高野山を訪れるなら一度は滞在したいのが、宿坊。参詣者が宿泊できるお寺です。どの寺院でも精進料理や写経、朝の勤行などを体験できますが、ぞれぞれの特色はさまざま。客室や風呂、庭などに宿坊によって違いがあるため、選ぶのも楽しみの一つです。そして、夜はぜひ奥の院のナイトツアーへ参加してみましょう。暗闇の参道を恵光院の僧侶が案内してくれます。ガイドブックには載っていない意外な裏話も聞くことができるかも。日常とは隔離された空間で、日々の疲れを癒す普賢院での宿坊生活と恵光院の奥の院ナイトツアーをご紹介します。
長い歴史を経て変化した寺院の数
江戸時代には800以上のお寺が存在していた高野山。その後、廃藩置県や火災などの影響で寺院の数は減り、現在お寺の数は117になりました。そのうち宿坊は52あるといわれています。
高野山が世界遺産に登録され、フランスのミシュランガイドでも三ツ星に選ばれてからは、外国人観光客が急増。宿坊を訪れる外国人も絶えないそうです。
ゆったり過ごす!宿坊・普賢院
900年の歴史!町の中心にある普賢院
高野山の町の中心地・千住院橋のバス停を降りてすぐのところにあるのが今回紹介する普賢院。12世紀に天台宗の僧侶(鳥羽天皇の息子)から、普賢菩薩を与えられたことが始まりだとか。
境内は意外と広く、さまざまな建物があります。ひときわ目を引くのが、ご本堂の隣にある摩尼(まに)殿。朱色の建物です。地下室もあり、朝の勤行のときに案内していただけます。
落ち着いた純和風の屋内
大玄関で靴を脱ぎ、世話をしてくれる僧侶の案内でお部屋まで。よく整えられた中庭が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。歴史を感じさせる廊下は、洋室生活が長くなってきた日本人にも、日本の趣を思い出させてくれます。
昔懐かしい障子の引き戸をあけると、純和風の部屋が。豪華すぎず最低限のものだけがそろった和室は、物にあふれた日ごろの生活とは対照的です。
高野山の二大聖地奥の院や壇上伽藍に足を伸ばしたり、高野山参詣講待遇之証で高野山の要所を訪れたりするのもいいですが、ゆったりとした時間を過ごしたいのなら、お部屋で過ごすのがおすすめ。大浴場もあるのでゆっくりお湯に浸かってから、写経体験してみては?
殺生と煩悩から回避!精進料理
夕食はもちろん精進料理。普賢院では客室とは別の部屋に用意されます。
精進料理とは、殺生や煩悩を刺激するようなものを避けて作られた料理のこと。肉や魚だけでなく、香りが強いニンニクやネギなど精がつくものもタブーとされているとか…。
でも面白いのはアルコールの扱い。お寺では飲酒は厳禁というイメージがありますが、高野山内の寺院ではお酒やビールを「般若湯(はんにゃとう)」と呼び、夕食のときに注文することができます。とはいっても、ここはお寺。飲みすぎないように!
食事が終わり、部屋に戻ると布団が敷かれています。お寺に修行に来ているような感覚でいると、至れり尽くせりの対応に驚くことでしょう。
それにしても、和式の部屋は時と場合によって、居間になったり寝室になったり、ときにはダイニングになったりと、とてもフレキシブル。昔ながらの和室のよさを再認識できるかもしれません。