「巻き込まれ型」だからこそ、頼もしい時のギャップが際立つ
総理の夫 ちなみに、田中圭は自身の役について「何もしない主人公と言いますか、巻き込まれ型の最たるものです」(発言部分は報道資料より、以下同じ)と自虐っぽく語っていたりもする。確かにその表現も的を射ているが、そんな彼でもクライマックスではとある頼もしい姿を見せる。それまでが少年っぽく、ちょっと情けなくも見えるシーンがあるだけに、その頼もしさのギャップがよりカッコよく際立つのだ。
いわば、今回の『総理の夫』で見せてくれるのは、コミカルなリアクション芸で楽しませてくれる田中圭と、理想的of理想的な夫になった田中圭と、少年のようにかわいい田中圭の豪華な配合なのである。
これまで善人の方向性を純粋培養した田中圭が観られる映画は、親しみやすくて常識人なお花屋さんを演じた『mellow』(20)が最高だと思っていたが、本作はそれをも超えた天使のような田中圭だった。観た後は「なんで俺は田中圭と結婚していないんだ」と思ったし、そこまでなくても田中圭かわいい愛しているハァハァと鼻息荒くなること必至である。
中谷美紀もこれ以上は考えられないほどのハマり役
谷戸豊プロデューサーは田中圭のキャスティングについて、「最初からこの方しかいない!」と第一優先でオファーし、さらに「田中さんはそこにいるだけでコメディとして成立させてくれる稀有な俳優さん。1発のリアクションでの人のひきつけ方、さまざまな状況で巻き込まれていく姿の面白さは、天下一品だと思います」と語っていた。赤べこのように激しく頷いて同意するしかない。ありがとう、本当にありがとう。
そして、もう1人の主人公と言える、史上初の女性総理を演じた中谷美紀も超ハマり役だ。
彼女自身が語学堪能で聡明なイメージがあるだけに、社会的なジェンダーに囚われずにリーダーシップを発揮する様に説得力があり、それでいて多忙とストレスのために弱さをも見せる「支えてあげたくなる」魅力を備えていたのだから。これ以上は考えられない最高のキャスティングと、実際に理想的な夫婦として尊く観られるという時点で、この映画版『総理の夫』は大成功と言っていい。