだわけではない関係もあります。 そう、「ママ友」という関係です。

子どもが通う幼稚園や保育園、学校などで知り合い、付き合いが始まるので、学生時代の友人のように気の合う人や価値観が同じ人ばかりではありません。
そのため、ストレスに感じたり、イライラしたりすることがある人は少なくないようです。

自分だけの問題ではなく、子どもの年齢が低いほど親の関係が子ども同士の関係に影響してしまうこともあるので、余計に悩ましいところですよね。

もちろん、ママ友として知り合い、本当の友人として付き合うようになったという例も多くありますから、一概にママ友はストレスや怒りのもとだとは言い切れません。

しかし、ママ友との付き合い方に失敗し、大きなトラブルへと発展してしまった、メンタル的にダメージを受けてしまった、というケースも多くあるのは事実です。

■嫌味っぽい人、詮索する人、自慢する人

過去に私が受けた相談には、こんなものがありました。

持ち物や服をいちいちチェックされ、
「これどこのブランド? また新しいものを買ったの?」
「それってちょっと、時代遅れじゃないの?」
と嫌味っぽく言ってくる。

「ご主人はどこに勤めているの?」「休みの日は何をしているの?」「どこの大学に行っていたの?」など、やたら個人情報に関わることを詮索してきて、うっかり話してしまったら、周囲の人に広められてしまった。

自分のことや子どもの自慢話ばかり聞かされる。子育てに関して「こうしたほうがいい!」といらぬアドバイスばかりしてくる……。

そんなママ友に対してイラッとくることはあるでしょう。

しかし、怒りにまかせて衝動的に言い返してしまったら、関係性がこじれて取り返しのつかないことになってしまう可能性もあります。

■スルースキルは必須です

人の怒りのピークは長くても6秒といわれます。どんなに激しい怒りでも、6秒も経てば怒りに任せた行動はしにくくなるのです。

ですから、イラッとしたら、その6秒をやり過ごすことが有効。もっとも手軽で効果的な手段は、やはり深呼吸です。

ポイントは、吸って、吐いての呼吸に10秒~15秒くらいかけること。その際、「4秒吸って、8秒吐く」というように、吐くほうに時間をかけることを意識しましょう。

こうしてゆっくり深呼吸することで、6秒をやり過ごすと共に、緊張モードの「交感神経」を抑え、リラックスモードである「副交感神経」が優位になります。

瞬間的にカチン!ときたことでも、深呼吸をして少し時間を置くだけで、
「まあ、そんなに腹を立てることでもなかったかな」
「言い返す必要はないかな」
と心を落ち着かせ、気持ちを整えることができるでしょう。

カチン! ときたらすぐ、瞬間湯沸かし器のように沸騰して、反論したり怒ったりしてしまいがち……という人は、この「6秒間」を意識しましょう。

この深呼吸のほか、以前の記事でお伝えした、「6秒をやり過ごすためのテクニック」も参考になさってください。

また、とくに真面目な人は、嫌味やいらぬアドバイスに対していちいちまともに受け止めて、「そうかしら」「でも私はこう思う」と反応してしまいがちです。

ですが、あえてコメントせずにスルーしたり、「そうねえ」「そうかもしれないわね~」などと軽く受け流すことも覚えましょう。

自慢話ばかりする人に対しては、たとえ本心からそう思っていなかったとしても、相手の自尊心が満たされるように、「それはすごいわね」と反応してあげることも大切。

過剰にリアクションしたりほめたりする必要はなく、会話のあいづちのような気持ちでOKです。

こういったスルースキルは、特にママ友という関係性においては必要になることも多いので、ぜひ身につけたいところです。

■悪口には同意も反対もしない受け答えを

ママ友との関係において注意したいのが、他のママ友に対する悪口を聞かされた場合です。

「あの人って、いつも自分のことしか考えていないのよね。この前だって……」
「◯◯さんって、子どもを預けてしょっちゅう夜飲みに遊び歩いているみたいよ〜」

というように、悪口やよくない噂話を聞かされたとき、安易に
「そう、それはひどいわね」
なんて言ってしまうのは危険です。

相手に同意したと捉えられ、あとで「◯◯さんもそう言ってたわよ……」と一緒に悪口を言っていたことにされてしまいかねないからです。

かといって、「そんなこと言わないほうがいいと思う!」と注意するのも得策ではありません。

そんなときには、
「そんなことがあったのね」
「そうなんだ」
と、それ以上詮索することなく、同意でも反対でもない受け答えをすることを心がけましょう。

もし、悪口がずっと続くようであれば、「そういえば!」と話題を変えたり、立ち去るタイミングを見計らって、「ちょっと用事があるので」とその場を離れるのもいいでしょう。

人の悪口を言って得になることはありません。悪口や噂話が好きな人とは、一定の距離を取るように心がけましょう。

■ネガティヴな言葉は口に出さない

もちろん、自分自身が悪口や愚痴の発信源になるのはもってのほかです。

あるママ友に腹が立つことがあり、その気持ちを誰かに聞いてもらいたいと思うこともあるかもしれませんが、それをほかのママ友に話すことは決してしないようにしましょう。

たとえ、ちょっとした愚痴だとしても、あっという間に話が大きくなって広まってしまうことも。それがトラブルのもとになります。

また、愚痴や悪口のようなネガティヴなことは、言っているそばから自分の耳に入ってきて、脳や記憶の奥底にネガティヴな情報が定着してしまうと言われています。

そうなるとますます愚痴っぽくなるという悪循環を引き起こしやすいのです。つまり、自分で自分の怒りを増幅させてしまうようなものです。

すべてのママさんと仲良くなる必要はないのですから、どうしても気の合わない人がいるのであれば、固執して愚痴や悪口を言うのではなく、上手な距離感を取るようにしましょう。

ママ友との付き合いは、「友」とは言っても、期間限定。ちょっと嫌なことがあっても、それを大ごとにするのではなく、受け流してしまうのが付き合いのコツです。

イラッとすることに対して聞き流すスルー力を鍛えるいい機会かもしれないと捉えられれば、最高にポジティブ。アンガーマネジメントスキルを身につけて、ママ友と良好な関係を築いてくださいね。

『いつも怒っている人も うまく怒れない人も 図解アンガーマネジメント』書籍情報

ママ友にイラッとしたら「受け流し力」を鍛えるチャンス【大人の上手な怒り術#8】
(画像=いつも怒っている人もうまく怒れない人も図解アンガーマネジメント
posted with ヨメレバ
戸田久実/安藤俊介 かんき出版 2016年10月03日、『DRESS』より引用)


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