本記事は、大橋 高広の著書『職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

日報が効果的なのは2点だけ

日報や社内SNSを通じて職場の問題を共有しようとする試みもありますが、ほとんどの企業で機能していません。大抵の場合、日報はコピーアンドペーストをしているだけとなっています。 まず、日報が役割を果たすのは「作業改善」と「原価計算」の2つである、と私は考えています。日報を通じて作業改善が促されるケースは確かにあります。 また、日報で社員の作業時間がわかれば、その人の時給をもとに製品にかかった人件費を算出できるので、原価計算をすることができます。

逆にいうと日報の役割はその2点だけです。日報で作業に関する問題を書くことができても、人に関する問題を書くことはできない。これはブレーンストーミングで本当の問題が出てこないのと同じです。

社内SNSならフランクに情報共有できる、というのも大きな誤解です。というのも社内SNSには、過去の記録がすべて残ります。残るとわかっていて、わざわざ問題を書こうとする社員が、いったいどれだけ存在するでしょうか。

むしろ、社内SNSを導入した企業には弊害が目立ちます。 私が知っている事例では、上司が、自分の上司にはSNSで丁寧にコミュニケーションを取っているのに、部下に対しては雑な言葉遣いをしているというものがありました。「見える化」されたのは、旧態依然としたタテ関係だけという、笑うに笑えない状態です。

あるいは、社員の名前が削除されることで、他部署の社員にも「あの部署の○○という人が退職したらしい」と一瞬でわかってしまう問題もあります。この場合は、離職率の高さが「見える化」されてしまうわけです。これでは、社内の雰囲気が悪くなるのも当然です。

社内SNSは連絡手段に特化すべき

社内SNSを導入するなら、必要事項の連絡手段に特化する。私は、これがベストな活用法だと考えています。確かに社内SNSはわかりやすくて便利です。単に連絡手段として見れば、メールで連絡を取るよりはるかに効率的でしょう。

これを人の改善にも使おうとするから無理が生じるのです。 ちなみに、社内SNSは直接改善につながらないまでも、コミュニケーションの活性化に役立つとする主張もあります。具体的にいうと、今自分が取り組んでいることや職場のささいな出来事を報告し合って、お互いを理解しようとする試みです。

ただこれはあくまでも、文字通りの「雑談」です。本当は「社内SNSで雑談をしているヒマがあったら仕事をしたい」という人も、雑談に付き合うことが義務化していきます。

雑談にコミットしないと、社内の取り組みに消極的な人という烙印を押されて人事評価でもマイナスになるので、せっせと雑談を投稿する。結果として、雑談のために業務が後回しになるという本末転倒が生じているのです。

社内SNSが評価のベクトルをねじ曲げるケースも

考えようによっては、社内SNSでの少々の雑談は許容範囲です。しかし、中には深刻なケースもあります。「あなたのあの仕事は最高!」などと、社内SNSを通じてポイントを与え合う仕組みを採用するパターンです。簡単にいうと「いいね!」をポイント化する仕組みです。 このポイントは、人事評価の対象となり、ボーナスの査定にも関わります。一歩間違うと、 仕事の成果とは直接的関係が薄い要素が大きく評価されてしまうことがあります。

「展示会の準備をしているとき、重い物を一緒に持ってくれた」 「笑顔がいつも素敵」

など、評価のベクトルがどんどんおかしな方向に向かっていき、本来の業務から離れていきます。仕事に集中するあまり、社内SNSで発言しない人が「会社に対するコミットが低い」と評価されてしまう。 これでは仕事に対するモチベーションも低下します。 かといって、やる気を装って社内SNSに積極的に投稿し続けるのも大変です。いずれにしても、職場の問題解決にはつながらないのです。


職場の問題30の解決法』より
著者:大橋 高広さん/日本実業出版社
定価:1595円(税込)
ISBN:4534058551


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