実在した旧日本軍兵士の小野田寛郎さんをモチーフにした人間ドラマ『ONODA 一万夜を越えて』が公開中です。
津田寛治さん
上官からの命令をかたくなに守り、太平洋戦争が終結した後も約30年にわたってフィリピンのルバング島に残り続けた小野田さんの成年期を演じた、津田寛治さんにインタビュー(青年期:遠藤雄弥)。 津田さんが本作の小野田とどう向き合ったのか聞きました。また、俳優として食べていくきっかけになった、北野武監督の『ソナチネ』出演をつかんだ当時のエピソードもお話いただきました。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
小野田さんは島に入る前から、心の中にジャングルを持っていた
『ONODA』より
――津田さんは、たったひとりになってもジャングルで見えない敵と戦い続けた成年期の小野田さんを演じましたが、「小野田さんは島に入る前から、心の中にジャングルを持っていたのではないか」とコメントされていたのが印象的でした。 津田寛治さん(以下、津田)「当時、日本兵として軍隊に入っていた若者というのは、お国のために自分は命を賭して戦うんだと思っていた、もしくは思わされていました。死ぬことによって自分は英雄になれるといった部分があったと思うんです。そのなかにあって、小野田さんはちょっと特殊な若者として描かれています。『自分とはなんぞや』みたいなところが、昔からある若者だったんじゃないか。つまり、その特殊性とは、おそらく自分との向き合い方なんだろうと感じたんです」 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
ひとり潜伏する小野田さんの姿に『ドン・キホーテ』がよぎった
『ONODA』より
――小野田さんは谷口少佐(イッセー尾形)に見出されて特殊な訓練を受け、「自分自身が、自分の指揮官であれ」と教えられます。一方で、小野田さんは上官だった谷口少佐の口から「命令解除」を聞くまで、日本に帰りませんでした。なぜだと感じましたか? 津田「あくまで僕個人の印象ですが、『ドン・キホーテ』が浮かんだんです。ドン・キホーテは風車を敵に見立てて闘いを挑みに行きますよね。そのときのドン・キホーテの心境を考えたとき、本当に風車のことを敵だと思っていたのだろうかと。本当はそれは風車だと分かりつつも、敵に見立てて闘うしかない状況だったんじゃないか。それが当時、ジャングルにひとり潜伏していた小野田さんの思いとシンクロする気がしたんです。ひょっとすると、小野田さんは終戦していることには薄々感づいていたかもしれない」