親近感が湧く「ミラーリング」の演技

 店の前でタバコを吹かしながら、バイトを斡旋(あっせん)する先輩を待っているツーショットの画面で杉野は、祥太郎を演じる戸塚の演技にコミットするように呼吸に合わせ、感情を反射させるように芝居をしている。  それは、コミュニケーション相手の仕草を真似することで相手に親近感を与える「ミラーリング」効果に近い。杉野の演技になぜか親近感が湧くのはそのためだ。  本作によって演技派俳優としてステップアップし、映画初主演作『羊とオオカミの恋と殺人』(2019)では殺人鬼に恋する自殺願望の浪人生を熱演。  さらに本人役で出演したテレビ東京ドラマ『東京怪奇酒』(2019)では、苦手なホラー映画を克服するために、とある廃アパートで幽霊と酒を呑み交わす(これを怪奇酒と言う)ことで、幽霊相手にもミラーリングの演技を発揮して新境地を切り開いた。  そんなミラーリング俳優・杉野が、ネクストブレイクに王手をかけているのが、現在日本テレビ系で毎週水曜日22時から放送中の『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』だ。

ヤンキー役で得たお互いを思いやる関係性

『恋です!』ヤンキー役・杉野遥亮がブレイク寸前!親近感が湧く演技の秘密
(画像=『女子SPA!』より引用)

『スギノート』(学研プラス)

 本作で杉野が演じる黒川森生は、その界隈では誰もが恐れる筋金入りのヤンキー。このヤンキー役が興味深いのは、これまで杉野が演じてきたキャラクターが相手に対する理解を示す役柄だとすると、ツッパリ精神で社会に反抗する森生はその逆であることだ。  根底には弱さがあり、実は周りからの理解を得たいのにそれが得られないからヤケになって暴力を撒き散らす。荒れ放題の昔よりは落ち着いたとは言え、誰も近寄ろうとはしない。しかし、出会いはラブコメ漫画らしく唐突に、かつ劇的に訪れ、森生は新たな自分を発見することになる。  弱視の赤座ユキコ(杉咲花)が盲学校へ通うある朝、通学路にある時計台広場で、仲間たちとたまって点字ブロックを塞ぐ森生に出くわす。ブロックを辿ってきたユキコの白杖が森生の背中をつつき、森生はブチギレる。