英ロンドン大学のリンダ・グラットン教授が『LIFE SHIFT』で提唱した人生100年をどう生きるかという命題は、日本でも2017年に話題となり大きな衝撃をもたらした。
いきなり「今後は、100年生きるのが当たり前になる」といわれると、多くの人は戸惑うはずだ。その中の代表的な声は、「定年後の40年近い人生をどうやって生活していけばよいのか……」ではないだろうか。
その老後に備えるためにまず知っておくべきは、「退職金」と「公的年金」の知識だ。受け取り方一つで手残りの金額は大きく異なる。オトクに受け取るためにはどうすれば良いのだろうか。
退職金の受け取り方(一時金か年金か)
定年後の大切な生活原資である退職金。受け取り方法は会社によって異なるが、一時金か、年金か、その併用かなどを選択出来ることも多い。そこで考慮すべきは、手取りの金額だ。
まず、退職金にも税金がかかるが、その計算方法は、今までもらってきた給与や賞与とは異なる。退職金は、所得税法上退職所得とされ、基本的には次の計算式で課税される。
(退職金額-退職所得控除)×1/2=退職所得
【勤続年数と退職所得控除額の関係】
- 20年以下:40万円×勤続年数 (80万円未満の場合は、80万円)
- 20年超:800万円+70万円(勤続年数-20年) ここで計算された退職所得を国税庁発表の速算表に当てはめて税額を計算していく。
【速算表】
退職一時金が3000万円で勤続年数35年のケースで計算する。
{3000万円―(800万円+70万円×(35年-20年))}×1/2=575万円
所得税:575万円×20%-42万7500円=72万2500円
住民税:575万円×10%=57万5000円
復興特別所得税:72万2500×2.1%=1万5172円
すなわち手取り額は3000万円ー72万2500円ー57万5000ー1万5172=2868万7328円となる。また、一時金には社会保険料は、全くかからない。
次に、年金として受け取るケースを見てみよう。
年金で受け取る場合、所得税法上は雑所得として計算される。
(退職年金-公的年金等控除額)=公的年金等にかかる雑所得
【速算表2】
ここで考慮すべきは、退職年金とその他に公的年金、不動産所得などがあれば、それらを合算した金額で総合課税として所得税、住民税が計算されるということだ。さらに年金で受け取る場合、税金だけでなく国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療保険など社会保険料も徴収される可能性があることを考慮する必要がある。
では、一時金と年金、どちらの方法でもらった方が得なのであろうか。厳密には、自分の条件に合わせて計算する必要があるが、まずは以下の方法を軸に考えてみると良いだろう。
(1)退職所得控除を超えない範囲で、一時金でもらう
(2)それでも余る場合は、65歳までは70万円以内で受け取る
(3)それでもまだ余る場合は、一時金の金額を増やす
繰り返すが、厳密にはご自身の条件によって、一時金か年金かどちらで受け取る方が得かは変わってくる。しかし、一般的には、退職所得となる税務上のメリット、さらに社会保険料がかからない、などの理由で、一時金でもらう方が有利だ。