その1.お金の勉強

起業時にもっとも必要なのが「お金の勉強」です。孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。起業後のお金はその「敵」にあたります。資金繰りの勉強をして、知恵を磨けば、お金がなくても事業を軌道に乗せやすくなります。

具体的には、次のような項目を勉強するとよいでしょう。

会計

会計は事業の基本です。「売上」「経費」とは何か、どのタイミングでなぜ計上するのか、売上に対して必要経費がどれくらいかかっているのか、売掛金を回収できているのかを把握することで経営が堅実になります。簿記3級程度の知識があれば万全でしょう。

節税

「節税」は、会計を理解し、自分の営む事業の現状を把握した後に行います。節税は、事業規模や内容に見合ったものでないと無駄が生じるからです。

節税でよく知られるものとして「起業したら青色申告をした方がいい」というものがあります。間違いではないのですが、青色申告のメリット(最大65万円の特別控除や損失の繰越控除)を享受するには、「複式簿記で記帳する」という手間をかけなくてはなりません。

例えば、売上が年間100万円程度で、育児や家事が忙しいのであれば、節税のメリットが薄いだけでなく、手間の負担が過度にかかることになります。節税は自分の現状とのバランスが大事です。

助成金、融資

助成金については、最近、女性向けの起業支援が増えています。また、日本政策金融公庫などから低利の融資を受けるのも一つの方法です。飲食店や小売店など、初期投資に出費がかさみやすい事業を検討している人は、こういった助成金を調べて、活用してみるとよいかもしれません。

その2.貯金

起業に必ずしも潤沢な資金は必要ありませんが、備えとしてのお金はあった方がよいでしょう。先述した費用が必要であるほか、病気や事故の可能性もゼロではありません。いざというときにすぐに使える現金があった方が心強いものです。

経営承継支援が今年の1月17日に発表した「独立・起業の意識調査」(調査時期2018年12月、有効回答400人)によれば、独立・起業のための資金を貯めている人は44.8%、貯金の平均額は1,259万円、中央値は600万円となっています。ここまでの金額を誰もが準備するのは大変なので、筆者は税理士としての立場から次の金額を貯金の目安額としておすすめします。

(1年間の住民税額(※)+1年間の社会保険料額(※)+起業時の投資額+起業後の固定費)×1.5~2.0

※起業前に正社員だった人は、月々の給与明細に記載された住民税額と社会保険料額を12倍するとよいでしょう。それ以外の方は「起業前の平均年収×25%(=住民税の所得割額の税率10%+社会保険料の目安料率15%)」で考えてみてください。

その3.家族や友人などの相談ネットワーク

「早く収入を安定させなくては」と焦って投資を増やし、生活がより不安定になることがあります。また、事業を軌道に乗せるべく頑張りすぎれば体を壊し、収入が減るだけでなく医療費で出費がかさむことにもなるでしょう。

起業におけるメンタル面でのマイナスを少しでも減らすべく、安心して頼ったり悩みを打ち明けたりできる相談ネットワークを作っておきましょう。特にそれが親の場合、もっとも心強いサポーターとなり得ます。

「起業するときに反対されたから……」と、両親に頼ることを避ける人もいますが、我が子の人生を真剣に応援したい親ほど、覚悟を問うべく最初は「起業反対」の姿勢を示したりします。本気で我が子を大事に思うからこそ、厳しさを突きつける一方、ピンチに陥ったときに手を差し伸べてくれる存在になるでしょう。

起業後の支出を抑えるには「無理をしない」がカギ

起業後の支出を抑えて成功するためのカギは「無理をしないこと」です。起業すると収入が不安定になるため、ネガティブな思考に陥りやすくなります。ここに見栄や体裁、焦りが加われば、それを埋めるべく無理な投資や浪費をして支出が増加することになります。

もし不安に陥ったなら、起業したそもそもの動機を思い出しましょう。おそらく「自分のペースで生きたい」という気持ちがあったはずです。そして、無理せず自分のペースで、今できる仕事に集中しましょう。一見遠回りなようですが、確実に実績と信頼を作り、結果「起業の成功」につなげることができます。

文・鈴木 まゆ子(税理士鈴木まゆ子事務所代表)/DAILY ANDS

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