「聞いて欲しい」に応える電話窓口が全然つながらない
小島:ひっぱられてしまう部分もあるし、相談に乗りつづけるのって難しいですよね。
yuzuka:はい。そういうときに機能すべき場所が、自治体やNPOが設置している電話相談窓口なのかな、と思うんですけどね……。私に相談してくる多くの方も、あそこに電話をかけたって言うんです。でもやっぱり、永遠に回線が繋がらなかったと。繋がった方にあったことがありません。
そこからさらに孤独を感じて、ストッパーどころかトリガーになってしまうケースもあるのではと、ときどき思います。でも、あそこもボランティアでなりたっているわけですから、これ以上規模を拡大することも難しいし、求められない。だけど、いつでも機能する場所を作ってほしい……と思いますね。
小島:そうですね。「死にたい」って言う人たちって、死にたい気持ちと同じくらい「話したい」って気持ちがあると思うんです。座間市の事件、あったじゃないですか。自殺願望を持つ若者をTwitterで誘い出して、自宅アパートで9人も殺してしまったという。あのときも、死にたいからというよりは、話を聞いてほしくて会いにいってしまって、殺された子がほとんどだったと報道されていました。
yuzuka:そうですよね。「自殺防止センターの電話なんて意味がない」みたいな人もいますけど、あれがもし100%繋がって誰かと話せる状態なら、踏みとどまる人って結構いるんじゃないかなって思うんです。ただ、運営が本当に難しいのも分かるから、今の状況を責めることもできないなって思います……。そういう場所、いつか作れたら良いなと思っています。
どんな人?趣味は?故人に思いを馳せる理由
yuzuka:小島さんがこの仕事を通して、亡くなった方たちに思いを馳せるようになったのって、どうしてでしょう?
小島:仕事をしていくなかで「これってどういうことだろう?」って、疑問に思うことがたくさんあったんです。例えば浴槽で自殺された方の部屋で作業をしているとき、大きな石が置いてありました。なぜだろうって考えて、死ぬときに浮き上がってこられないように自分の身体に乗せたのではないかと考えました。残された状況や物で、その人がどう生きて、どう死んでいったかが見えてきます。それを知るのって、必要なことだと思うんです。
yuzuka:それを考えすぎたら、自分のメンタルにまで影響してしまいませんか?
小島:もちろんそうなってしまいそうなときもありますが、それでも必要なことだと思います。遺品整理をしていくなかで得た情報って、遺族の方にとっても大切な場合が多いんですね。
だから、もちろんまずは作業に集中して淡々とこなしますけど、遺族の方と会ったときには、自分なりに分かったことを伝えたい。出てきた写真とか、どんな趣味があったとか、思い出とか。だから、私は考え続けたいです。
yuzuka:今後も、そこから得た気持ちを作品に変える活動を続けていかれますか?
小島:はい。私の作品を見た人から「肯定してもらえた気持ちになった。生きようと思えた」って、連絡が来たときに、伝わっているんだなって思いました。だからやっぱり、これからも続けていきたいと思います。
yuzuka:私も、これから先も作品を通して死に対する思いを伝えていきたいです。死にたい気持ちを肯定しながらも、何か道しるべを見つけてほしい。本やコラムを通して、私は「言葉」という形で、小島さんは「ミニチュア模型」という形でそれぞれ伝えていく。やっぱり私たちって、ちょっと似ている気がします。
小島:そういえば、yuzukaさんの本『君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』を読んだとき、すごく似ているなって思った部分がありました。全体を通していえることなんですけど、「この人しかいない」とか、「ここしかない」って、本当に危険だと思っていて。そうじゃないんだよって伝えてくれる言葉が書かれてあるのは、救いになっていると思います。