「自分ひとりでなんとかしなきゃ」と思っている母親を助けたい

――バディチームに繋がるご家庭はどのようないきさつが多いのでしょうか? また、家庭への訪問を拒否する方などはいませんか? 岡田「行政からの依頼が一番多いです。今、行政も児童相談所もいっぱいいっぱいな状態です。

子ども虐待は行政だけでは防げない。孤立するママを助ける訪問サービスとは
(画像=『女子SPA!』より引用)

 支援を拒否する人もいます。それは、児童相談所に通報されて子どもを連れて行かれてしまうのではないかと恐れている方ですね。子どもを怒鳴ってしまっていても連れて行かれたくはないんです。でも、親にとっても子どもにとってもこれはお互いちょっと離れたほうがいいなというケースもあり、そういう場合は一泊二日のショートステイを利用してもらうこともあるようです。

 最初は拒否していたお母さんもこの支援を利用したことで『とてもリフレッシュできた』と、また子どもに優しく向き合えるようになることもあります。それと、子どもにとっても一旦親と離れて、施設などで他の大人たちから可愛がられたり優しくされたりという経験をすることで、『いろんな大人が一緒に見てくれているんだよ』という体験をしてもらうのも重要だなと思います。

 自分ひとりでなんとかしなきゃ、というのではなく、もう少し気軽にお母さんが社会的に子どもをいろんな人に預けながらやっていける必要があるなと思っています」

ひとり親であっても二人親であっても虐待は起こる

子ども虐待は行政だけでは防げない。孤立するママを助ける訪問サービスとは
(画像=『女子SPA!』より引用)

ひとり親であっても二人親であっても虐待は起こる――虐待が起きやすい家庭に共通しているものはあるのでしょうか? また、虐待する親はどういう人が多いですか??

岡田「まずは『孤立』という言葉がキーワードになります。社会からの孤立があったり、家の中でも孤立があったりします。そしてその背景には、経済的な困窮や子どもの病気や障害、それから保護者の方の精神的な不調などいろいろあります。でも、ご自身が病気だったりお子さんに障害があっても困難はあっても虐待にはつながらずに子育てしている家庭が大部分です。

 逆に経済的に豊かであっても、ひとり親でなく二人親であっても虐待が起きることはあります。例えば親御さんがたくさん習い事をさせて高学歴に育て良い会社に就職させないと子どもが幸せになれないと思いこんでいる場合、親の方も必死になってしまうので『孤立』に入ります。

 また、虐待する親はどういう人が多いかですが、これはなんとも言えませんが、ひとり親の方はやっぱり一人でやっていく大変さがありますから。それと親御さんの年齢ですが、極端に若年の若いお母さんはいろんな経験がなかったり、実家のサポートがないと孤立していくケースはあります。今まで、10代半ばのお母さんの支援をしたこともあります」

虐待としつけの違いは、子どもの立場で心が傷つくかどうか

子ども虐待は行政だけでは防げない。孤立するママを助ける訪問サービスとは
(画像=『女子SPA!』より引用)

虐待としつけの違いは、子どもの立場で心が傷つくかどうか――根本的な質問になるのですが、虐待としつけの違いはどこにあるのでしょうか? 私は現在33歳ですが、私を含め同年代だとピアノの練習をサボったことで手足を縛られて押入れに閉じ込められたとか、嘘をついた罰で夕飯抜きとか、私自身も何かで怒られて外に放り出されたことがあります。今は法律もできたおかげか、そのような折檻は事件になったときしか聞かない気がします。

岡田「これは厳密には難しい線引きですね。でも、基本的には親の事情や都合ではなく、子どもの立場で心が傷つくことがあれば虐待と言えます。親は子どものためにと考えていても、実際は親と子の間に深いギャップがあるように思います。虐待には『身体的虐待』『ネグレクト』『性的虐待』『心理的虐待』の4つの種類があるのですが、教育過多と言われるところは心理的虐待と言われています。しつけと虐待の区別は難しいし、発見も難しいし、子どもはそれが当たり前だと思っていることもあります。

 海外では児童虐待のことを『マルトリートメント』といって、『不適切な養育』という意味があります。また、『アビューズ』という『乱用、悪用』という言葉もあります。これは、親の事情や都合で子どもを取り扱うという意味合いがあります。だから、子どもにとってどうなのかという視点で本当は考えていかないといけないところです」

虐待問題はバッシングだけでは解決しない

子ども虐待は行政だけでは防げない。孤立するママを助ける訪問サービスとは
(画像=『女子SPA!』より引用)

虐待問題はバッシングだけでは解決しない――児童虐待の事件が報道されると、必ずといっていいほど親、特に母親へのバッシングが起こりますよね。それに対してはどうお考えでしょうか?

岡田「子どものことを考えると、虐待は本当にあってはいけないことです。どこかに責任を負わせてバッシングしたくなる気持ちは人としては普通の感情だと思います。ですが、二度と虐待を起こさない観点で考えていく中ではそのバッシングだけで終わってはいけません。虐待が起こった際に実際どんな背景があったのかを見ていったとき、親のこれまでの人生などに思いを馳せてほしいところはあります。バッシングだけでは解決しませんから」