平安時代に生まれた衣装の一種、「水干(すいかん)」をご存じですか?
その名の由来は「糊を使わず水張りした生地を使うから」とも「晴雨両用で便利だから」とも言われ、映画『千と千尋の神隠し』では謎の少年「ハク」が水干風の衣装を着用するなど、現代でもさまざまな作品の中で愛され続ける伝統衣装です。
ハンドメイドの子ども服ブランド「ペンギンのおしり(Penguinbum)」は、そんな水干を赤ちゃん・子どもの普段着用にアレンジした「童の水干」シリーズを販売。先月とあるTwitterユーザーの投稿に取り上げられると4万件近くのいいねを集め、通販サイトでは販売直後に完売するほどの大人気となっています。
今回は制作者でもある「ペンギンのおしり(Penguinbum)」店主さんに、制作の背景やこだわりについてお話を伺いました。
特別感があり、着心地良く動きやすい「水干」
――子ども向けに「水干」を制作しようと思ったきっかけを教えてください。
「私自身の子ども達の夏の普段着として甚平(じんべい)を着せることが多いのですが、毎日見ていると物足りなくて、和装コーディネートのバリエーションの一つとして制作したのが始まりでした。
忍者やカンフーをヒーローの一種として『かっこいい』と思っている子ども達にとっても、水干は特別感があったようでとても好評でした。
和装については、自身が幼少より日舞や弓道の経験があり、着物や袴などが身近な環境で育っていたことも、水干をイメージする要因となっていたかもしれません。古典の世界も好きで、高校時代は『更級(さらしな)日記』や『源氏物語』で詠まれる和歌の表現や、当時の生活様式や文化に思いを馳せ、友人と語るのも楽しかったです」(「ペンギンのおしり(Penguinbum)」店主さん。以下カギカッコは同じ)
「誰でも気軽に、日本らしい風情を楽しめる」ことを目指す
――制作するうえで、特にこだわっている点はどこですか?
「着心地の良さと動きやすさです。ベビー・キッズに寄り添った素材で、快適に着られることを心がけています。同じ素材で大人のお洋服を作成して、自分で着心地を確かめたりもしています。
母としては、お洗濯も含めて、手入れのしやすさも気にしています。また、男の子が元気に動き回ってももたつかない着丈や袖丈、着崩れにくさを考えています。
水干については、本来は、おそらくもっと大きな袖や雅な装飾があり、華やかで神聖な装束だと思います。しかし、私が目指しているのは『誰でも気軽に、日本らしい風情を楽しめる』こと。コスプレではなく、タブリエ(※前掛け、ドレスエプロン)のような感覚で、自然にワードローブに取り入れてもらえたら…という気持ちで制作しています」
着付けの知識がなくてもOK!羽織るだけで特別感ある和装コーデに
――基本的には甚平の上に着用するという形なのでしょうか。コーディネートのコツやポイントがあれば教えてください。
「基本的には、甚平の上に羽織る仕様ですが、Tシャツなどのお洋服の上に着てもいいと思います。実際に、作品ページのモデルはスタンドカラーシャツの上に簡単に羽織っております。
パンツは、少しボリュームのあるひざ下以上の丈のものを合わせるのがおすすめです。歩き始めの赤ちゃんは、かぼちゃパンツを履いても可愛いですよ。
どんなお子様でも気軽に、着付けの知識がなくても大丈夫。普段着のように楽しめることを考えて着丈や袖の長さ等をデザインしております」