自分らしい働き方をしていきたいと、誰しもが考えたことがあるでしょう。

時間や場所にとらわれずに、好きなことで稼いでいく……起業家もそうした生き方の一つに感じられるかもしれません。憧れはあっても、実際のところ会社を辞めるには勇気が必要ですし、どう始めたらよいのかわからない人も多いでしょう。

『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』 (新井一著、明日香出版社)より、時間もお金も最小限のリスクで会社を辞めずに起業する考え方をご紹介します。

「起業=会社を辞めて独立すること」ではない

著者はこれまで1万人の起業をプロデュースしてきた、いわば起業のプロです。会社員のまま始める起業準備塾「起業18フォーラム」を主催し、インターネット集客に特化したマーケティング支援などにも取り組んでいます。

著者自身も、就職後さまざまな失敗を繰り返す中で、会社になじめずにいたという経験を持っています。15年間、会社員をしながら事業を続けて、独立後は起業家を育てる道を選びました。

「会社員のまま、朝晩の30分を使って、副業で『自分のビジネス』を始め、数年後の起業を見据えて準備・練習をする」くらいのことは、社会人の経験があれば、誰にだってできます。会社を辞める必要はありません!
(9ページより引用)

起業するからといって、必ずしも会社を辞めて独立する必要はないと著者は言います。むしろ、会社員のまま起業することで、安心して試行錯誤を繰り返すことができる。そして、毎日朝晩の30分、トータル1時間を捻出することは、少し工夫すればできそうです。

何事も続けられる内容でなくては意味がありません。まずは、会社を辞めずに毎日の中から夢のために使う1時間を作り出すことから始めたいものです。

自分自身が仕組みの所有者になる

始める副業について最初に注意することとして、労務提供型のアルバイト副業を選んではいけないと著者は警鐘を鳴らしています。

自由のない時間の切り売りをしてしまうと、疲れてしまって本業に影響を与える可能性もあります。会社にいる限りは、本業あっての副業であるということを忘れてはいけません。

コーチングやカウンセリングといった内容にも注意が必要なようです。自分がやらなければいけない類の仕事は、時間の切り売りにつながりやすいのだとか。

一番簡単な方法は、長時間を要する作業、苦手な作業などを、プロに任せてしまうことです。そうすれば、あなたの時間を使うことなく、モチベーションにも左右されず、利益がしっかりと出されていくようになります。
(45ページより引用)

大事なことは、仕組み化すること。例えばコーチングであれば、クライアントがいないコーチを集めてクライアント紹介サービスを提供するなど、紹介料が自分の報酬になるようにしていく。自分がセッションをしなくても、朝晩30分の時間で問い合わせ対応をすれば、収入を得ることができます。

もし、イメージしていた副業のアイデアが時間の切り売りで収入を得るタイプの仕事だとしたら、それを別の人に依頼するイメージで具体化していけばよさそうです。

他人のビジネスに組み込まれたり、時間の切り売りをしたりしていると、いつまでも自由になれません。自分自身が仕組みの所有者になるということを念頭に置いて決めていく必要があります。

「自分の経験・体験を伝える」というビジネス

注意点を踏まえつつ具体的に何を始めていけばいいのか。過去の自分、あるいは今の自分の悩みや問題を解決できるサービスから始めていくと、一番簡単であると著者は言います。

自分のことではなかったとしても、隣人の悩みや問題の範囲までで考えてみると、想像ができるのではないでしょうか。逆に、あまり遠くの人や縁の薄い世界を相手にすることは避けたほうがよさそうです。その悩みや願望が想像しにくいからです。

副業から始めてみたいのはやまやまだけど、「そもそも何をしたらいいのか、アイデアがないよ」と悩まれる人もいます。そんなときに最もオススメなのが、前述のような「自分の経験・体験を伝える」というビジネスです。
(99~100ページより引用)

アイデアがどうしても出てこない場合には、これまでの自分の経験・体験を語るという点にヒントが隠されているようです。そのメリットは3つあります。

第一に、自分の経験・体験なので伝えやすいということ。第二に、共感されるから、感謝されつつ収入も増えるということ。第三に、自分の経験だから競合他社が少ないということ。

さらに、いわゆる先生業の最大の強みは、営業不要であるということ。多くの人に感謝され、嫌いな人にペコペコと頭を下げる必要がないため、毎日精神的に健康でいられるのだとか。

会社を辞めて独立したとしたら、失敗は極力避けなくてはいけませんが、副業の小さいビジネスであれば失敗も貴重な経験になり得るもの。なぜうまくいかないのかを検証しながら改善を繰り返していくことで、方向性がだんだんと定まっていきそうです。