子どもたちを大人の”毒”から守るために
もしも、家事や子育てに追い詰められたら、ストレスのはけ口が子どもに向かう恐れがある。そうならない前に、親自身が周囲にSOSを出すことが大切だ。前出の友田明美氏は「SOSを発している養育者を周囲が非難するような社会にしてはいけない」と力説する。
「子どもの発達に悪影響を及ぼす振る舞いの多くは、無自覚に行われているか、愛情の空回りに起因しています。それを周囲が『毒親だ!』と非難し遠ざけてしまえば、親は心を閉ざしてしまい、家庭内の環境が悪化しかねません」
新型コロナで外出する機会が減り、子育て環境の閉塞感が増している。そうした状況下では周囲から孤立した“孤育て”ではなく“とも育て”の意識を持つことが大切だと言う。
「学校施設、仕事仲間、ご近所、児童相談所、保健センター、両親の家族などが一体となって子育てをする社会を目指す必要があるのです」
子どもの意思を尊重する社会づくりを
また、親が毒となる言動をとってしまうのは、自身の気持ちを優先し、子どもの意思や意見を蔑ろにしてしまうことが根本的な原因だ。
子どもの問題に取り組む弁護士の原富祐美氏は、「子どもが自分の意見を表明する権利は、国連の『子どもの権利条約』でも定められている」と指摘する。
「日本も当然この条約に批准していますが、実社会に反映されているとは言い難い。例えば、最近話題となった“ブラック校則”や、離婚する夫婦の親権の取り決めなど、本来子どもの意思が尊重されるべき場面で、大人の都合が優先されています」
日本は大人ファーストの社会である。だが、子どもの意思を尊重するのが当たり前の世の中となれば、毒親と呼ばれる大人も減っていくのではないだろうか。
【小児神経科医、医学博士 友田明美氏】
熊本大学医学部医学研究科修了。同大学大学院小児発達学分野准教授。’11年より福井大学子どものこころの発達研究センター教授就任
【弁護士 原富祐美氏】 ’78年生まれ。’08年弁護士登録。愛知県児童相談所児童虐待対応弁護士。少年事件、児童虐待、いじめ問題などに取り組んでいる
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/工藤玲久 アンケートリサーチ/パイルアップ> 週刊SPA!編集部
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