障がいや傷跡、医療器具を付けた子どもなど、ユニークな見た目をした人形がないことに違和感を抱いたアメリカ在住のエイミー・ジャンドリセヴィッツ(Amy Jandrisevits・@a_doll_like_me)さんは、世界に一つしかない人形を手作りで制作しています。
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彼女は、さまざまな見た目をした子どもたちが自分と同じ特徴をもつ人形をもつことで、自分自身と向き合うことを願い「A Doll Like Me」を設立しました。非営利団体として会社を運営し、事情によって支払いのできない家庭には寄付によって賄っているとのこと。
A Doll Like Meの活動内容についてエイミーさんに詳しく聞いてみました。
きっかけは小児腫瘍科の子どもたちとの出会い
――A Doll Like Meを始めたきっかけはありますか?
エイミーさん:小児腫瘍科でソーシャルワーカーとして働いていた頃、子どもたちと関わることでさまざまな現状を目にしました。そのとき、傷跡があったり髪のない子ども、医療器具を付けた子どもたちなど、さまざまな見た目をした人形を探すことが難しいことに気づきました。そしておもちゃ市場が遅れていることを実感しました。今でこそ肌の色や髪の色などを人形で表現することが増えてきてはいるものの、医学的な理由による子どもたちの見た目を投影した人形は少ないのです。
子どもたちにとって、遊びを通して自己表現やコミュニケーションを行う療法「プレイセラピー」は欠かせないもの。プレイセラピストなら誰しもが、子どもたち一人一人のアイデンティティをもつ人形と遊ぶことが大事だと言うでしょう。自分自身と向き合うことが、子どもたちにとってどれだけ影響力のあるものかを知ったとき、この状況を変えなければならないと思いました。
そこで私の経験やスキル、知識を活かすときが来たのだと実感し、A Doll Like Meを設立しました。子どもたちが大好きな人形によって、自分自身を見つめるきっかけができたらいいなと思っています。
おもちゃ売り場に“自分の姿”を見つけられない子どもたち
――A Doll Like Meの人形は、どのような子どもたちが必要としているんですか?
エイミーさん:私の作る人形は、お店の棚に自分の姿を見つけられない子どもたちのためにあります。たとえば、癌、手足の不自由な子、アルビノ、顔の奇形、傷や痣のある子など。人形によって子どもたちに幸福を与えられると信じているので、親御さんから送ってもらった写真を見て、一つずつ心を込めて手作りしています。
――ユニークな見た目の子どもたちは、社会でどのような困難に直面することがあるのですか?
エイミーさん:人々のユニークな見た目をもつ子どもたちに対するネガティブな捉え方や見方が、その子たちの直面する困難につながると思います。私は「インクルージョン(さまざまな違いをもつ人が社会で受け入れられること)」、「レプリゼンテーション(マスメディアや映画など、表現の場でマイノリティがリアルに描かれること)」という言葉が、人種、セクシュアリティ、能力に関わらず、すべての人が社会に居場所があることを意味すると信じています。
インクルージョンやレプリゼンテーションが当たり前な社会が実現されるべきですし、社会にいる誰もが恩恵を受けるべきなのです。おもちゃ市場はメディアと同じように、人々が多く目にするものが「普通」だと認識される傾向にあります。
実際、どのくらいの人がユニークな見た目をした人形を見たことがあるでしょうか。今のところ、車椅子に乗っている人形や補聴器をつけている人形は少ないのが現状ですよね。なのでどのような見た目の子どもたちにも、居場所があることを当たり前にしていく必要があると思っています。