反ワクチンこそ「金になる市場」
断定的な口ぶりでワクチン忌避を勧めながら、「言論弾圧に屈しない」などと宣言するような振る舞いがある。“教祖様”さながらだ。
多くの感謝のリプライがつき、不自然なほど崇拝されているのが興味深い。そこで“信者”となった人々が、自治体などに「攻撃」を仕掛けていく。Twitterで、ワクチンに関する発信をしたメディアや公的機関などに向けて危険性を強調する動画や画像を送り付け、医師個人に向けても「製薬会社の利権がある」「金をもらった工作員」などと、社会的信用を貶めるような罵声を浴びせている。
この程、そんな言動へのカウンターになるようなニュースがあった。米国では反ワクチンが巨大産業となっており、少なくとも年間およそ40億円もの収益があるとの内容だ。それも、たった12人の中心人物によってコンテンツの約3分の2が生み出され、利益を追求するグループが運営されていると伝えられた。これらは非営利団体「Center for Countering Digital Hate(デジタルヘイト対抗センター)」と、監視組織「Anti-Vax Watch」による報告で明らかになった。
そう、反ワクチンこそ利権まみれで「金になる」のだ。日本国内でもそうした市場はある。セミナーを主宰したり、著書を出したりすれば、ニッチな需要によって売れてしまう。世論と“逆張り”をして、稼ぐ手法であることは明白だ。
Amazonで一時販売停止になった反ワクチン本も
今月発売の書籍『医師が教える新型コロナワクチンの正体 本当は怖くない新型コロナウイルスと本当に怖い新型コロナワクチン』(ユサブル)がAmazonの売れ筋ランキング1位を獲得したにもかかわらず、「コンテンツガイドラインに準拠していない」とされ、一時販売停止となった(現在は再開)。
著者は年季の入った反ワクチン主義者の内海聡医師。特別対談として本の帯に書かれて登場するのは、ロバート・ケネディ・ジュニアという活動家だ。前述の米国の反ワクチン産業の12人で名が挙がった人物である。
「言論の自由」等の議論はさておき、こうした本の売れ行きは、反ワクチン勢力の「実績」になる。カルト的な需要が集中しただけなのに、「多数に支持されている」との誤解も与えかねない。