すっかり秋も深まり、秋の夜長を堪能したい季節となりました。今回は、そんな秋の夜長にぴったりな1冊を紹介したいと思います。
今なお世界中から愛されているフランスの名作『星の王子さま』。
<あらすじ>
操縦する飛行機がサハラ砂漠の真ん中に不時着し、生死の瀬戸際に立たされた「僕」。そこで出会った、金色の髪色をした男の子、星の王子さま。
「僕」は王子さまとの対話の中で、王子さまが自分の星に咲いていたバラと仲違いをし、星を飛び出し、星々をめぐり、7つめの星として地球にたどりついたという話を知ります。
そして、その旅の中であった様々な出会いを通し、王子さまが気付いていった「ほんとうにたいせつなもの」についても…。
子どもの頃に読んだことがあるという方も、タイトルは知っているけれどお話の内容はまだ知らないという方も。星のようにキラキラと煌めく王子さまのまっすぐな言葉は、きっと大人になった今こそ沁みるのではないでしょうか。
今回は『星の王子さま』の中から、心に沁みる言葉をいくつか紹介したいと思います。
人と人とのつながり、人間関係に悩んだ時に効く言葉
人と関わるということは傷つくことも多く、悩みが尽きないもの。なんとなく人付き合いが面倒になったり、「どうせ、分かり合えない」と諦めてしまったり、おざなりなってしまうこともあるのではないでしょうか?そんな時、思い出して欲しい言葉がこちら。
地球に降り立った王子さまが、そこで出会ったキツネに言われた言葉です。キツネは「なつく」とは「絆を結ぶこと」だと言い、それには「がまん強く」ふたりの距離を縮めていくことが必要だと言います。
そうして、王子さまがキツネをなつかせることができたら、
のだと。
やがて王子さまは、キツネとの対話を通じて、仲違いをし、自分の星に置いてきた一輪のバラが自分にとっていかにかけがえのない存在だったのかを思い出していきます。
キツネは王子さまとの別れのとき、このように言いました。
かけがえのないものというものは一朝一夕でできるものではないのです。
だからこそ、
と。
絆を結ぶということは、時間をかけて生まれた友情であり、だからこそ深く知り合うことができる。そして、その絆には永遠に責任を持つ必要があるのだと。私たちが日々の生活や人間関係において、つい忘れがちなことについて考えさせる大切なことなのではないでしょうか。
愛することに悩んだ時に効く言葉
愛しているからこそぶつかり合い、傷つけあってしまうもの。愛する人との関係に悩んだり、愛するということが分からなくなることもありますよね。
星の王子さまも同じように悩んでいたよう。王子さまはずっと一緒にいたバラに対し、いつしか嫌なところばかりが目につくようになってきてしまい、ついには自分の星に置き去りにしたまま星を飛び出してきてしまったのです。
そんな王子さまが、バラの愛情に気付いた時に発した言葉がこちら。
表面的なもので気持ちを判断するばかりでは、相手の本当の愛情表現を理解できないのです。言葉だけじゃなく、相手の「してくれたこと」を冷静に見つめることで、そこに込められた深い愛情を知ることができるのではないでしょうか。
そうして、離れてみてはじめてバラの大切さを知った王子さま。やがて、「たとえ離れていたとしても、この世界のどこかに大切なものがある」そう思うだけで、世界は今までよりもずっと美しく見えるということに気づいていきます。
「愛するもの」があるということは、世界の見え方を変える力があるのかもしれません。そして、それはたとえ離れていても心の中にあるだけでも違うのだと。
日々の生活の中で自分自身にとっての一輪の花を見つけ大切に思うことは、日々の喜びや潤いに繋がっていくことなのだと王子さまが教えてくれているようですね。
悲しいことにぶつかった時に効く言葉
生きていくということは、悲しいことが増えていくことでもあります。悲しみを消そうと努力することも大切かもしれませんが、こちらの「僕」の言葉は、悲しみに対しての捉え方を少し変えてくるはず。
喜びも悲しみも、同じように大切な思い出のひとつです。生きていく限り、時間は流れていきます。悲しみに暮れるばかりではなく、一緒に過ごした楽しい記憶に思いを馳せることができたなら、悲しみは消えないままでも、再び微笑むことができるような気がしてきます。
さらに、訳者の河野万里子さんは「あとがき」でこのような言葉を綴っています。
このように、消えない悲しみがあったとしても、思い出が人を強く、優しくしてくれる力になるということもあるのではないでしょうか。
立ち止まって思い出したい言葉
最後に、忙しい日々の中で漠然とした不安を感じたら、思い出して欲しい言葉を紹介します。
私たちが日頃、見ている、知っていると感じる事柄の多くは、表面的なものに留まってしまっていることに気づかされる一言です。
この言葉の背景には、王子さまの小さな星や旅先で触れ合ったたくさんの記憶たちが集積されています。本当にこの言葉を理解するには、星の王子さまのように自分の体と心で精一杯に実感していく時間が大切なのかもしれません。
しかし、「今見ているものも、表面の部分でしかない」ということを意識するだけでも、ものの見方、人との関わり方、考え方などが変わってくるのではないでしょうか。
大きな壁が目の前に立ちはだかり、自分ではどうにも乗り越えられそうにないとへたり込んでしまった時、うつむくばかりではなくゆっくりと深呼吸をして頭上に広がる空を見上げてみる。もしかしたら「なにもかもが変わって見える」そんな感覚を体験できるかもしれませんよ。
「目では見えない、いちばん大事なもの」に気づき、きちんと大切にできていますか?
シンプルなはずなのに、大人になるとシンプルなことほど難しく、複雑に考えてしまうことも少なくありません。『星の王子さま』のシンプルでまっすぐな言葉に、大人になった今、改めて触れてみることで日々の暮らしや自分の大切なものたちへ思いを寄せるきっかけとなるのではないでしょうか。
『星の王子さま』が伝えてくれた「たいせつなもの」は自分にとっての何なのか、秋の夜長に考えてみてはいかがですか?忘れかけていたことを思い出させてくれる1冊です。
■ 書籍情報
書名:星の王子さま
著者名:サン=テグジュペリ
訳者名:河野万里子
出版社:新潮社
提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)
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