本記事は、大江 英樹さんの著書『知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応』(ワニブックス)の中から一部を抜粋・編集しています。

法律で何が変わるのか?

2020年の5月20日に「年金制度改正法」(正式名称は「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」)が成立しました。これによってこの法律の大半は2022年から施行されます(一部は2021年から施行されています)。

 この法律は2019年の8月に発表された財政検証の結果を受け、その後「社会保障審議会」で議論されてきた内容に基づいて作られたものです。財政検証は言わば年金の健康診断のようなものですから、その結果を受けて、治療するところや予防するところを決めたのがこの法律です。

 厚生労働省のホームページを見ると、この法律の骨子や何のために法律を作ったかということが書いてありますが、それをわかりやすく解説したいと思います。

 今回の法改正は全部で5つの部分に分かれます。その5つとは、
1.被用者保険の適用拡大
2.在職中の年金受給の在り方の見直し
3.受給開始時期の選択の拡大
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
5.その他

 これらの内、最後の5は主に手続き的なことであり、それほど準備に時間のかかることではありませんので、それらの多くは既に2021年の3月もしくは4月からスタートしています。該当する人たちにとっては重要なことですが、制度全体に大きな影響を与えるものではありませんので、説明は割愛します。  また、4についても老後資金の準備という点では大切な確定拠出年金ですが、「公的年金」への理解を深めることに主眼を置いているため、これも割愛したいと思います。

したがって、1~3について解説します。その前に、全体としてこの改正に込められているメッセージは一体どういうことなのかということを、まず考えてみたいと思います。

何のために改正したのか?

法改正があると、一部のマスメディアやあまり本質をわかっていない評論家などは「制度が持たないから変えるのだろう」とか「改悪だ」と言いがちですが、今回の改正を見る限りにおいては、むしろ財政にとって支出が増える部分もありますので、極めて冷静に今後の社会情勢に応じて制度を変えようとしていることが読み取れます。

 厚生労働省のホームページを見ると制度改正の意義として、次のように書かれています。
〈今後の社会・経済の変化を展望すると、人手不足が進行するとともに、健康寿命が延伸し、中長期的には現役世代の人口の急速な減少が見込まれる中で、特に高齢者や女性の就業が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれます。 こうした社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る必要があります〉  ここで特に重要な部分は、「高齢者や女性の就業が進むこと」、そしてそれによって「より多くの人が長い期間、多様な働き方をするようになる」ということでしょう。

 高齢者の就業が進んでいることは色々なデータを見ても明らかです。中には自嘲気味に「そりゃあ、働かないと食べていけないからさ」という人もいますが、あながちそうとばかりも言えないと思います。なにしろ「人生百年」という流行語があらゆるところに浸透しつつありますし、今の60代や70代の人は昔の同じ年代とは比較にならないほど元気ですから、たとえ経済的に問題がなくても生きがいのために働くという人も多いはずです。 私も60代や70代で働く多くの人にこれまで取材してきましたが、働く目的の第一はむしろお金よりも生きがいという人が多かったのです。これは社会全体、とくに社会保険制度にとってはとても良いことです。多くの人が労働参加し支える側に回る人が増えることによって制度がより厚みを増していくからです。

ところが、このような高齢で働く人にとって年金の制度が経済的に不利益になるのでは、意欲を削ぐことになりかねません。そういった意味でも環境整備することはとても大切です。


知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応
著者:大江 英樹さん/ワニブックス
定価:946円(税込)
ISBN-10:4847066642

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