3.高野山の精進料理や銘菓を味わおう
精進料理
お寺の僧侶は、古くから、肉や魚などの動物性食物を使わない料理を食べてきました。それは、精進料理と呼ばれており、ここ高野山でも味わうことができます。
高野山の精進料理は、調理方法や味付け、色彩を大切にしたもので、見た目もきれいで、味もしっかりと付いているのが特徴です。ごま豆腐や野菜の天ぷら、煮物などが並び、適度なボリュームもあるので、意外と満足できるものです。
精進料理は、街中の飲食店で気軽にいただくこともできますが、休日や秋の紅葉シーズンには混雑します。事前に予約すれば、寺院の宿坊で用意していただけるので、ゆっくり味わいたい方にはおすすめです。
ごま豆腐
野菜のみで作られる精進料理のなかで、貴重な栄養源として重宝されてきたごま豆腐も、高野山名物として知られています。真っ白で、つるんとした食感のごま豆腐は、クセがなくさっぱりとした風味ですが、ごまの香ばしさやコクは十分に感じられるので、とても美味しくいただけます。
壇上伽藍の南西にある「角濱ごまとうふ総本舗本店」では、吉野葛や高野山麓の石清水を使い、ごま豆腐を製造、販売しています。こちらの商品は、アルミパックに入れてから高温殺菌がされており、日持ちもするため、お土産にも適しています。
笹巻あんぷ
精進料理に欠かせない生麩(なまふ)を製造している麩善には、笹巻あんぷという和菓子が売られています。生麩によもぎを混ぜ、こし餡を包んで熊笹で巻いてあり、あっさりとした甘さで、お餅とは違った生麩独特の食感も楽しめるので、お土産として人気があります。ほのかに笹の香りも感じられて美味しいですよ。
みろく石
創業150年の老舗菓子店「みろく石本舗 かさ國」が作る和菓子です。奥之院の小さなお堂にあるみろく石にちなんだお菓子は、自家製の粒あんを小麦粉や卵、蜂蜜を使った生地でくるんでおり、柔らかな食感とやさしい甘さが特徴です。高野山銘菓として親しまれており、お土産として買い求める人も多く、宿坊で出されることもあります。
4.宿坊での滞在を楽しもう
山内には、宿坊と呼ばれる宿泊施設が付属する寺院がたくさんあります。その数は52か所にもなり、設備や景観、庭園なども個性があるので、自分に合う宿坊を選んでみるのも楽しいものです。宿坊によっては、朝のお勤めに参加できるところもありますよ。
奥之院参道入口にある宿坊「清浄心院」
筆者が高野山を訪れた際に宿泊した「清浄心院」は、奥之院の参道前にある宿坊です。こちらのお寺は、天長年間(824~834年)に、空海によって創立されたと伝わり、ご本尊には空海の木像である廿日大師が祀られています。
建物は大きな通りから少し入った静かな場所にあります。目の前には玉川の清らかな流れがあり、落ち着いた雰囲気です。奥之院参道入口の一の橋も、すぐそばにあります。
お部屋はふすま区切りと、壁区切りのものがあります。初めて宿坊に泊まるという方は、気兼ねなく過ごせる壁区切りの部屋が良いかもしれません。トイレや浴室は共同で、部屋にはありません。浴室は、宿坊の規模の割にゆとりがあり、木の浴槽に浸かると散策の疲れも癒されます。
食事は、夕食、朝食とも精進料理です。肉や魚、卵といった食材は使われていませんが、天ぷら、煮物、ごま豆腐など品数も多く、味も良いので、物足りないと感じることはありません。
先述したように高野山の多くの宿坊では、宿泊者も朝のお勤めに参加できます。こちら「清浄心院」でも行っているので、少し早く起きて参加してみても良いでしょう。