メディアでもよく取り上げられる「発達障害」についてはご存知の方も多いでしょう。ですが、発達障害の一つである「自閉症スペクトラム(以下、ASD)」の夫を持った妻が苦しみ、うつ状態などに陥ってしまう「カサンドラ症候群」のことはまだあまり知られていません。

「お前と話してもムダ」話の噛み合わない夫に、有効だった意外な作戦
(画像=『女子SPA!』より引用)

「カサンドラ症候群」とは、パートナーとの意思疎通ができず、他人からも理解してもらえないことで体調を崩し、身体に顕著な症状が現れた状態を指します。前回記事ではカサンドラ症候群になるきっかけのひとつとして、結婚や妊娠・出産を機に夫の特性が強く出始めるケースを紹介しました。

 カサンドラに症候群に悩んでいる妻が、少しでもラクになれる方法はあるのでしょうか。30年以上に渡って発達障害の研究、治療を続けているどんぐり発達クリニックの精神科医、宮尾益知先生の『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』にその対処法が書かれています(以下、同書の内容より抜粋・再構成)。

「お前と話してもムダ」話の噛み合わない夫に、有効だった意外な作戦
(画像=『女子SPA!』より引用)

周囲に理解してもらうことの絶大な効果

 カサンドラに陥ってしまった場合、脱出するにはどうしたら良いのでしょう。

 ASDの夫から傷つくような言動を受け続けた結果、別居を選択する妻は少なくありません。別居は妥当な解決策のように思えますが、実際には金銭的な問題もあり、そう簡単に夫婦関係・家族関係を断ち切る決心ができないのも事実です。周囲は「早く別れるべき」とアドバイスしても、結婚前に優しく接してくれた姿を忘れることができず、「その感情を取り戻すことができるんじゃないか」と思ってしまう場合もあります。

 自分が「カサンドラ症候群」で、夫がASDだと診断が下され、それが原因だと認知すれば、「自分が悪いのではない」という思いにつながります。しかし、それは一方的に夫が悪であり、自分は善だと認識するのも違います。身内や友人に相談しても「文句や愚痴」とみなされ、「夫をコントロールできていない、力不足だ」「自業自得だ」と言われてきた人たちにとっては、状況を理解してもらうことが、何より回復につながるのです。

「夫のASDの特性の影響で苦しんでいる」と、周囲に理解してもらうことで、「決して夫を責めているのではない」「妻の一方的なわがままではない」という理解が広がります。情緒的な支えが必要な妻にとっては、周囲の理解には計り知れない効果があるのです。

問題行動を起こす夫の、強い不安感を取り除く

「もしかして夫はASDかもしれない」と、グレーゾーンにいると感じている場合の対処法について考えてみます。

「お前と話してもムダ」話の噛み合わない夫に、有効だった意外な作戦
(画像=『女子SPA!』より引用)

ASDの人は突然の出来事に弱く、予測することが苦手です。相手の世界を想像することができないので、疎外感を持ちやすい特徴もあります。相手から自分を認める肯定的なメッセージがないと、極端に否定されたように感じ、相手を敵であると判断する傾向があります。問題行動を起こす時の精神状態は、強い不安感からくるものなのです。

 不安を取り除く方法の一つとして、スケジュールの視覚化が有効です。例えばリビングのカレンダーに予定を記入し、いつ誰が何をしているか「見える化」しておけば、ストレスが軽減され、怒りの感情が減ってASDの人の言動がやわらかく変わっていくケースがあります。